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武装召喚師――黒き矛の異世界無双――(改題)  作者: 雷星
第三部 異世界無双

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第三千百九十九話 激戦のザイオン(七)

 シャルロット=モルガーナは、ニーウェハインの声を聞き終えて、安堵の中にあった。

 彼女とその側近たちを乗せた召喚車が向かったのは、ミーティアが向かった先とは異なる陣地であり、そこも砲撃の直撃を受けている。

 爆撃地点は、ただ破壊されるのではなく、神威砲を浴びた人間が神人化し、敵に回るため、戦場と化すという最悪極まりない状態にあった。

 そのため、シャルロットは、直属の部隊である光理剣の精鋭たちとともに本陣付近の陣地を目指したのだ。理由としては、ミーティアとまったく同じだ。

 そして、陣地に辿り着くなり、戦闘に入った。

 神威砲の直撃を受けたのだろう陣地は、半ば廃墟と化しており、そんな廃墟の真っ只中では、帝国軍将兵と、元帝国軍将兵であろう神人が激闘を繰り広げていた。

 神人の生命力は、人間やその他の生物とは比較にならない。“核”を破壊しない限り無制限に再生と復元を繰り返すような化け物だ。しかも強靭な肉体は分厚い鋼鉄の装甲に覆われているようなものであり、その肉体の性質を変化させることも容易い。

 肉体の形を変え、武器を作り出すことだってできるのが神人であり、並の人間ならば苦戦するのは当然のことだった。

 守護神ニヴェルカインの加護と多数の召喚武装による支援が、帝国軍将兵全員にかかっている。それでも神人の力というのは凶悪であり、陣地内には、何名もの帝国軍将兵の亡骸が横たわっていた。

 シャルロットたちが到着すると、陣地内の生存者たちは歓喜の声を上げた。待ちに待った援軍の到来であり、それも剣武卿シャルロットとなれば、そうなるのも無理はない。

 が、シャルロットは、そんな彼らに叱咤を飛ばすと、すぐさま彼らと神人の間に割って入った。神人の数は多く、故にこそ、生き残った兵士たちが苦戦していたようだ。

 シャルロットたちが加わったところですぐさま一掃できるかというと、そのようなことはありえない。

 ありえないが、多少は楽をさせてやれるだろう。

 シャルロットは、確信とともに封霊剣を抜き、神人たちと対峙した。

 ランスロットが多大な戦果を上げているのだ。

 同僚たるシャルロットも、最低限の働きをしなければ、示しがつかない。

 三武卿のひとりとして、立つ瀬がない。

(そんなものはどうでもいいが)

 人間の平均身長の倍以上はあるだろう神人の巨躯を睨み据え、その巨体が動き出すより早く、懐に潜り込む。途端に神人が猛然と両腕を振り下ろしてくる。それを感覚的に察知したが、彼女は、神人の両脚をこそ切りつけて見せた。

 封霊剣の刀身が神人の分厚い皮膚を切り裂くのと同時だった。神人の両腕が落ちてきたのだ。シャルロット自身が切り裂いたのではなく、封霊剣の能力が切り裂いた。

 封霊剣は、召喚武装だ。すべての召喚武装がそうであるように、封霊剣にも能力がある。

 その能力は、シャルロットの周囲に無数の剣閃を走らせ、神人の巨躯をでたらめに切り刻んだ。

 そして、“核”の露出を見逃さなかったシャルロットによって、神人は絶命する。肉体の崩壊が始まったのだ。 

 だが、そんなものを見届けている暇はない。

 陣地内に数多く存在する神人の一体を撃滅したに過ぎないのだ。

 シャルロットは、部下を含めた兵士たちを纏め上げると、すぐさま掃討作戦に取りかかった。

 

 戦場の光景を視ている。

 守護神ニヴェルカインの視点から、南ザイオン大陸北端に展開する広大な戦場、そのすべてを視ているのだ。

 敵空中艦隊からの度重なる砲撃は、防衛網に築かれた仮設陣地やディヴノアに壊滅的な被害をもたらしているが、それ以上におそろしいのは、味方が敵に変わるということだ。

 神威砲の直撃を受けた帝国軍将兵は、死ぬのではなく、神人と化すようだった。神人とは、神の操り人形そのものといっても過言ではない。自我もなく意識もなく、人間であったころの記憶もあろうはずもない。

 そして破壊と殺戮の限りを尽くすのだから、神人と化したものは、滅ぼす以外に道はない。

 恐ろしいのは、それを防ぐ手立てがなかった、ということだ。

 もし、敵軍に本陣の位置が知られているようなことがあれば、本陣を砲撃され、ニーウェハインたちが神人化していた可能性だってあるのだ。

 対応策として、ランスロット率いる兵装召喚師団に敵艦隊への攻撃を行わせたが、それでは根本的な解決にはならない。実際、ランスロットたちが艦隊を攻撃し始めても、陣地への砲撃は止んでいなかった。

 戦艦による砲撃は、極めて威力が高く、魔光壁と守護神の力を以てしても防ぎきれない。となると、被害が増える一方であり、ランスロットたちが艦隊を壊滅させるのを待っているわけにはいかなかった。

 ランスロットたちが艦隊を撃滅できたとして、そのころには帝国軍が壊滅状態ではなんの意味もないのだ。

 ニーウェハインは、ニヴェルカインの力を用い、敵艦隊の情報収集を行っていた。

 開戦当初からだ。

 敵艦隊がただの飛翔船の集団ではなく、新たな艦船を組み込んだ軍勢であることがわかったとき、情報収集が必要不可欠だと考えた。なんの情報もなく、ただ力だけで対抗するのは、愚かとしか言い様がない。

 といって、外から見て集められる情報には限りがある。

 それでも、なにも知らないよりはいいだろうと情報収集に努めた結果、ある事実に行き着いた。

 それは、敵艦隊が地上への砲撃を行う際、砲撃目標に対し、目印をつけているということだ。

 それは人間の肉眼では決して視ることの出来ないものであり、神の力を用いたとしても、しっかりと注意していなければわからないような微々たるものだった。

 ただ目標に向かって砲撃するだけでも十分なはずなのに、なぜ、目印をつけているのか。

 その理由については、想像できることはいくつかある。

 ひとつは、艦隊による一斉砲撃を行う上で、艦船同士の連携のため。

 ひとつは、目標への砲撃を絶対に外さないため。

 目印は、ただの目印ではないのだ。

 神威による目印。

 たとえなんらかの力で砲撃が逸れるようなことがあったとしても、必ず目印に向かうように細工が施されていると考えるべきだろう。

 そして、その目印の力こそ、魔光壁と守護神の加護を打ち破るために発揮されたのではないか。

 目印となる神威の紋章を消し去る方法は、ない。

 仮に、神威の紋章を引き剥がすことができたとしても、砲撃を止める手立てがないのだから、意味がなかった。

 ただし、目印の存在を認識できるようになったことは、ニーウェハインとニヴェルカインにとって極めて大きな一歩だった。

 目印は、敵艦隊の攻撃目標なのだ。

 目印のついた陣地にいる味方将兵を全員、砲撃範囲外に転送することは、戦神盤をもってすれば難しいことではなかった。

 戦神盤は、盤上の駒を動かすようにして、効果範囲内の味方将兵を自由自在に移動させることができる。あらゆる制約を無視して、だ。極めて強力な召喚武装といえるだろう。

 ただし、そのためにはニーウェハインとラミューリンの意識にずれがあってはならず、故にいま、ニーウェハインは、ラミューリンの意識とも同化していた。

 なぜならば、神威の紋章が刻まれるのは砲撃の直前だからだ。

 反応が一瞬でも遅れれば、その瞬間、神威砲が陣地を灰燼と帰すだろう。

 



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