第23話:「初任務、森に潜む盗賊団」
筋肉痛の先にあるのは、初めての“実戦”――。
今回はカイルとガルド、初任務で盗賊団のアジトに挑みます!
「カイル、気ぃ引き締めろよ。今回は“本物の戦い”だ」
「わかってるって。……震えてないし」
「……肩、ピクピクしてるぞ」
「気のせいだってば!」
カイルはそう言いつつも、胸の鼓動が早まっているのを自覚していた。
森の入り口――この先に、彼の“初任務”の舞台がある。
標的は、近隣を荒らす盗賊団。
少人数ながら、機動力と地の利を活かし、数件の商隊を襲っていた。
ギルドからの依頼を受けたガルドは、あえてカイルを連れていく決断をした。
「お前なら、やれる。俺がそう思ったから連れてきたんだ」
その言葉だけで、怖さの中に火が灯った。
***
森の奥、かすかな焚き火の匂いと話し声。
気配を消し、息をひそめ、音を殺す。
カイルの心臓がバクバク鳴る。隣のガルドは、いつも通り静かだった。
「……4人、確認。斥候は外に2人。奥にリーダー格がいるはずだ」
「どうする?」
「俺が斥候を黙らせる。その間に、お前は中に潜り込んで、状況を探れ。奇襲のタイミングは合図で知らせる」
「お、おう……!」
作戦はシンプル。だが緊張感は極限。
「カイル」
「ん?」
「もし怖くなったら、無理すんな」
その言葉が、不思議と安心をくれた。
「大丈夫。俺、やれる気がする」
ガルドはにやりと笑った。
***
闇に紛れて斥候が倒れる。
その音に気づかぬまま、盗賊たちは酒をあおっていた。
カイルは、低い姿勢で木の陰から一気に駆ける。
物音を立てず、気配を殺す。
修行の日々が、ここで生きる。
「――ん? おい、誰かいないか?」
中の男が首を傾げた瞬間。
カイルは近くの枝を蹴り、音を立てる。
視線がそちらに向いたとき、カイルはもう――頭上にいた。
「うおおおおおっ!」
振り下ろされる木の棒(ガルド手製)が、盗賊の後頭部を直撃。
ドスン、と倒れる音に、他の仲間が叫ぶ。
「何だ!? 襲撃だ!」
「よっしゃ、いいタイミングだカイル!!」
森の向こうから、ガルドが飛び込む。
斧が風を裂き、敵の刀を受け止め、弾く。
その隙に、カイルが側面を突く。
「せいっ!」
「ぐあっ!」
2人の連携は拙い。
けれど息は、なぜか合っていた。
***
30分後。盗賊団は全員拘束され、森に静寂が戻った。
「ふぅー……終わった……」
カイルはどさりと腰を下ろした。
「見事だったぞ、カイル。さすが俺の弟子」
「誰が弟子だよ……でも、ありがとな。……ガルドがいたから、俺、逃げなかった」
「ハッ、当然だ。俺がついてる限り、お前は絶対に倒れねえ」
火の粉のように、カイルの胸の中に“自信”の種が灯った。
初めての戦い――
恐怖を乗り越えた彼は、もう、ただの少年じゃない。
いよいよ“冒険者”らしくなってきたカイル。
今回は小さな勝利でしたが、これが彼の自信と誇りの礎になります。
次回はいよいよ、「ガルドとの別れ」と「新たな旅立ち」。
それぞれの道が、少しずつ形になっていきます。どうぞお楽しみに。




