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第千三百六十話 タウラルの背約者(四)

「ソウルオブバード……」

 シーラは、ザイードが掲げた槍を凝視した。鳥の嘴を連想させる穂先といい、羽飾りといい、鳥を意匠に取り込んでいるというのは一目で分かる。異形なのも召喚武装らしくあり、だからこそハートオブビーストの速度についてこられたのだ。でなければ、シーラの最初の攻撃でザイードの胴体は真っ二つになっていてもなんら不思議ではない。召喚武装の補助を得たシーラは、いかに猛将といえど、手に負えるものではないのだ。

 セレネ=シドールは、アバード王家に仕えていた武装召喚師だ。シーラに召喚武装ハートオブビーストを献上した人物であり、シーラにとっては召喚武装の使い方を教えてくれた先生でもあった。故にセンセと親しみを込めて呼んでいた。そんなセレネはエンドウィッジの戦いに赴き、死んでいる。武装召喚師だ。戦場では死なず、シーラを演じたレナ=タウラルともども、王都にて処刑されたということだった。

 シーラに伝わる話では、セレネは拘束後、召喚武装を取り上げられたといい、送還されないまま処刑されたという。つまり、彼が最後に召喚した武器はこの世に残っているはずだったのだが、アバードの動乱の最中、紛失し、動乱終結後も発見されないままだった。シーラとしては、セレネの遺品であるその召喚武装をなんとしてでも探し出したかったものの、アバードの総力を上げて捜索しても見つからなかったことあら諦めていた。

 まさか、こんなところで見つかるとは、想像できるわけもない。

「おまえが持っていたのか……ザイード」

 こみ上げてくる怒りがハートオブビーストを握る力へと変わる。セレネが送還しなかったのは、あえて、だろう。彼は、アバードを愛していた。召喚武装をこの世に残すことで、アバードの役に立てて欲しいという想いがあったに違いない。でなければ、考えられないことだ。捕縛されてから王都に移送され、処刑されるまで、送還する時間はいくらでもあったはずだ。

 あえて送還しなかったとしか、考えられなかった。

 だからこそ、シーラは、ザイードを睨んだ。

「そうだ。そしてこの力こそ、わたしが新たな国の王となる証明なのだ」

 槍が光を発した瞬間、ザイードの背から翼が燃え上がるようにして出現した。ソウルオブバードの能力は、ハートオブビーストの能力によく似ているのかもしれない。ハートオブビーストの能力は、半獣化ともいうべきもので、使用者の体に獣の特徴が現れる。対してソウルオブバードの能力は、半鳥化というべきものらしかった。

 もっとも、炎の如く赤々と輝く翼は、鳥の翼というよりは神話や伝説などに登場する不死鳥の翼のように見えたし、翼から舞い散る無数の羽は火の粉の如く、神々しささえあった。

「新たな国の王……」

 反芻すると、呼吸が乱れた。言葉の意味を理解したとき、怒りが一瞬にして沸点に達した。セレネの召喚武装を隠し持っていたこともそうだが、彼の裏切りが個人的な野心に基づくものだと判明したことが、感情を昂ぶらせた。

「それがおまえの謀叛の理由か」

「そうだ。それこそ、わたしの戦う理由。ここにいる理由なのだ」

「ふざけやがって」

「ふざけてなどいない。わたしは至って真面目だよ、シーラ。わたしは真剣に新たな国を創ろうとした。だが、このザマだ」

 彼は、ソウルオブバードを構え直した。

「あなたたちがもう少し戻ってくるのが遅ければ、な」

「残念だったな。おまえの大それた夢は、ここで仕舞だ」

「どうかな?」

 ザイードがにやりとする。と、シーラの後ろから声が聞こえた。

「シ、シーラ隊長……」

「なんだ?」

 振り向きもせず、問う。

「あ、あれを見てください」

「死んだはずなのに……」

「そうよ、殺したはずよ!」

「いったいどうなってんだい!?」

 黒獣隊の幹部たちがつぎつぎと悲鳴じみた声を上げる。

 シーラは、周囲を一瞥して、状況を理解した。

 死んだはずのザイード軍兵士たちがつぎつぎと起き上がり、武器を構え始めたのだ。生きていたわけではないのは、それら兵士たちの傷を見ればわかる。いずれも致命傷であり、大量の血を流しているものもいる。どうみても助かるはずのない傷を負ったものばかりであり、生きているはずがなかった。部下たちのいう通り、殺したはずなのだ。

「……ソウルオブバードの能力か」

 生き返った、というわけではなさそうだった。

 死んだまま、動き出したと見るべきだろう。

 そして、そのまま攻撃態勢に入った死者の軍勢へ、黒獣隊をはじめ、アバード解放軍が応戦する。

「どれだけ射ち込んでも死にませんな」

 サランがあきれるようにいった。剛弓の一矢でも死なない相手など、そういるものではあるまい。

「死んでいるものが死ぬはずはないだろう」

「道理だが、だからどうだってんだ?」

 シーラは、ザイードを見据えて、鼻で笑った。状況は、良好ではない。不利といってもいいだろう。なにせ、ソウルオブバードの影響下にある敵兵は、どれだけ強烈な攻撃を叩き込んでも死なないのだ。

 サランの剛弓が唸り、凄まじい威力の矢が叩きこまれたとしても、肉体が損壊されるだけにとどまっている。手が吹き飛んでも無反応だ。痛覚がないのだろう。足が吹き飛ばされたとしても、地面を這うようにして迫ってくる。首を切り飛ばしたとしても、だ。目が見えず、音も聞こえないというのに、こちらに向かって攻撃してくるのだから、異様だ。異様な光景だった。まさに地獄絵図といっていい。星弓兵団の一斉射撃も、不死の軍勢にはなんの意味もない。矢を受けても足が止まらないのだ。クロナの戦斧が胴体を薙ぎ、真っ二つにしても、上半身だけで迫ってくる。腸を撒き散らしながらだ。なんともおぞましく、凶悪な能力。

 だが、それだけだ。

「不死の軍勢だかなんだか知らねえが、ようは、おまえを倒せばそれで終わりだ」

「倒せると?」

 ザイードが突っ込んでくる。半鳥化したことで、ザイードの身体能力は大幅に上がっていた。それも、ハートオブビーストの能力に似ている。ハートオブビーストの半獣化は、身体能力を強化する能力なのだ。しかし、ザイードの攻撃そのものが素直なため、見切れた。

「おまえくらい、俺ひとりで倒せなきゃならねえんだよ」

 シーラは、ザイードの斬撃を受け流すと、下腹部に蹴りを叩き込み、すぐさま距離を取った。

「でなきゃ、あいつの側にはいられねえ」

 それもまた、極めて個人的な理由だ。だが、個人的な野心で謀叛を起こした相手を倒すには、それで十分だろう。叫ぶ。

「力を貸せ、ハートオブビースト!」

 まるで、シーラの想いに応えるように、ハートオブビーストがうなった。

 タウラル要塞に血は満ちている。ハートオブビーストの能力を発動する条件は、戦場に血が流れることだ。血が流れれば流れるほど強力な能力が発動するのだが、どうやらそれだけが条件ではないらしい。第二の条件があり、その条件を満たすことで、それは顕現する。

 能力の発動によって、シーラは、あらゆる感覚が研ぎ澄まされるのを認めた。召喚武装の補助だけでなく、さらなる身体能力の強化。互換の拡張。大気のわずかな振動さえも触覚と聴覚で捕らえ、呼吸による身体の揺れさえも視覚で捉える。動体視力そのものも向上している。

「狐に化けたところで、不死鳥には敵わぬ!」

 ザイードの行動のひとつひとつが酷く緩慢に見えた。

「狐?」

 シーラは、ザイードの突撃からの斬撃をいなしながら、疑問符を浮かべた。自分の身に起きた変化が自分自身ではわかりにくいことがハートオブビーストの難点だった。全軍を鼓舞する能力ライオンハートはまだいいが、キャッツアイやラビットイヤーは他人に指摘されてやっとわかったりする。頭部に出現する耳の形状など、自分の目では見えない。

「つまり上手くいったってことだろ」

 シーラは、臀部に生えた尾を意識した。ハートオブビーストの能力は、身体機能を拡張するものでもある。特定の獣の特徴的な部位が新たに出現するとともに、それらの部位を意識して動かすことができるようになるのだ。ただの飾りではないということだ。それはおそらく、ソウルオブバードの翼も同じだろう。

「狐になりたかったんだよ、俺は」

 ハートオブビーストの最大能力は、狐への変異だった。

 白毛の九尾の狐。

 アバード王都バンドールを瞬く間に壊滅させた巨獣は、半狐化した際の力であり、九つの尾が創りだした像だったのだ。

(しかし……)

 シーラは、尾の感覚がひとつしかないことに気づき、ザイードの言葉の意味を把握した。九尾ではないから、ただ狐といってきたのだ。九尾であれば、王都を壊滅させた九尾の狐を想起したに違いない。尾がひとつでは、ただの白狐だ。

「シーラ隊長!」

「なんでもいいからさっさとしてください!」

「そうですよ! とっととやっつけてくださいよ!」

「こっち、大変……」

 部下たちの悲鳴にも似た叫び声を聞きながら、シーラはザイードの猛攻を捌いた。ザイードの攻撃は素直だが、一撃一撃が重く、強烈だ。まともに喰らえばただでは済まない。たとえハートオブビーストの補助を得たとしても、肉体の硬度そのものが変わるわけではないのだ。

「わかってるさ。俺だって、結構大変なんだぜ?」

「力の扱いに苦労しているようだな」

「まあな」

「召喚武装というのは恐ろしいものだ。秘めた力は強大過ぎ、手にしたものは野心を抱く。こんなものを手にしなければ、良かったのかもしれないな」

「だったらなぜ、隠匿した」

「力が欲しい」

 ザイードが臆面もなく告げてきたのは、本音なのだろう。力が欲しい。だれもが思うことだ。シーラ自身、最近はよくそう想う。あのひとのためにも、力が欲しかった。力さえあれば、あのひとを護れるからだ。

「力さえあれば、この国を護ることができる。この国を鎮めることができる。この国をよりよくできる。そう信じた。だが」

「力に溺れたか」

「召喚武装は、常人に扱えるものではない。扱うには、相応の修練が必要だ。独自に修練を積むうち、これこそわたしの求めた力だと想った。力を得たのだ。得た力は、使うべきだ」

「それを力に溺れたっていうんだよ」

「あなたも、同じだろう」

「違うな」

「どこが違う!」

「おまえほど、周りが見えてねえわけじゃあねえのさ」

 シーラが告げた瞬間、ザイードが右に飛んだ。サランの矢が飛来したからだが、それは、シーラにもわかりきっていたことだ。ザイードの移動先に向かって、斧槍の切っ先を叩きつけている。ザイードの翼が翻り、穂先を受け止める。火の粉の如く、羽が散る。燃え盛る炎のような翼は盾にもなるようだった。

「甘い!」

 ザイードは、叫びながら翼を展開し、シーラの斧槍を受け流した。隙を見つけたと認識したのだろう。徐ろに槍を突き出してくる。鋭い突きの一撃。シーラは見切っている。避けるまでもなかった。つぎの瞬間には、ザイードの腹を白狐の尾が貫いていたからだ。槍の切っ先がシーラの眼前に到達した刹那のことだった。

「馬鹿な……!?」

「いうほど甘くなんてねえよ」

 シーラは、ザイードの口から噴き出す血を見て、告げた。尾は、硬質化し、槍のようにザイードの胴体を鎧ごと貫いたのだ。そして、そのまま彼の体内で無数に分かれ、内臓をずたずたに切り裂いている。臓器という臓器が食い破られ、絶対に助かることはない。まさに致命的な一撃。ザイードが為す術もなく絶命したのは、彼の背から生えていた不死鳥の翼が無数の火の粉となって散っていったことからもわかる。召喚武装の能力が維持できなくなったのだ。使用者が事切れたということにほかならない。

 ザイードの体内から尾を抜くと、彼の体は力なく崩れ落ちた。尾が開けた腹部の穴から血が流れ落ちたが、亡骸から流れ出る血の量は思った以上に少なかった。

「ああいうのは、見慣れてるんでな」

 シーラは、目を見開いたままのザイードを見下ろしながら、静かに告げた。翼型の召喚武装の戦い方のことだ。翼を盾のようにして攻撃を防ぐのは、翼型召喚武装の異本的な戦闘術であり、対策くらいは練っていた。シーラの身近に翼型召喚武装の使い手がいる。歴戦の猛者である彼とは、何度か手合わせしてもらったことがあるのだ。翼を巧みに操り、自由自在に変化させる彼の戦闘術は、さすがは武装召喚師というものであり、ザイードとは比較するまでもなかった。

 ザイードは、武装召喚師ではない。双牙将軍に登り詰めただけあって、戦士としては一流といっていい実力の持ち主だった。シーラが戦士としての道を歩み始めてからというもの、何度となく手合わせしてもらい、戦い方の基礎を学んだ人物でもある。ガラン=シドールともどもアバードの双璧足り得たのは、彼自身が優秀な戦士だったからだ。そんな彼だからこそ、ソウルオブバードをある程度使いこなせるまでになったのだろうが、残念ながらあの程度の戦闘術では、シーラを出し抜くことなどできるわけもなかった。

 召喚武装を巧みに操れるようになるには、研鑽と修練を積むしかない。血反吐が出るほどの研鑽と修練の中でコツを掴み、また、召喚武装と心を通い合わせることができるようになってはじめて、召喚武装の使い手といえるようになるのだ。ただ能力をある程度使えるようになっただけでは、召喚武装使いなどとはいえまい。召喚武装を使っているだけでは、意味がないのだ。

「付け焼き刃だったってことだ」

 ザイードの亡骸は、もはや動くことはない。絶命した。殺したのだ。ほかに方法はなかった。ほかに選択肢はなかった。ザイードが敵対の道を選び、投降を良しとしなかったのだから、そうするしかなかった。

(これで良かったんだよな)

 だれとはなしに問うて、シーラは周りを見回した。周囲では、ソウルオブバードの能力が停止したことで、さっきまで暴れまわっていた不死者たちが動かなくなり、完全な死者へと戻っていた。無残な亡骸が多いのは、不死者たちの猛攻を食い止めるためだ。徹底的に破壊しなければ、ソウルオブバードの影響下にある不死者の動きを止めることはできなかったのだ。首を切り飛ばしても、心臓を破壊しても、胴体を真っ二つに切り裂いても、彼らは敵を求めて動いた。死者を強制的に動かす能力。強力だが、凶悪で、人道に反している。

 その能力を知れば、セレネがシーラの前で召喚しなかったのもよくわかるというものだ。セレネが死者を利用しようものなら、シーラは彼を徹底的に非難したかもしれない。アバード王家に列するものとしては、死者を冒涜するような行いを許す訳にはいかないからだ。

「はーっ……良かったあー」

「死者が動き出すなんてねえ」

「もう懲り懲りだわ」

「本当に……」

 不死者と激闘を繰り広げていたらしい部下たちの感想を聞きながら、その場に屈みこむ。ザイードの手から槍を取る。固く握り締められていたものの、特に問題なく奪い取ることに成功する。ソウルオブバード。セレネ=シドールの形見ということになるのだろう。彼がおそらくはアバードのために残した召喚武装。

「ソウルオブバードか」

「セレネさんの召喚武装……」

「まさかザイードが隠し持っていたとはな」

 ソウルオブバードを掲げながら、シーラは嘆息するようにつぶやいた。

 セレネの名も知れぬ召喚武装が紛失したのは、エンドウィッジの戦いが終わり、セレネたちが王都に移送された後のことだ。召喚武装の紛失など考えられない事態であり、王宮は大騒ぎになったものの、結局見つからないまま時が過ぎ、アバード動乱が起きた。シーラがその事実を知ったのは動乱終結後、アバードが落ち着いてからの話であり、それまで、セレネが召喚武装を遺して死んだということはまったく知らなかった。知っていたからといってなにができたわけもないし、知ってからも、彼女にはどうすることもできなかった。アバード王宮が総出で探し回ったのに見つからなかったのだ。もしかしたら、気づかぬ内に送還された可能性もあり、シーラはそう想うようにしていた。セレネのことだ。問題が起きないよう処置したとしても、なんら不思議ではなかった。

 しかし、実際にはザイードが隠し持っていて、人目に触れないところでソウルオブバードの扱い方を研鑽し、修練していたようだった。能力に関しても、試行錯誤を繰り返した末、あのような能力があることを知ったに違いない。アバード動乱時に用いなかったのは、まだそこまで研鑽が進んでいなかったからだろう。召喚武装の習熟には、時間がかかるものだ。

 今回、満を持して持ちだしてきたのだろうが、相手が悪かった。

 召喚武装を扱い始めたばかりの素人と、玄人のシーラでは話にならない。

 もっとも、能力の相性というものもあるし、九尾の白狐の能力がわずかでも発現したからというのもあるかもしれない。

「これでタウラルは解放できたというわけですな」

「ああ」

 シーラは、サランを振り返った。剛弓を担いだ弓聖は、額から汗を流していた。負傷は一切していないようだが、不死者を撃破するのに相当労力を要したようだった。疲労の色が見える。

「しばらくは、落ち着くかな」

「どうでしょうな」

「じーさん?」

「メレドが牽制しているとはいえ、イシカがこのまま黙っているとは思えません」

 サランは、遠く西の彼方を見遣りながら、いってきた。イシカは彼の出身国であり、ジゼルコートに同調した国のひとつだということが明らかになっている。サランは国王の命令でレオンガンドを暗殺しようとしたのだ。それが失敗に終わり、サランがレオンガンドに降ったということも、イシカには伝わっているだろう。イシカはいまのところなんの反応も見せていないが、彼の言う通り、今後、なんらかの行動を起こしてきたとしても、不思議ではない。

「イシカが行動を起こしたとして、真っ先に狙われるのはどこだと思われますかな?」

「まさか、アバードか?」

「レオンガンド陛下の足を引っ張るつもりならば、そうするでしょう。アバードの戦力が少ないことは、イシカも承知のはず」

「……ヴァルターへ戻ろう」

 シーラが告げると、サランはなにもいわずにうなずいた。

 イシカの領土は、アバード領に隣接している。もっとも近いのがヴァルターであり、イシカが軍勢を差し向けてくるとすれば、ヴァルター以外には考えられない。

 セイルたちはヴァルターから王都バンドールに戻ったはずだが、だからこそシーラたち解放軍がヴァルターに向かわなければならないのだ。ヴァルターの護りは、極端に手薄になっている。

 イシカ以外にも、場合によっては、マルディア軍が攻め寄せてくる可能性だって十分ありえた。

 レオンガンドたちがジゼルコートを討ち、ガンディアと周辺の政情が安定するまでは、シーラはアバードを離れることはできないかもしれない。

 アバードはガンディアの属国だ。属国の領土を維持することもまた、ガンディアの国力を維持することに繋がり得た。

 シーラたちがアバードを護ることになんの問題もないということだ。

 そうして、シーラたちはその日だけタウラルに留まって体を休め、タウラルを牙獣戦団に任せると、ヴァルターに戻るために移動を開始したのだった。

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