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武装召喚師――黒き矛の異世界無双――(改題)  作者: 雷星
第三部 異世界無双

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第三千二百一話 激戦のザイオン(九)

 複式兵装召喚術は、複数人の武装召喚師の共同作業によって強引に術式を成り立たせている。人間は、神ではない。意識を共有することなどできるわけもなく、複雑な術式をひとつに纏め上げるためには、様々な制約を乗り越えなければならなかった。

 たとえば、ひとつの召喚兵装を組み上げるためには、すべての召喚武装の相性が良くてはならないということがそれだ。

 召喚武装には、相性がある。

 召喚武装が意識を持つ異世界の武器防具なのだから、当然といえば当然だろう。

 意識を持ち、自我を持つ武器たちだ。自分の気に入らない武器と融合させられるような真似など、認められるわけもない。

 故に、術式に組み込むには、相性のいい召喚武装同士でなければならない。

 さらにいえば、主軸となる召喚武装を攻撃用とした場合、脇を固める召喚武装は、支援用や防御用の召喚武装のほうがいい、という調査結果がある。

 特に複式兵装召喚術の場合、そのほうが成功率が高く、相性も良くなりやすかった。

 故に、多種多様な攻撃手段を持てるのが強みの兵装召喚術において、複式兵装召喚術の攻撃手段というのは、少なくなりがちだ。

 ランスロットの三種類でも多いくらいだ。

 他の兵装召喚師たちは、多くて二種類の攻撃用召喚武装を組み込んでいるだけであり、中には一切の攻撃手段を持たない召喚兵装も存在する。味方への支援、あるいは回復に専念するためだ。

 ランスロットたちがこれまで圧倒してこられたのは、そういった支援型召喚兵装のおかげでもあった。

 いま、ランスロットたちは、召喚兵装によって並々ならぬ力を得ている上に、神の加護や数多の召喚武装の支援を受けている。さらに同じ空域にいる召喚兵装の支援によって、常ならざる力を発揮できる状態なのだ。

 それだけの力をもってしても、戦艦を撃墜できるのかどうかはわからない。

(やってみるさ……!)

 ランスロットは、弾幕がもっとも薄くなる距離まで移動すると、そこで静止した。すると、神威砲弾が飛来したが、どこからともなく飛んできた兵装召喚師が、みずからを盾としてランスロットを庇った。

 砲弾が直撃し、爆発しても、その召喚師は無傷だった。身に纏う召喚兵装が、小型の防御障壁を発生させているのだろう。

「助かる」

「当然のこと。ランスロット様こそ、我らが最強の矛故」

 そういってこちらを振り返ったのは、若い男だった。オークス=ヘンドール。第二十八小隊長である彼の召喚兵装は“守護聖スエン”。身の丈ほどもある巨大な盾が特徴的であり、その大盾の性能を最大限に発揮するために組み上げられているはずだ。

 軸となっているのはオークスの盾型召喚武装ヘヴィウォールであり、故に防御に特化した構成にしたのだろう。それにより、神威砲の直撃すらものともしない鉄壁の防御力を得たのであり、ランスロットが砲撃を行うための時間稼ぎにもってこいといってよかった。

「最強の矛……か」

 そういわれると、悪い気はしない。それどころか、俄然やる気も出るというものだ。

 最強の矛と聞いて思い浮かぶのは、あの人物しかいない。彼の唯一無二の主たる時の皇帝ニーウェハイン・レイグナス=ザイオンとうり二つの顔をした武装召喚師。

 セツナ=カミヤ。

 最強の矛といえば、彼の召喚武装カオスブリンガーを連想するものであり、それは、ランスロットに限った話ではないのだ。

 オークスもまた、セツナのことを念頭に置いていたはずだ。

 でなければ、ランスロットに似つかわしくない賛辞を送ってくるはずもない。

 無論、彼がランスロットにそれだけの期待を寄せている、ということでもあるだろうが。

(期待には応えてみせるさ)

 胸中で告げたときには、彼は砲を構えている。右腕だ。右腕を包み込む装甲が変形し、右腕そのものが砲塔と化している。

 異形の砲塔。

 弓銃型召喚武装ライトメアを軸とする召喚兵装“光神”は、ライトメアの能力を最大限に発揮するための構成をしている。

 ライトメアは、遠距離からの狙撃や中距離射撃のみならず、近距離での戦闘もお手の物という多様性を持った召喚武装だが、こと“光神”においては、遠距離攻撃にこそその真価を見出している。

 性能においては“守護聖”には大きく劣るものの、“光神”にも防御障壁を発生させる能力があったし、砲撃以外の攻撃手段もあるのだが、最大の特徴といえば、超長距離からの狙撃であり、その威力だ。

 しかし、その威力を最大限に発揮するためには、力を充填するための時間が必要であり、また、距離が必要だった。

 対象との距離が離れれば離れるほど威力が増すからだ。だが、離れすぎると今度は逆に威力が激減してしまうことが判明しており、雑に離れればいいというわけではなかった。

 そして、ランスロットと対象である大型戦艦との距離こそは、“光神”の主砲、その最大威力を発揮する適正距離だった。

 そこから多少ずれたとして、威力は十分すぎるほどにあるはずだ。

 力の充填。

 そのための時間稼ぎは、オークスが盾となり、壁となってしてくれている。

 ほかの隊長たちもだ。

 召喚兵装を身に纏い、空中戦艦の周囲を飛び回ることによって、敵戦艦を煽り、挑発し、攻撃させているのだ。そのせいで敵戦艦は防御障壁を張ることができずにいる。

 もっとも、たかが人間相手に防御障壁を張る必要がないと踏んでいるのかもしれないが。

(だとすれば、甘く見過ぎなのさ)

 ランスロットは、弾幕の彼方に目標を見定め、目を細めた。

 そのとき、敵艦隊に動きがあった。

 すべての戦艦の船体各所が開放され、つぎつぎと、飛び出してくるものがあった。白く巨大な怪物たち。多数の神人と無数の神鳥の群れ。

 莫大な数の敵兵が、瞬く間に空域を埋め尽くしていく。

 そして、各所で兵装召喚師たちと激突し始めるのだが、兵装召喚師が神人や神鳥如きに負けるはずもない。ほとんど、一蹴している。

(いまさら戦力を展開したところで)

 ランスロットは、胸中で冷笑した。それも、神鳥や神人だけでは、ランスロットたちの足止めにすらならない。

 それになにより、ランスロットの準備は完了していたのだ。

「オークス」

「はっ、はいっ!」

 ランスロットが名を呼ぶだけで、オークスはこちらの意図を理解したようだった。即座にランスロットの視界から離れると、射線が確保できた。射線はまっすぐ敵戦艦へと通っている。

 旗艦と思われるもっとも大きな戦艦へ、だ。

 弾幕は止まない。しかし、薄くなっている。おそらく、敵戦艦が兵隊を出撃させたがために、闇雲に撃てなくなったのだ。

 その結果、ランスロットは、なんの問題もなく、“光神”の主砲を発射することができた。

 全身に満ちた力が異形の砲塔に収束し、砲口から爆発的な光が撃ち放たれた。光は一瞬、拡散したかに見えたが、つぎの瞬間には収束し、一条の光芒となって虚空を貫いていく。

 進路上の神人や神鳥を飲み込みながら直進を続ける光線は、次第に勢いを増していき、ついには発射した瞬間とは比べものにならないほどの速度となって敵大型戦艦に到達した。

 敵戦艦は、ランスロットの砲撃に気づき、防御障壁を張ろうとしたのだろうが、間に合わなかった。

 ランスロット流の破壊光線は、見事、敵戦艦の装甲に突き刺さり、貫いた。爆発的な光の奔流が渦を巻き、破壊を撒き散らしながら、戦艦を貫通していく。

 そして、物凄まじい爆発に次ぐ爆発の連鎖が空域を飲み込んだ。


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