第五十六話
映画が終わりフードコートに向かった。
恋愛もののせいかどうも共感できる部分が少なく感情移入しづらかったね。
でも他の三人は映画の話題で盛り上がってるみたいだし人気なだけあって普通の人が見れば面白いらしい。
あ、俺も普通の人だから面白いって事にしよ。
けどまぁなんか気分は悪くなかった。
終わりよければ全てよしってね。
フードコートで席を確保してとりあえず座る。
すると先陣切って大谷が話し始める。
「ご飯どうしよっか?ここなら各々が好きなものも食べれるし特に長いこと待つ事にはならなそうだけど?小鳥遊さんとか何か食べたいのある?」
「えっとウチは〜どうしよっかなぁ〜」
チラチラと俺の方を見てくる。
どうしようも何も貴方ポイントもお金もないですからね。
「ここでいいんじゃないかしら?今からお店に向かって並んで食べたら結構時間もかかってしまうのだし」
「うん、じゃあここで済ませちゃおうっか……僕はここで待ってるから先にみんな買ってきて大丈夫だよ」
本当によく出来た人間だね。
それじゃ遠慮なく適当に安いやつでも買ってこようかな。
「ちょっと来なさい」
小鳥遊にそう言われ腕を引っ張られる。
「言っておくけど奢らないからね」
「なんでよ!?ケチ!みんなが食べてる時にウチだけ何も食べてなかったら変じゃない!なんでもいいから奢りなさいよ!」
はぁ……どうせ奢る羽目になるんだろうね。
だったら少しでも安く済むように……。
兎亀うどんの並二つ注文した。
この時代になっても未だ安さを誇る兎亀うどん。
お金のない市民の味方だね。
席に着くと北さんは銅タコを二つ買っていた。
「はいこれ、こんなのでよければ食べてもらって構わないのだけれど」
「いいの?悪いね……いくらだった?」
財布を取り出す大谷。
おぉ、流石出来た人間ペア。
俺なら絶対に出さない。
たこ焼きも買ってこないね。
「いいわよ私の奢りで、貴方に仮……になるのかは分からないけど作っておいて損はないだろうし、それに……」
チラッとこちらを見る。
あ〜そゆこと。
小鳥遊は悔しそうな顔をしていた。
確かにあんなふうに見せつけられればあの二人が付き合っているって言っても不思議じゃないしね。
まぁどうでもいいんだけど。
俺は割り箸を綺麗に割ってうどんを啜る。
この店の凄いところはなんと言ってもその場で手打ちしたものをすぐに食べれるところだよね。
このツルツルとした麺は噛むとモチモチしていてかみごたえも最高。
出汁は鰹だしで優しい関西風なのだが無料でトッピング出来るこの特性七味を入れる事によってスパイスを加えることが出来る。
さらにこのシャキシャキのネギとザクザクの天かすもなんと無料。
たまに天かすにえのきとかかき揚げの具なんかもあって当たり要素も存在する。
ちなみに今回は玉ねぎが僅かに入っていた。
ありがとう兎亀うどん。
庶民の味方。
俺は満足して食べ終えた。
一方の小鳥遊は箸が苦手なのか食べるのに苦戦していた。
食器を戻し兎亀うどんの店員さんに軽く一礼して戻ろうとすると小鳥遊とすれ違う。
「ウチアイスも食べたいんだけど」
一体この人は何を言ってるのだろう?
俺は無視して自分の席に向かう。
「あ、ちょっと!食器戻すから待ちなさい!……ご馳走様美味しかったわ!……こら!新庄!あっちに美味しそうなスイーツ店があったから行くわよ!さっさと来なさい!」
またこのいつものごり押しパターンですか。
アイスを買って残り残金は700円ちょいになった。
これで現金はほぼないに等しくなってしまった。
大体なんでうどんよりアイスの方が高いんだよ。
「うん!冷たくて美味しいわね!日本の牛乳ってなんでこんなに濃厚なの?しかもあんまりしつこさもないし!不思議ね!」
美味しそうに小鳥遊はツイストアイスを舌でチロチロと舐めていた。
やっぱネコじゃん。
はぁ……憂鬱だ。
関わりたくないのに向こうからどんどん攻められて。
もっと浅い関係を保って平和に暮らしたいのに。
けどまぁ……アイスは美味しいね。
「あれ?日菜太?日菜太じゃないか!久しぶり!」
「嘘!えっ!敦じゃん!偶然ね!」
なんかまためんどくさそうな展開に……。




