表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

「井袋さん、食べる理由」

「もっとお話聞かせてください」


そう言った葵は、ノートを抱えながら目を輝かせていた。

井袋は少し驚いたように眉を上げたが、すぐに苦笑した。


「そんなに大した話じゃないですよ」


「いえ、すごく興味深いです 井袋さんの食べ方にはちゃんとした理論があるし、何より食べることを本当に大切にしてるんだなって思いました」


「まあ、そうですね せっかく食べるなら、美味しく食べたいですから」


「それにしても、これだけ食べ歩いてて太らないのも不思議です さっきのペースや食べる順番の話だけで、そんなに違いが出るものなんですか?」


「もちろん、それだけじゃないですよ」


井袋はコーヒーを飲みながら続ける。


「食べたあとの過ごし方も大事です 例えば、食後すぐに座りっぱなしにしないとか あとは、日頃の運動も多少は意識してます」


「運動?」


「そんなに大げさなものじゃないですけどね 朝少し歩くとか、階段を使うとか まあ、食べる分だけ動けば太らないっていう単純な話ですよ」


「なるほど…… でも、井袋さんってどうしてそんなに食べ歩きにこだわるんですか? ただ食べるのが好きっていうだけじゃない気がするんですけど」


その問いに、井袋は少しだけ表情を変えた。


「……昔、うちの家族がよく食べ歩きをしてたんです」


「家族?」


「ああ、父が転勤族で、あちこちに引っ越してたんですけど、行く先々で地元の美味しいものを食べるのが家族の楽しみだったんです だから、僕にとっての"美味しいもの"っていうのは、ただの食事じゃなくて、思い出とセットなんですよね」


葵はじっと井袋を見つめた。


「それで、今も全国を食べ歩いてるんですね」


「ええ 仕事柄、出張も多いですし せっかくだから、各地の味を楽しみたいなって」


「……いいですね」


「何がです?」


「そういう"食べる理由"があるの、素敵だなって思いました」


葵は微笑んだ。


「ますます取材したくなりました 井袋さん、これからも一緒に食べ歩きしてもいいですか?」


「そんなに食べられます?」


「もちろん! 私、食べるのも好きですし それに、井袋さんの食べ方をもっと知りたいんです」


井袋は少し考えてから、ゆっくりと頷いた。


「いいですよ せっかくなら、一緒に美味しいものを食べましょう」


こうして、フードライター・水瀬葵の"井袋直哉の食べ歩き取材"が本格的に始まった。


次に向かうのは、老舗の洋食屋 そこにはまた、絶品の味と新たな発見が待っている——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ