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武装召喚師――黒き矛の異世界無双――(改題)  作者: 雷星
第三部 異世界無双

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第三千四百三十二話 異変(一)

 ナルンニルノル近郊、結晶の大地で繰り広げられる連合軍対ネア・ガンディア軍の最終決戦は、激しさを増す一方だった。

 連合軍は、交代戦術を用いることで戦力の消耗を極力抑えながら戦い続けているものの、ネア・ガンディア軍の圧倒的な物量の前では焼け石に水に近かった。

 敵戦力が神兵だけならば、いい。

 神兵だけならば、取るに足らないとはいかないまでも、善戦も善戦、勝利さえ掴み取ることができるのではないか、と思えるほどだった。

 連合軍の各部隊は、それぞれに多数の神兵の撃破に成功しており、少しずつではあるが、確実に数を減らすことができていたからだ。

 しかし、ネア・ガンディア軍を構成するのは神兵だけではないのだ。

 より強大な力を分け与えられた使徒が連合軍兵士を手玉に取れば、ネア・ガンディアの神々が戦況を好転させるべく生み出した分霊の存在は、連合軍にとって極めて厄介というほかなかった。

 神々の相手は、神々が行っている。でなければ勝ち目などあろうはずもないし、そもそも、神同士の戦いでさえ、不毛なものだという。不老不滅。祈りが有る限り決して滅びることのない神同士がぶつかり合ったとして、決着をつけるのは簡単なことではないのだ。

 それでも、神々を野放しにしておけば、連合軍の被害は甚大なものとなり、戦線の維持すらも不可能となるのは目に見えている。故に、味方の神々に敵の神々を引きつけておいてもらうよりほかはないのだ。

 が、そうすると、問題が生まれる。

 分霊だ。

 突如としてネア・ガンディアの神々が戦場に投入した分霊とは、神の分身といっていい存在であり、その力は、使徒よりも極めて強大だった。

 敵の神々を引きつけてもらっている以上、分霊対策に神々の力を頼るわけにはいかない。

 そのため、分霊討伐には、ベノアガルド騎士団の騎士たちと竜王たちが当たることとなった。

 騎士団騎士たちは、救世神ミヴューラの祝福と加護によって得た力、真躯を用い、分霊と対等以上の戦いを繰り広げて見せた。

 その戦いぶりは凄まじく、戦場を移動しなければ、周囲の味方にまで被害が出かねないほどのものだった。

 シド・ザン=ルーファウスの真躯オールラウンドオーバーは、巨大樹のような分霊を相手にした。周囲の空間に無数の枝葉を生やし、戦場を緑で埋め尽くそうとする分霊に対し、オールラウンドオーバーは、雷火となった。一条の雷光が緑の空隙を突き破れば、その軌道上のすべてが紅蓮と燃え上がる。

 雷光と炎熱を司るオールラウンドオーバーには、与しやすい相手ではあったのだろう。

 巨大樹の分霊は、絶叫を挙げながら燃えて尽きた。

 ルヴェリス・ザン=フィンライトの真躯ダブルフルカラーズが相対した分霊は、翼の生えた白鯨のような姿をしていた。分霊が翼を羽撃かせて引き起こしたのは大風ではなく、大津波だったものの、ダブルフルカラーズはむしろそれを好都合としたようだ。

 ダブルフルカラーズは、大津波を一瞬にして白く氷結させてしまうと、白鯨のような分霊の巨躯までも氷漬けにしてしまったのだ。そして、猛然と飛びかかれば、双戟でもってずたずたに切り裂き、さらに極彩色の大爆発で分霊を四散させた。

 分霊は、神の分身であり、ただその体を破壊しただけで斃したことにはならない。というよりは、通常の方法では斃せないといったほうが正しい。だが、救世神ミヴューラの加護と祝福を受けた神卓騎士たちならば、真躯ならばどうか。

 体を破壊されたことで極限まで弱まった分霊の神威を真躯に取り込めば、分霊を撃滅することも可能となるのだ。

 しかも、分霊の力をわずかでも取り込むということは、真躯の力を向上させることにも繋がる。

 一石二鳥とはまさにこのことだ、とは、ベイン・ベルバイル・ザン=ラナコートの言。

 そのベインはというと、真躯ハイパワードレッドでもって、山のように巨大な分霊と対決している。山のような、というのは、その巨大さだけに関する表現ではない。山そのものが四足獣に変形したかのような姿の分霊だったのだ。

 力に物をいわせるハイパワードレッドの相手には、これ以上ないくらい相応しい分霊だったのかもしれない。

 互いに全力で正面からぶつかり合い、それだけで周囲の戦場が激しく揺れるほどの衝撃が生じたのだから、両者がどれほどの力を叩きつけ合ったのか、想像だにできない。しかし、互いに一歩も譲らぬ正面衝突からの取っ組み合いは、ハイパワードレッドが力に物をいわせて優勢に立った。

 そして、山のような巨獣を空高く放り投げ、落ちてきたところに全身全霊の右拳を叩き込んで木っ端微塵にしてしまった。

 ロウファ・ザン=セイヴァスの真躯セブンスヘブンズアイは、常に空中での戦いを繰り広げていた。相手にする分霊も空中での戦いに特化したものばかりであり、それらのうち、透き通った立方体のような姿をした分霊との戦いは、特に激戦といってよかった。

 セブンスヘブンズアイの得意戦術は、高高度からの超長距離射撃なのだが、その立方体型の分霊には、まったくといっていいほど通用しなかったのだ。それどころか、セブンスヘブンズアイが照射した光線を乱反射し、地上に降り注がせるものだから、味方への損害を考え、光線による攻撃を取り止めなければならなくなった。

 では、彼はどうしたのかといえば、簡単なことだ。

 接近戦に持ち込み、ランスフォースから受け継いだ槍でもって、分霊を貫き、破壊してみせた。

 斯くの如く、騎士団騎士たちの活躍ぶりによって、連合軍に大打撃を与えた分霊たちは、つぎつぎと撃破されていったが、それで終わったわけではなかった。分霊は、まだまだ大量にいたからだ。

 ちなみに、騎士団長オズフェルト・ザン=ウォードの真躯ライトブライトワールドは、救世神ミヴューラと合一していることもあり、ネア・ガンディアの神々を相手に奮戦している。

 その奮闘ぶりも、物凄まじいというほかない。

 世界を貫く閃光となって空を駆け抜けるライトブライトワールドには、どのような神も追随できず、速度において彼に敵うものはいないようだった。そして、その速度を利用した攻撃の数々は、神々にも痛撃となって叩き込まれるものばかりのようだった。

 ライトブライトワールドの一撃を受けた神の恨みがましく吼える声が、地上からもはっきりと聞こえたほどだ。

 無論、竜王たちも騎士団騎士同様に、多数の分霊を相手にして、その名に相応しい戦いぶりを見せつけている。

 銀衣の霊帝ラングウィン=シルフェ・ドラースが、歌うようにして連鎖的に発動させた竜語魔法でもって分霊を蹂躙すれば、蒼白衣の狂女王ラムレシア=ユーファ・ドラースは、狂王の継承者に相応しい戦いぶりだった。竜語魔法で生成した弓を用いたり、強靭鋭利な爪で切り刻み、あるいは尾で滅多打ちにして、分霊をずたずたにしていったのだ。

 そんな激闘が続く中、ひとり、異変に気づいたものがいた。

 ミドガルドだ。


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