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武装召喚師――黒き矛の異世界無双――(改題)  作者: 雷星
第三部 異世界無双

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第三千百八十四話 三位結界の攻防(十五)

 エリルアルムが騎士団とともに目指したのは、当然、敵小型飛翔船であり、一隻でも多くの飛翔船を撃墜することこそ当面の目標とした。

 三位結界内の空域には、数多くの小型飛翔船が飛んでいる。敵はそれだけではなく、数え切れないだけの神人や神鳥が連合軍将兵と激闘を繰り広げているのだが、まずは、連合軍陣地への直接攻撃を防ぐべきだというのがセツナ一行共通の認識だった。

 連合軍の空中戦力もまた数多とあり、それらが敵空中戦力に対応しているのだ。

 遊撃隊としての役割を担うセツナ一行は、戦場にあってもっとも危うい部分を担当するべきだった。

 それこそ、小型飛翔船への対処だ。

 エリルアルム率いる銀蒼天馬騎士団は、ソウルオブバードの能力によって翼を得、一塊となって星空の下を飛んでいく。

 銀蒼天馬騎士団は、かつて総勢一万余を数えたエトセア突撃機動軍の精鋭であり、エリルアルムの親衛隊ともいうべき存在だった。しかし、最終戦争の龍府戦役において、突撃機動軍の半分を失ったエリルアルムは、突撃機動軍そのものを銀蒼天馬騎士団として再編。銀蒼天馬騎士団は五千名の大所帯となった。

 もっとも、現在そのほとんどは龍府防衛のために龍府に残されており、エリルアルムとともにセツナ一行に加わったのは、五百名ばかりだ。

 そのうち十名が武装召喚師であり、それぞれに異なる召喚武装を手にしている。加えて十二名がザイオン帝国で受け取った召喚武装の使い手となっており、エリルアルムと他の召喚武装使いを含めた二十六名が召喚武装の使い手として数えられる。

 残り四百数十名もまた、ソウルオブバードの能力によって翼を得ているため、通常戦力以上の力を発揮してくれること請け合いだ。 

 それもあり、エリルアルムは、銀蒼天馬騎士団を複数の部隊に分けている。

 エリルアルム率いる第一部隊、レーヴェン=シドル率いる第二部隊、ケフナー=アンシュフィ率いる第二部隊、ログ=バランジア率いる第三部隊、ナーレ=イズール率いる第四部隊、ドレン=サグナバウ率いる第五部隊という五つの部隊だ。

 それぞれ百名であり、これでも大所帯だが、小型飛翔船の撃墜を目的としていることもあり、これ以上の戦力分散はするべきではない、と、エリルアルムは考えたのだ。

 そして、エリルアルム率いる第一部隊は、最初の目標となる小型飛翔船に接近すると、敵兵による反撃を受けた。

 小型飛翔船には、人間の兵士が乗り込んでいる。飛翔船の甲板に姿を見せた兵士たちは、弩弓のような兵器を用いて攻撃してきており、エリルアルムたちは、高速で飛来する矢を避けながら船への接近を試み、あるいは遠距離からの攻撃を試みなければならなかった。

「まずはあの船を落とす。いいな、一隻でも多くの飛翔船を落とし、我が方の勝利に貢献するのだ」

「御意」

「そして我らの活躍をもってして、セツナ様に大いに主張しましょうぞ」

「なっ!?」

 突然なにを言い出すのかと、エリルアルムは、部下のひとりを睨み付けた。

 この戦場で、そのようなことをいっている場合ではあるまい。

 が、部下は、涼しい顔で告げてくるのだ。

「姫様の幸福な将来こそ、我ら臣下全員の悲願にして希望にござりますれば、斯様な望みを掲げること、お許しあれ」

「然様。エトセアの現状が不明ないま、我らエトセア人の残された希望は、姫様ただおひとり」

「姫様のためなら、我が命を燃やし尽くしましょう」

「……わかった」

 彼女は、憮然とするほかなかった。普段から彼女の意向に逆らうような騎士たちではない。むしろ従順で、彼女の命令を絶対遵守するのが、エトセアの騎士なのだ。

 それがいま、彼女の意に逆らっている。

 そこには、並々ならぬ覚悟があるのだ。

「わかったから、死ぬな」

「はい?」

「セツナ様も仰られたことだ。この戦いで死ぬことは許さぬ。生きて、わたしに尽くせ。そうすれば、戦場にあってはならぬいまの発言、聞かなかったことにしてやる」

「それは困りますな」

「なんだと」

「聞いて頂かなければ」

「そうですよ、姫様」

「姫様には、幸せを掴んで頂く。そのために、我々はこの地獄のような戦場に身を置くのです」

「……わかったよ」

 エリルアルムは、騎士たちの熱意を受けて、折れた。この状況下では、問答を続けることはできない。そんなことをしている間に、失わなくていい命を失うことになりかねないのだ。

「だから、死ぬなよ」

『御意!』

 およそ百名の騎士たちは、全員が全員、エリルアルムの耳にはっきりと聞こえる声でうなずいた。

 エリルアルムは、主君想いの部下に囲まれている幸福を感じながら、彼らのためにこそ、生き残らなければならないと思い直した。

 そのためにも、まずは目の前の船を落とすことだ。

 

 激戦が続いている。

 開戦以来、終わりの見えない戦いがこの三位結界内のそこかしこで繰り広げられている。

 トラン=カルギリウスもその激闘の中に身を置いているのだが、中々どうして、先が見えない。

 銀衣の霊帝ラングウィン=シルフェ・ドラースが竜騎士のひとりとして、守護竜とともに空を飛び回りながら、もっとも注意するべき敵戦力の撃墜に専念している。

 それこそ、セツナたちによって小型飛翔船と呼称されるようになった空飛ぶ船であり、その撃墜には、竜騎士と守護竜が力を合わせれば、必ずしも難しいことではなかった。小型飛翔船側がどれだけ迎撃態勢を取ろうとも、魔法障壁を展開する守護竜の背に乗ったトランを撃ち落とすことなどできるわけもなく、船への接近を許すしかない。

 船への接近を許せば、あとはもう、トランの独壇場といっても過言ではなかった。

 トランは、二名の高弟が呼び出した召喚武装を手にしている。クユン=ベセリアスの直剣型召喚武装アークセイバーと、アニャン=リヨンの直刀型召喚武装坤龍だ。長年愛用している二本の召喚武装を手にした“剣聖”を捉えられるものなど、そういるはずもない。

 確かに敵兵は人間だが、ただの人間の兵士とは違う。神の加護により多分に強化されており、手を抜いたり、油断をすれば、痛手を負う可能性も十分に考えられる。

 が、竜騎士トランの相手ではなかった。

 そもそも、トランは、相手がだれであれ油断するような人間ではなかったし、どれだけ力量差があろうとも、わずかな油断が命取りであるということをだれよりもよく知っていた。

 だからこそ、一隻一隻に全力で当たるのであり、立ちはだかる敵にも容赦しなかった。

 確実に敵兵を仕留め、確実に船を撃墜する。

 そうして十隻近くの船を沈めた頃だ。

「おかしいですねえ。敵さん、ぜーんぜん、減ってくれないですう」

「むしろ増え続けているような……」

 アニャンとクユンがそれぞれの守護竜に乗って、トランの元に集まった。

 トランの高弟ふたりは、いずれも武装召喚師であるとともに竜騎士であり、各々、飛翔船撃墜の任を負って、戦場を飛び回っていた。おそらくふたりともトランに負けないくらいの数の船を撃沈してきたに違いない。そんな彼女たちの話を聞いて、トランは戦場を見渡した。

「増え続けている……か」

 いわれてみれば、開戦からこっち、敵の数が減った気配がなかった。

 むしろ、味方の数の方が減っている。

 竜や皇魔、武装召喚師で構成される連合軍空中戦力。

 その陣形がわずかに崩れ始めている。

 押されているのだ。


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