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武装召喚師――黒き矛の異世界無双――(改題)  作者: 雷星
第三部 異世界無双

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第三千百九十五話 激戦のザイオン(三)

 もちろん、わかっている。

 ナリアが攻め込んできたときのような事態に対応するには、あのときのランスロットのように戦えるものが多数必要であり、ニーウェハインの判断は極めて正しい。

 統一ザイオン帝国は、“大破壊”後の世界でも有数の戦力を誇るはずだ。総勢五十万以上の動員兵力を持ち、数千人もの武装召喚師を擁し、海上戦力に地上での機動力は、他に類を見ないだろう。それに守護神ニヴェルカインの存在がある。

 守護神の加護は、全軍の戦闘能力そのものを大きく引き上げるものだ。

 が、しかし、それだけの戦力を以てしても、存亡の危機を迎えるかもしれない、という。

 であれば、戦力を拡充するほかない。

 そして、兵士を増員するだけでは足りないというのなら、分霊撃破という実績を上げたランスロットの召喚兵装に希望を見、活路を見出すのも自然の流れだ。

 が、同時に問題もあった。 

 召喚兵装を呼び出す兵装召喚術は、ランスロットの師イェルカイム=カーラヴィーアが独自に編み出した武装召喚術の応用・発展技術であり、イェルカイムの死によって失われたものだった。それをどうにかして再現したのが、ランスロットであり、完全無欠、完璧な兵装召喚術と呼べるような代物ではなかったのだ。

 しかも、ランスロットにしか使えない代物である可能性が高い。というのも、彼独自の理論で組み上げた術式は、他の武装召喚師から見れば難解極まりないものであり、複雑怪奇で理解の及ばないものだからだ。

 故にランスロットは、兵装召喚術を完璧なものに仕上げるだけでなく、他人に教示し、習得できるものにしなければならなかった。

 それも短期間で、だ。

 そして彼は、それを成し遂げた。

 ただし、帝国に所属する全武装召喚師に伝授したわけではない。理由はいくつかあるが、数千人の武装召喚師に教えるだけの時間がなかったという理由がもっとも大きい。つぎに、いくらわかり安くしたところで、ランスロット流の兵装召喚術を習得するのは簡単なことではなく、たとえ理解し、習得できたとしても、実際に運用できるものは限られているからだ。

 超一流と呼べる武装召喚師にしか、運用できない。

 しかも、だ。

 兵装召喚術は、複数の武装召喚術を同時に召喚するという性質上、術師にかかる負担は並外れて大きい。同時併用よりは消耗も負担も増しではあるが、ランスロットでさえ、戦後しばらくはまともに動けなかったほどだ。たとえ超一流の武装召喚師でも、長時間運用できるものではない。

 そこで、ランスロットは、兵装召喚術そのものに大きな手を加えた。

 個人で運用するからその負担が大きく、消耗も激しいのだ。複数人で分担すれば、ひとりひとりにかかる負担は大きく分散され、長時間の運用も可能となる上、召喚兵装そのものの質を上げることさえ可能となる。

 つまり、武装召喚師を五人一組の班に分け、班でひとつの召喚兵装を生み出す、ということだ。

 そんなことができるのか、といえば、実際にできたのだからもはや疑問を持つことではない。

 ランスロットは、複数人でひとつの召喚兵装を組み上げるという術式の構築に成功し、それを自分以外の他人に使用させることにも成功したのだ。

 この技術を応用すれば、複数人でひとつの召喚武装を呼び出す術式を組み上げることも可能だが、それに関しては利点は小さい。召喚に関する負担と消耗を分担できるだけであり、召喚武装ひとつならば、個人で十分賄えるからだ。

 召喚兵装の質を高め、長時間の維持を可能とすることこそ、ランスロット流複式兵装召喚術の利点なのだ。

 しかも、覚えなければならないことも五分の一でよく、一から教えるという意味でも利点があった。

 教える相手が超一流の武装召喚師ばかりだということも、この場合、利点として働いている。

 ランスロットは、数千名の帝国武装召喚師の中から選りすぐりの二百名を四十組の部隊に分け、それらに複式兵装召喚術を叩き込んだ。

 かくして、ランスロット率いる兵装召喚術師団ができあがり、統一ザイオン帝国防衛の要となった。

 たった四十組。

 されど四十組だ。

 それら一組一組は、ランスロットが分霊撃破の際に用いた召喚兵装よりも高品質高性能の召喚兵装を呼び出すことができるのだから、戦力としては申し分なかった。

 ランスロット自身は、といえば、別に一組の複式兵装召喚師部隊を率いることにした。

 ランスロットは、個人でも兵装召喚術を用いることができる上、その性能たるや凄まじいものがある。が、長時間の運用には大きな問題があった。消耗と負担が大きすぎるからだ。あのときも、もし分霊があれ以上持ち堪えるようなことがあれば、召喚兵装を維持して戦い続けることもできず、敗れ去っていたかも知れないのだ。

 そのことを考えれば、ランスロットが独自に支援部隊を持つことは理に適っているはずだ。

 複数人の武装召喚師が複数の召喚武装で役割を分担するのと、複数の武装召喚師が複数の召喚武装をひとつの召喚兵装に組み上げるのとでは、どちらがより効率的なのか。

(その疑問に対する解が、これだ)

 ランスロットは、四十組の兵装召喚師部隊がつぎつぎと術式を組み上げていく中で、彼自身もみずからの部隊とともに術式の構築を開始した。

 すると、四度目の砲撃が在った。

 今度は、一カ所に集中させるのではなく、複数箇所に向かって分散させたものであり、ディヴノアを中心に構築された防衛網各所に神威砲が降り注いだ。ディヴノアへの二度目の砲撃が軽減されたことが理由なのか、どうか。

 しかし、そのおかげで全体的な被害は軽微で済んでいる。

 一斉砲撃の一点集中こそ魔光壁を貫通するだけの威力を発揮したものの、砲撃の目標が分散したことで一撃一撃の威力が落ちたのだろう。だが、一番強力な砲撃は、ひとつの陣地を完膚なきまでに破壊しており、その跡地に敵性存在が出現したという警告が、全軍に響き渡った。

 近隣の陣地から、該当陣地へと戦力が差し向けられる中、ランスロットは、焦りを覚えた。

 一刻も早く敵艦隊の砲撃を止めなければ、一方的に攻撃され続けるだけに終わりかねない。

 複数人による兵装召喚術式の構築というのは、簡単なことではない。ひとつの術式を多人数で組み上げるのだ。覚えなければならないことは参加人数で分担すればいいのだが、呼吸を合わせるというのは、中々に難しい。そのために並外れた回数の訓練をこなし、血反吐を吐くような想いで修行を繰り返したのだ。

 そして、四十組二百名の武装召喚師は、兵装召喚師となった。

『武装召喚!』

 異口同音に叫んだ術式の結語は、武装召喚術と変わらない。

 兵装召喚術は、武装召喚術の応用・発展技術だ。武装召喚術の術式をイェルカイム独自の理論で組み替えることで完成した新たな術式に過ぎない。従って、召喚術発動のための結語に手を加える必要はなかった。むしろ、そこに手を加えて発動しないようなことがあれば、それこそ本末転倒も甚だしい。

 五人一組の武装召喚師たちは、その中のひとりを取り囲むように陣を組む。その中心のひとりに呼び出された召喚武装が集中し、複雑に組み合わさってひとつの召喚兵装が顕現する。

 複数の召喚武装を組み合わせたそれは、ただ同時併用するよりも遙かに強力で、かつ凶悪な性能を発揮しうる。

 ただし、扱いは難しく、故に各部隊の中でもっとも優秀な武装召喚師が、その役割を担った。

 ランスロットを含めた四十一名の召喚兵装の使い手は、ランスロットの指示に従い、陣地を飛び立った。


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