引っ越しその3
「こ、ここが新しい家みたいです」
「「おおっ!」」
昨日は新しい家の話で持ちきりだった。
もちろん俺を差し置いて。
昨日の今日で遠藤先生にとりあえず見に行きたいと言ったら許可を出してくれた。
そのせいで大分耳が痛いけど。
本当嫌になる。
「ちょっと!早く中に入るわよ!新庄が鍵もらったんでしょ?さっさとよこしなさい!」
俺はポケットからカードキーを取り出すと同時に小鳥遊がそれを奪っていく。
あの子ね多分あれですわ、猫でも泥棒猫ですわ。
外装は普通の一軒家なのだがこのご時世にまさかの一階建なんだよね。
日本って地震が多い国だから耐震に関しての技術はかなり進歩してるんだけど。
そのおかげで大体の建物が50階建くらいになっている。
理由を遠藤先生がペラペラ喋ってたけど全然覚えてない。
ロックを解除して中に入るとそこは古風溢れる部屋になっていた。
別にボロくて埃っぽい訳ではない。
「素敵ね、私と晶くんの愛の巣……」
「え、遠藤先生のお話だとこう言った昔ながらな家に住むのも勉強になるって言ってましたね」
あ、そう言えばそう言う理由だったね。
ちなみに柚木の発言はスルー。
リビングが一部屋、そして各部屋が四つと物置部屋の小さい部屋が一つ。
つまり一人一部屋はある訳だね。
「ウチここにするわ!ここならどの部屋に行くのも近いし便利そうだからね!」
「トイレも近いしね」
「余計なこと言うんじゃないわよ!」
殴られた。
「あ、晶くん……女の子にそんな事言っちゃダメですよ、まぁ確かに小鳥遊さんはトイレ長いですが……」
「ち、ちょっと!?山口さん!?」
お、珍しく狼狽えてる。
いい気味だ。
「確かに小鳥遊さんは長いわねぇ〜私はギリギリまで我慢する方だからすぐに出るんだけど」
そんな情報いらんわ。
なんだか最近羞恥心というものがなくなってきているよね?
山口は普通にあるんだけど。
この間も小鳥遊の猫パンツがソファーに転がってたし。
もうあれを見つけた瞬間に展開が読めたね。
あの時は痛かったなぁ……。
俺は自分の頭をさする。
まぁ部屋は余った所にするとしますか。
ここはやっぱ男子が我慢する所だ。
じゃないと遠藤先生も五月蝿いし。
そして全ての手続きを終えて俺たちはお世話になったマンションから一軒家に引っ越した。
これでようやく一人落ち着いて寝れる。
背中の痛みともおさらばだ。
……と、思ったのに。
「物置部屋思ったより狭くて入らないわね」
「ちょっとウチの荷物まだこんなにあるんだけど!」
「さ、最近服買ってたから思ったより量がありましたね」
という訳で荷物の少ない俺が物置部屋で本来俺の部屋になる予定の場所が物置部屋になった。




