第36話「共鳴する鼓動」
クロノスの出現によって明かされた“融合実験”――
リゼがその媒体に選ばれ、カイルは命がけの選択を迫られる。
そのとき、心の底から響く“何か”が、カイルの中で目を覚ます――。
「リゼ……っ!!」
空中で拘束され、苦しむリゼ。
その身を包む魔導柱の光は、徐々に脈動を強め、彼女の身体を変質させようとしていた。
「やめろ、やめてくれっ……!」
カイルが叫ぶ。しかし、足元がふらつく。
クロノスの一撃で受けた内臓の損傷。血の匂いが、喉を焼く。
クロノスは無感情に言う。
「やはり限界か。“感情”は君を強くもするが、脆さも生む」
「だったら……!」
カイルは拳を握り、血に染まった剣を再び構えた。
「感情で何が悪い! リゼが、仲間が、苦しんでるってのに……!
黙って見てろってのかよ!!」
その瞬間、カイルの胸に焼けつくような熱が走る。
右手の甲に、古代文字のような痕が浮かび上がった。
《Protocol・ZERO/Rebooting(再起動)……》
「な、何……?」
クロノスの目がわずかに見開かれる。
「……“ゼロ・コード”が……自発発動? これは……!」
そのとき、カイルの剣がまばゆい光に包まれる。
リゼの目がかすかに開く。
「カイル……それ……」
「分からない……けど……これが……俺の、“応え”なんだッ!!」
剣を握る両手に全魔力を集中し、カイルは跳躍する。
「クロノスッ!!」
「……面白い……!」
クロノスが指を鳴らすと、周囲に防壁が展開される――だが、
カイルの一閃が、まるで時間そのものを裂くかのように、すべてを貫いた。
「斬れえええええっっ!!」
――ズバァァァァァァン!!
魔導柱が真っ二つに切断され、リゼの拘束が解けた。
「……カイル……」
彼女がゆっくりと落下し、それをカイルが受け止める。
「……間に合った、か」
「……馬鹿、痛い顔して……」
「ありがとな……リゼの声が……届いたから」
その背後で、クロノスの影がゆらりと立ち上がる。
「これは……想定外だ。“コード”が意志を持つとは」
カイルが剣を構え直す。
「これが、俺たちの《ゼロ・プロトコル》だ」
目覚めた“ゼロ・コード”の力。
カイルの強い想いが、リゼを救い、運命すらも変えようとしています。
だが、クロノスは未だ余力を残している――。
次回:第37話「もう一つのゼロ」
謎の少女・ノワールの真意が明かされ、物語はついに“核心”へと向かいます。




