第27話「封じられた記録と旧ギルド」
“音を吸う魔物”を討伐したカイルとリゼ。
だが、あれは単なる「前兆」に過ぎなかった。
フィローネの街の地下には、かつて存在した冒険者ギルドの“旧区画”が眠っている。
そこには、魔物の起源と、失われた記録が封印されていた――。
翌日、ギルドに報告に向かったカイルとリゼは、受付の老騎士・ザイガに呼び止められた。
「……報告書は見た。お前たち、旧市街の地下に踏み込んだそうだな」
「はい、でも封鎖はされてなかったはずです」
「そりゃ、表向きはな。だがあそこはな……」
ザイガの目が細くなる。彼の表情には、ただならぬものがあった。
「50年前、“旧ギルド”があった場所だ」
「旧ギルド?」
「今の本部が建つ前、冒険者たちは地下の拠点で任務を受けていたんだ。
だが、ある時期を境に、あの場所は封印された。理由は――“魔物が生まれた”からだ」
「……生まれた?」
「そう。誰も見たことのない異形の存在。
冒険者の一団がそれに挑んだが、全滅。以後、記録も抹消された」
沈黙が落ちた。
「なら、昨日の魔物は……」
「あれは、当時の“残り火”だ。地下の封印が劣化し始めてるのかもしれん。
だが……」
ザイガは奥の部屋から、古びた鍵を取り出した。
「この“鍵”は旧ギルドの扉を開くものだ。使うかどうかは、お前たち次第だが……」
リゼがカイルを見る。カイルは、頷いた。
「行くべきだと思う。放っておけば、あの魔物がまた現れる」
「私も、そう思う。行こう、カイル」
その夜。2人は鍵を手に、地下水路の奥深くへ向かった。
地図にも載っていない隠し扉。その前で、カイルは鍵を差し込む。
ギィ……と重々しい音とともに、封じられていた扉が開いた。
そこは――かつて、冒険者たちの熱気に満ちていた拠点の、亡霊のような空間。
朽ちた机、苔むした武具、割れた看板。
時が止まったまま、そこにあった。
「……ここが、旧ギルド」
だが、2人の背後で――再び、気配が動いた。
“音を吸う”魔物。その“成体”が、目覚めようとしていた。
かつての拠点に眠る、失われた真実。
旧ギルドの秘密は、カイルたちをさらに深く過去の闇へと導いていきます。
次回、「旧ギルドと“異形”の記憶」
この街の地下に何が眠るのか?
そしてカイルとリゼの前に現れる“成体”の魔物とは――!




