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第四十六話


 この間の飯盒炊爨もあってか料理は円滑に進みあっという間に完成目前になった。


 エプロン姿の柚木は料理中でも気兼ねなく声をかけてくれて山口とはまた別の良さがあった。


 だけど俺は柚木が無理してるんじゃないかと思ってしまう。


 テーブルに配膳し終え席に着く。


 「それじゃいただきますしよっか」


 俺はコクリと頷く。


 このままじゃ美味しくカレーを食べれなさそうだし。


 「もしこの間の件で恩を感じてるなら気にしなくてもいいのに」


 俺は声を低くしてそう言う。


 「もちろんそれもあるけど……だって私がやろうとした事分かる?最悪の場合は……」


 柚木は俯き口に運ぼうとしていたスプーンを下ろす。

 

 言おうとしてる事は分かる。


 けど俺としては騒動を小さくしただけの事。


 変なフラグが立たないようにしただけ。


 「まぁね……でも実際は何も無かった爆弾だって爆発しなきゃ良いんだし鉄砲だって打たなきゃいいんだよ」


 俺が適当にそう言うと柚木は口元に手を当てクスッと笑う。


 「何それ……変な例えだね、全然分かりづらい……適当だし……でも私は好き」


 「そっか……」


 俺は柚木のカレーを口に運ぶ。


 味は確かに美味しいのだがいつも食べ慣れているあの味とは違う。


 口が妙に寂しかった。


 「美味しく無かった?」


 「いや、美味しいんだけどさ……」


 心のつっかえが取れない。


 拭いても拭いても落ちない汚れみたいな。


 「よかったら話して……あんま聞きたくないかもだけど……」


 「……うん、実はーー」


 俺は一通り経緯を話した。


 山口の様子が変わったあの日の出来事全てを。


 どれもピンときてない俺にとってはくだらないただの日常的な話だと思ってる。


 でも柚木は真剣に真面目に聞いてくれていた。


 やっぱ女の子の事は女の子に聞くってね。


 「うん……大体分かった……答えも対処法も全部」


 さすが女子、俺にはさっぱりだから。


 「それで俺はどうすれば?」


 俺がそう尋ねると柚木は首を横に振る。


 「私は答えは分かるけど教えられない、むしろ邪魔しか出来ない」


 ん?どゆこと?


 柚木は目を閉じる。


 「あのね?女の子って凄い考え込んじゃうの……私もそうだから彼女の気持ちがよく分かる、確かに晶くんからしたら厄介ごとに巻き込まれないよう配慮したんだと思う」


 そして柚木はゆっくりと目を開けてこちらを見る。


 「でも分かってあげて欲しい……何も確信的な事は言わないけど……多分答えは分からなくても問題はすぐに解決すると思う」


 頭が混乱してきた。


 ただ柚木のまっすぐな瞳に嘘はないんだと思う。


 「ん〜とりあえず問題は解消されるって事だよね?」


 柚木はため息を吐く。


 なんでそんな嫌な顔するんですかね?


 「うん、明日会ってゆっくり話せばいいと思うよ……私は邪魔するけどね」


 どゆこと?

 

 本当にちんぷんかんぷんだった。


 「私まだ彼女に謝れてないけどもう一つ謝る理由も出来ちゃったし……ほんと晶くん責任とってよね」


 「いや、俺関係なくない?」


 机が強く叩きつけられる。


 あれ?急にどうしたんですかね?


 柚木さんは本気で殺しにくるから怖い。


 「私ね?あの時晶くんが皆んなに好かれるのは疲れるから一人だけ理解してくれる人が居ればいいって言ってくれたじゃない?」


 「そ、そんな事言ったっけ?」


 正直脊髄で会話してるから自分の発言とか全く覚えてない。  


 「言ってくれたじゃない……思い出させてあげようか?」


 「あー、はいはい思い出した〜のでその振り上げたスプーンで何するのかはわかりませんが降ろしてもらっても?」


 「本当に?」


 俺は声速で首を縦に振る。


 「あ〜ん、してあげよっか?」


 「いや、いいや」


 その瞬間柚木は豹変する。


 「あは!あはは!私!取り繕うのはやめたの!本当は辛いんだよ?晶くん?」


 あ〜。


 なるほど俺を殺してもしょうがないって言う理解者が一人いれば柚木はそれでいいって事ですね。


 それを認めたのは俺だから責任取れと。


 俺は全力で部屋から飛び出した。

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