表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コードの向こう側 -Zero Protocol-  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/43

第11話「はじまりの街、エストラム」

カイルの旅が、ようやく「冒険者」としての第一歩を踏み出す段階に入りました。

12歳で故郷を出てからの努力が、ついにひとつの形となります。

舞台は街――エストラム。人が集い、情報が集まり、そして“闇”もまた潜む場所です。

彼にとって、この街が“居場所”となるのか、それとも新たな試練となるのか。

それは、地平線の向こうから見えてきた。

城壁に囲まれた中規模の都市――エストラム。

旅人と商人が行き交い、冒険者ギルドも置かれる、北西部では比較的賑わった拠点のひとつだ。


カイルは、乾いた喉を潤すため門前の井戸に近づき、水を一口飲む。

うまい。旅の疲れが、少しだけ癒える。


(……さて、ここからが本当の始まりだ)


荷袋を背負い直し、彼は門をくぐった。


街の中は活気に満ちていた。荷車を引く商人、物乞いに銀貨を落とす修道女、武装した冒険者たち。

剣を腰に下げたカイルに誰も驚くことはない。ここでは、それが“普通”だった。


ギルドは街の中央通りにある白い石造りの建物だった。

軒先には剣と盾のエンブレム。そして重厚な扉。


「……よし」


カイルが扉を押すと、中にはすでに何人もの冒険者が集っていた。

依頼掲示板を見ている者、受付嬢と話す者、剣を磨いている者――それぞれが、それぞれの生き方でここにいた。


「新入りかい?」


声をかけてきたのは、ギルドカウンターの奥にいた若い女性。

栗色の髪をポニーテールにまとめ、制服をぴしっと着こなしている。


「はい。カイル=スローンといいます。冒険者登録をしたくて」


「了解。私はルティア。この街の冒険者ギルドで受付をしてるわ。よろしくね」


手際よく書類を差し出しながら、彼女は微笑んだ。


「ちなみに、未成年での登録は保護者の証明か、既登録者からの推薦状が必要なんだけど……持ってる?」


「はい。これ」


カイルはガルドから預かった推薦状を差し出す。

それを読んだ瞬間、ルティアの表情が少し変わった。


「……この筆跡、まさか。『剣鬼ガルド』の……?」


「知ってるんですか?」


「ええ、元Sランクの……引退してるって聞いてたけど。あの人の推薦なら、安心ね。おめでとう、カイル。今日からあなたも立派な冒険者よ」


木製のカードと、革製のバッジが手渡された。

名前の刻まれた冒険者証。それを手にした瞬間、カイルの心が少しだけ震えた。


「初仕事、探していく?」


「ええ。……初心者向けの、何かあれば」


「あるわ。モンスター討伐じゃなくて、荷運びや巡回警備だけどね」


「構いません。それで十分です」


その答えに、ルティアはにっこりと笑った。


「いい心構えね。じゃあ、今日はこの街の警備組の“巡回補助”をお願い。明日の朝、集合場所はギルド前」


「了解です!」


「……でも、油断は禁物よ」


ルティアは声を低めた。


「この街は、穏やかに見えて――いろんな連中が集まるの。中には、若い新入りを潰して楽しむやつらもね」


「……気をつけます」


「それでも、あなたは来た。ようこそ、エストラムへ。ようこそ、“表の世界”へ」

今回は、旅を終えたカイルが“冒険者”として認められる転機の回でした。

ギルド、受付嬢ルティア、そして街の気配――すべてが彼にとっては未知で、試練の始まりです。

次回は、初仕事での緊張と失敗、そしてカイルが少しだけ成長する姿を描く予定です。

舞台が整い、登場人物たちが動き出しました。どうぞこの先もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ