第六十二話
まさかの100万ポイントの対価として北さんの地下行きをあげるとは。
流石にフードコート内もザワ……ザワ……って感じだね。
多くの生徒達は固唾を飲みその光景を見守っている。
スマホで動画を撮っている人もいた。
あ、俺は映らないようにして欲しい。
「だから北さんはポイントをかけなくても大丈夫だよ、どうする?逃げるかな?」
凄く安い挑発に見えるがこの状況に今まで北さんが積み上げてきた名声やプライドそれらを全て崩しかねないこの状況。
先程自ら場を盛り上げる為に敢えて俺を指名して勝負内容を決めさせるパフォーマンスまでやってのけた。
ここまで来て引き返す事なんてまず出来ない。
俺なら遠慮なく帰るけど。
てか帰りたい。
けどもうこの輪から抜け出すのは不可能に近くなってしまった。
「ええ、良いわよ……どうせ私が勝つのだし構わないわ」
「さすが東西南北のリーダーだね」
「それはどうも……流石に余裕ないわね」
その声は少し歯切れが悪かった。
すると小鳥遊が俺の耳元に近づき。
「真奈美……珍しく狼狽えてるわね……いい気味だわ!是非とも大谷くんに勝ってもらって真奈美のプライドをへし折って欲しいわね!」
「そだね〜」
「あんたはどっちが勝つと思ってるの?」
「さぁ……あんまし興味ないね」
「私は大谷くんだと思ってるわ!確かに真奈美が負けるとこ想像できないけどそれ以上に大谷くんの勝つところの方が想像しやすいもの!」
囁き声なのに凄くうるさかった。
そして敦が笑い始める。
「確かに!真奈美が負けるわけないよね!たかが100万でみんな驚き過ぎだよ、真奈美にはそれ以外の価値が余裕であるわけだし……それに想像つかないなぁ〜日菜太じゃないんだしね?」
こいつの凄いところは本当に悪気があって言ってるわけじゃないところなんだよね。
小鳥遊は俯いて何も言わなかった。
「真奈美なら余裕だよ〜これで白黒はっきりして良かったよ、この学園のトップは真奈美が相応しいからね」
「ちょっと黙ってて貰えるかしら、気が散るわ」
それは静かで冷たい声だった。
「ご、ごめんね!真奈美!それじゃ頑張って」
そんな北さんの声を初めて聞いたのか敦も狼狽えていた。
北さんからは完全に余裕の表情が見えなくなっていた。
それもそうだよね。
まさかこんな大事になるなんて。
周囲からも心配の声がちらほら。
「北さん大丈夫かな?」
「結構余裕無さそうだぜ?」
「でも俺北さんの追っかけしてるけどデュエルで負けてるとこ見た事ないぜ?」
対して相変わらず余裕の表情をみせる大谷。
何か必勝法でもあるんだろうか?
大谷と北さんの間に立つ斉藤先生が咳払いをする。
「それでは大谷くんからは100万ポイントに順位ポイントが!北くんからは地下施設での教育に順位ポイントがかけられます!……勝負内容は今月でのフードコート内における利益率の予想!最も多く利益を出している商品を当ててもらいます!ルールは私が独断で公平になるよう決めさせて貰います……電話等などの通信器具の使用は不可!ただしフードコート内にいる人間なら誰に質問しても良い……ですが店員などの学生又はアルバイトの従業員スタッフに聞くのはNGとさせて頂きます……勝った方が一年生最強と言っても過言ではないでしょう……それではデュエル開始ぃ!!」
周囲から一気に歓声が上がる。
誰もが興奮状態になっていた。
もう帰れそうにもない。
あ〜あ。
本当に始まっちゃったよ。
そう思いながら手を頭の後ろで組む。




