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第五十七話


 「嘘!えっ!敦じゃん!偶然ね!」


 俺はアイスを食べながら横目でチラリと見た。


 なんかいかにも金持ちイケメンで人生勝ち組ってやつがこちらに手を振っていた。


 「真奈美も久しぶり!元気にしてた?」


 敦と呼ばれた男は脇目も振らず北さんに近づいて行った。


 俺の事は無視ですか、ほら大谷も微妙な顔してますよ。


 実際バツが悪いしね。


 「ええ、久しぶりね……どうしてこの学園に?あなたまだ中等部でしょ?」


 「うん、うちの父さんがこの学校のお偉いさんと知り合いでね、無理言って見学させてもらったんだ、いやぁ真奈美は相変わらず輝いてるね!聞かせてもらったよ!あっという間に学年トップになって学校中の人気者!しかもデュエルは負けなし!」


 演劇でもしているのかな?ってくらい身振り手振りを使って語る。


 そんな様子を面白くなさそうに見ている小鳥遊。


 だが見ているだけで何も言わない。


 おや?珍しく猫パンツさん大人しいですね。


 あんな風に小鳥遊そっちのけで俺が会話なんかしたらもう火を吹く勢いで怒るくせに。


 敦はハッとした様子を見せて俺らにも笑顔を向ける。


 「失礼しました、僕は佐藤 敦と言います、来年この学園に入学予定の皆さんにとっては後輩ですかね、真奈美と日菜太とは親同士の関係で昔からの知り合いでして」


 へ〜。


 「そうなんだ、僕は大谷 こっちの彼は新庄 晶くん北さんや小鳥遊さんと同じで一年だよ、よろしくね」


 ペコリと頭を下げる。


 なんかニコニコしてて怖い。


 「大谷さん……聞いた事ありますよ、この学園で今一番話題の人ですからね……そんな方とお会いできて光栄です!」


 二人は握手する。


 なんか俺だけ取り残されてしまった。


 別にいいんだけど。


 俺は一歩引いたところで四人の会話を聞く事にした。


 「実はこの学園で気になってる事がいくつかありまして」


 「相変わらず知識欲旺盛なのね」


 「なんでもクローンを大量生産してるとか」


 ただの好奇心じゃ無いですか。


 「それ本当なの?ふふっ……信じられないんだけど」


 北さんがクスクスと笑う。


 「真相は分からないけど実際作ってたら面白いよね、あととある施設で条件を満たすとなんでも願いが叶うとか」


 「それ友達から聞いた事あるよ、その条件がかなり厳しいらしいしなんでも門限を破るのが前提みたいだね」


 全く会話についていけない。


 どうやら猫パンツさんもそう見たい。


 両手を太ももに挟みモジモジしていた。


 トイレにでも行きたいのかな?


 その後もなんかぺちゃくちゃ喋ってたが興味ないので頭に入ってこなかった。


 大谷が率先して会話を回してくれるし俺は居てもいなくても変わらないよね。


 俺は本当にこれ以上厄介ごとに巻き込まれたくない。


 暇なのでとりあえずテイッターを覗く。


 『新しく出来たカツ丼屋マジで美味い!サクサクの衣に半熟の卵と優しい出汁が米にあって最高!』


 『また新しく地下通路を完成させたけどこれを使う日が来るのだろうか……』


 『ようやく山口県取り返しました!』


 あれ?最後のはもしかして?


 まっいっか。


 それより帰りたい。


 俺はスマホをポケットにしまう。


 みんなは相変わらず楽しそうに会話していた。


 お腹痛いって言って帰ろうかな?


 小鳥遊に嫌がらせもできた事だし。


 と言うかこれ以上一緒にいてもお金ないんでいよいよ何も出来ない。


 小鳥遊にたかられてももう財布の中には700円しか無いし。


 よしそれを言い訳に帰ろう。


 大谷との約束は無視しよう。


 俺がそんなことを考えて話題に切り出そうとすると彼らの会話が入ってきた。


 「いやいや、日菜太が真奈美に勝てるところなんて一つもないよ!真奈美は昔からなんでもそつなくこなしてたし僕の憧れだったんだよ!」


 「えっ?」


 小鳥遊から思わず声が漏れていた。


 そりゃ本人を目の前にしてそんな事普通言わないだろ。


 けど冗談のつもりで言ってるようにも聞こえる。


 その場の笑いを取るために。


 けど受け手はそうは思ってないみたいだね。


 佐藤は全く気にせず話を続けた。


 「確かに日菜太も可愛いけど真奈美みたいに性格がね〜なんか興味がそそられないんだよね!退屈っていうかさ〜だから昔よく僕が色々教えてあげたじゃん?そしたら凄い食いついてさ〜ペットみたいで可愛かったよ〜」


 「ふうん、そう……確かに日菜太は子供っぽいところはあるわね」


 北さんは足を組み明後日の方を向く。


 うんうん、すぐ暴力振るうし子供っぽいパンツ履いてるしね。


 チラッと大谷の方を向くとゆっくりと首を横に振っていた。


 これは身内の問題で俺が首を突っ込むのはお節介だと……そう言ってるように見えた。


 いやいや大谷さんが仲裁に入れば一瞬でしょ。


 小鳥遊は俯いて何も言わない。


 あ……帰るタイミング逃した。


 このアイス食べ終わったら帰ろうと思ってたのに。


 「でしょ!?そうそう!昔の話といえばあれ覚えてる!?僕が日菜太の家で色々教えてた時に猫が見たいって言うから連れて行ったんだけどさ、急にチンピラに絡まれてあの時猫に傷が入っちゃったんだよね〜傷物は要らないな〜って思ってたら日菜太が処分してくれるって言ってさ〜」


 小鳥遊は目を大きく見開き視線を敦の方へ向けた。


 信じられないと言う顔をしていたが敦は北さんの方を向いていて全くそれに気が付いていなかった。


 この男は本気で詫びれも無くエピソードを話している。


 みんなが面白がってくれると本気で思ってるんだ。


 普通動物をそんな風に扱うかな?


 金持ちの世界は分からないけど今は貧富の差も激しいし。


 現代だとペットを飼う家も減ったみたいだしね。


 「処分ね……ウチちょっとトイレ行ってくる」


 「あ、うん!いってらっしゃい!それでさ真奈美もよく行ってたあそこ今はうちの会社が経営することになってさ〜卒業出来たら行こうよ!今度は二人っきりで!それにこのショッピングモール内にある洋服店なんかも家で展開する事が決まったんだ!欲しいものとかあったら言ってくれれば是非プレゼントさせていただくよ」


 屈託の無いいい笑顔だね。


 敦は北さんの事が好きなんだろう。


 それはもう一目瞭然なんだけど。


 だから小鳥遊は踏み台でしかなかったのだ。


 北さんに近づく為に利用しただけ。


 実際は分からないけどなんとなくそんな気がする。


 そして俺は小鳥遊の踏み台に……と言うかサウンドバックにされたと。


 俺が一番可哀想だよね。


 猫パンツさんに傷物にされましたとか冗談で言った日には場が凍りつくのが目に見えて分かる。


 よし気まずいけど……。


 「俺もちょっとトイレ」


 に行くフリして帰ります。


 俺がそう言っても佐藤は聞く耳を持っておらず北さんと話し続けていた。


 「うん、こっちは大丈夫だから行ってあげて」


 大谷が反応してくれる。


 やっぱこの人いいやつですね。


 本当にトイレに行くフリして帰るだけなんだけど。


 大体小鳥遊がどこ行ったか分かんないし。


 まぁこの流れでここを離れればなんと無く小鳥遊のとこに行ったんだと勘違いされてもおかしく無いか。


 本当にトイレ行くだけなんだけどね。


 アイス食べてちょっとお腹痛いし。

 

 あとこんなメインキャラ達に囲まれるのも嫌なんで。


 このまま三人でどっか行ってくれないかな?

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