表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

第1話「朝の5マイル走」

誰もが憧れる冒険者だけど、誰もがなれるわけじゃない。

剣の技術も、魔法の素質も大事。でも何より大事なのは――「走る足」。

これは、少年カイルが“地味で泥くさい現実”に打ちのめされながら、最初の一歩を刻む朝の記録です。

「……なぁ、バルク。これ、本当に意味あんのか?」


「うるせぇ、口より足動かせ!」


朝の5時半。村の外れ、朝露に濡れた未舗装の山道を、カイルはゼェゼェと息を切らして走っていた。


バルクから告げられたメニュー、それは「5マイル走を毎朝」という狂気の提案だった。


「冒険者になるなら、基礎体力がない奴は論外だぞ? 魔法も剣も、その上で成り立つんだからな」


そう語っていたバルクの顔は真剣だった。

――だからこそ、逃げたくても逃げられなかった。


「ぜっ、ぜっ……これ……5マイルって、どんだけだよ……」


「8キロちょいだな」


「おい、軽く言うな……ッ」


道の途中でつまずき、転ぶ。膝を擦りむいても、バルクは笑って言った。


「倒れても立ち上がる。それだけできれば、十分だ」


憎らしいくらい爽やかに。

でも――カイルはちょっとだけ悔しかった。

負けたくないと、心のどこかで思ってしまったから。


走り切ったのは、1時間20分後。

全身汗と泥にまみれながらも、カイルは言った。


「明日も……やるからな」


その声は、かすれていたけど――確かに誇らしかった。

第1話は「走るカイル」です。地味。でも、ここから始まるんです。

この頃のカイルは、まだ強くもなければ特別でもない。

けれど、彼の「やる」と言ったその言葉は、すでに未来を動かす強さの芽です。


次回、第2話「初めての『依頼』」。

村にやってきた見習い冒険者が、カイルに“ある依頼”を持ちかけます。

少しずつ世界が、カイルの前に顔を出し始めます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ