第16話:「レナの弓、アレックの剣」
仲間と連携すること、それが冒険者として次の課題。
カイルは再びレナとアレックとともに、パーティーとしての依頼に挑むことになる。
それぞれの戦い方、それぞれの信条。異なる者同士が、ひとつの目的のために動くには──
「今回の依頼、対象は“森の盗賊団”よ。三人組、短剣と軽装、魔法の使い手が一人。素早さと奇襲が得意みたい」
レナの読み上げるギルドの資料に、アレックがフンと鼻を鳴らした。
「ようするに、コソ泥どもってわけだな。だったらさっさと捕まえて、賞金もらって帰ろうぜ」
「油断しない。盗賊は追い詰められると何をするかわからない。三人だけど、私たちも三人。連携次第よ」
カイルはうなずきつつ、内心で緊張していた。
初めての“対人”戦闘。モンスターとは違う、予測不能な動きと知恵。
それを、チームでどう切り抜けるか──
***
盗賊団が潜伏しているとされる森の奥。
静かな木々の中で、カイルたちはそれぞれの得意を活かして展開した。
「足跡……右だわ。近い」
レナの索敵能力は見事だった。音の反射、葉の揺れ、土の踏み締め──
細かい気配の変化から敵の接近を見抜く。
「こっち来るぜ。三人、前と左、もう一人は木の上かもな」
アレックは武器を抜き、体を沈めた。
「カイル、俺が囮になる。右から回って、木上のやつを落とせ。レナ、弓を構えろ。外すなよ」
「言われなくても!」
カイルは頷き、弾かれるように走った。
──盗賊の一人と目が合う。短剣が構えられる。
だが、それより先に──
「はっ!!」
木の上から飛び降りてきた敵を、カイルは横なぎに打ち払った。
落下の衝撃で体勢を崩した男に、レナの矢が突き刺さる。
「残り二人、後ろに!」
アレックの剣が一閃。
小柄な盗賊が飛び退いて魔法を放とうとしたが──
「もう遅い!」
再び矢が射抜かれた。
「残り一人──!」
残った男は怯え、足をもつれさせながら逃げようとする。
だが、すでにアレックが背後を取り、柄で気絶させていた。
「……終わったな」
息を切らしながら、三人は互いの顔を見た。
そして、笑った。
「……ちゃんと戦えたね」
「まあ、合格だな」
「連携……成功、だな」
***
「全員、無事か?」
帰還した三人を迎えたガルドが、珍しく少しだけ笑った。
「よくやったな」
カイルは、仲間の姿を見ながら思った。
──自分ひとりじゃ、無理だった。
──でも、三人なら。
「次はもっと、上手くやれるはずだ」
その言葉に、誰もがうなずいた。
今回は、カイル、レナ、アレックの三人が本格的に連携して挑む初めての“対人”戦。
それぞれの得意分野を活かし、信頼と反射のような連携で勝利を収めました。
カイルの中で「チームで戦う意味」が少しずつ形になっていく回でもありました。
次回、第17話「ガルドの過去、剣士の選択」では、ガルドがかつて歩んだ道、そして彼がカイルに何を託そうとしているのか──
少し大人の視点で描かれる回になります。お楽しみに!




