第14話:「初めてのパーティー依頼」
朝の鍛錬を日課にし始めたカイル。
少しずつ手応えを感じ始めた頃、ついにガルドから「本番」――冒険者としての実地依頼への参加を告げられます。
そしてそこには、初めての“パーティー”が待っていて……?
「これが……俺の、初依頼」
カイルはギルド前に立ち、目の前の掲示板を眺めていた。
低ランクの依頼の中から、ガルドが選んだのは――《南林道沿いの獣害調査》。
依頼内容は比較的シンプル。
近隣を通る商人たちが、獣に荷物を荒らされるという苦情をギルドに寄せていた。
それを受け、道沿いを調査・排除するのが今回の任務だった。
「緊張してるか?」
声をかけてきたのは、もちろんガルド。
その横には、もう二人の人物がいた。
「はじめまして~!レナっていいますっ。よろしくね、カイルくん!」
金髪のポニーテールに、弓を背負った軽装の少女。明るく人懐っこい雰囲気の弓使い。
「……アレック。よろしく」
低く短い自己紹介をしたのは、無口そうな剣士の青年。
一見無愛想だが、装備は手入れが行き届いており、経験の深さがにじみ出ていた。
「今回の依頼は、俺が後衛にまわる。前線の動きは、お前たち三人でやってみろ」
「了解っ!」
「……問題ない」
カイルも緊張しながらうなずいた。
(初めてのチーム戦……ちゃんと、できるかな)
ガルドが与えた“初陣”は、カイルにとって大きなステップだった。
一人で剣を振るうのと違い、仲間との連携、状況判断、会話のタイミングまでが試される。
依頼先に向かう馬車の中で、レナは明るく話しかけてきた。
「ねぇねぇ、初依頼って聞いたけど緊張してる?」
「う、うん、ちょっと……」
「大丈夫だって!私も初めての時はガチガチだったけど、なんとかなるもんだよ!」
その無邪気な笑顔に、カイルは少しだけ肩の力が抜けるのを感じた。
やがて現地に到着し、三人は慎重に林道を進む。
「足跡が……この先に続いてる。獣は夜に動いたな」
アレックがつぶやく。
すると、レナが即座に指示を出した。
「前衛はアレック、カイルくんは横を警戒して!私は後ろから援護するね!」
手際の良さに驚きつつ、カイルも動く。
しばらく進むと、茂みの中から――
「来たっ!右から二体!」
牙を剥いた獣が突進してきた。
カイルは即座に木刀を抜き、体を横に捻って避けると、一体の足元を狙って一撃!
「っしゃあ!」
もう一体が背後に回るが、レナの矢が正確にその肩を射抜き、動きを止める。
すかさずアレックが斬り伏せた。
「……連携、悪くなかった」
「やったじゃん、カイルくん!」
「へ、へへっ……!」
初めての“勝利”がそこにあった。
今回のお話では、カイルが“初めてのパーティー依頼”に参加し、仲間との連携の大切さを実感しました。
剣を振るうだけではない、仲間の信頼、情報共有、状況判断――
冒険者という生き方の“深さ”を、彼は少しずつ知っていきます。
次回、第15話「ガルドの教えと、足りないもの」では、戦いの後に残された“課題”にカイルが直面します。
成長に必要なのは、勝利だけではない──そのことを描いていきます。どうぞお楽しみに!




