第三話
体育館を離れエスカレーターで5分ほど移動し一年の教室に着いた。
便利でいいね〜。
俺はのんびりと色々な教室を見て回った。
もちろんかなりの距離はあるがエスカレーターでスイスイ進んでくれる。
どのクラスも盛り上がってるね……てか教室広すぎない?
クラス分けだが頭の良い順にAクラス……とかでないらしい。
比較的平等になるようクラス分けされているように見えた。
召喚戦争なんて事はなさそうだ。
教室の交換もなさそうだね。
頭の後ろで腕を組む。
共通して言えるのは殆どの生徒が浮き足立っているというか。
逆に落ち着いてる人は何を考えているのやら。
ただまぁ大半はこの学校にいよいよ入学出来たと言う喜びを分かち合ってるように見える。
……まぁそりゃそうだよね。
それぞれ色んな人生を歩んできて考え方や感じ方も違うわけだから。
俺はのんびり平和に暮らしつつ彼らの人生に極力関わらないようにしながら美味しいとこはしっかりもらっていきたいわけで。
アニメでも絶対こいつなんもしてないのに美味しい思いしてるなぁって奴いるし。
そんなポジションにつければ最高だ。
自分の教室に着いた。
既に取り巻きを作ってる人物が何人かいてクラスカーストも少しづつ出来上がっている感じがした。
えっと……。
俺は一番後ろの窓際席以外ならどこでも良かったのだが、廊下寄りの一番後ろから2番目だった。
主人公ポジションとは真逆の位置か……完璧だね。
先程体育館で用意されていた椅子と同じものが使われていた。
よっこらせっと。
うん、相変わらず座り心地の良い椅子だ。
卒業した暁には貰って帰ろう。
頬杖をつきあたりを見渡す。
さてさてこのクラスよカーストを見ていきますか。
俺は一番下の人間数人と仲良くなれればいいわけだし。
気が楽だね。
一際目立っていた女子が一人。
いかにもリーダーシップを張りそうで誰に対しても愛想が良さそうな女子。
ああいうのは裏があると相場が決まっているものだよね。
もちろん関わりたくないが、いかんせん顔が良すぎる。
黒髪のショートヘアーに長いまつ毛、顔も小さく手足も長い。
例えるなら大空バルスとか蚊の仮のルカちゃんみたいな見た目をしている。
正直まじで結婚して欲しいがそれは妄想だけで抑えておこう。
あんな主役級の女の子と付き合えるわけがないしね。
俺はもっと地味で実は脱いだら凄いみたいな子が理想的だ。
メガネ外したら美少女でした的な?
……というかあの子以外女子のアベレージが低すぎる。
う〜んあまり他人の顔をとやかく言うのは失礼だけど……。
そ、そうか!
俺はとんでもない事実に気がついてしまった!
あの子が目立ってるんじゃなくて……。
あの子以外が霞んでいるんだ!
顔もそうだけどなんて言うのかオーラとか気品さとか。
実際よく喋っているのはその子ではなく隣にいた顔と声のデカい女だった。
おかしい、正門ではあんなにキラキラした女子高生がたくさん居たはずなのに。
あの子達は一体何処に行ってしまったのだろう。
そう言えばさっき学校回ってる時に気づいたけど……。
やっぱ教室によって偏りあるかも。
男が多い教室もあったし。
……それにしてもあのデカい女。
肩幅が広く男顔負けの図体してる。
顔も大きくエラも張ってる。
おまけに気も強そうだ。
逆らうものは皆殺しだろうね。
ま、俺には関係なさそうな人達だけど。
隣の席の人は二人とも俺の仲間で特に目立つ感じじゃないね。
二人とも特に誰かと話す訳でもなく俯いて一人で何かしているみたい。
クラスに興味がないのかそれともまだ様子見しているのか……まぁ初日からアグレッシブに動くなんて目立つ行動モブからしたらナンセンスだからね。
そして注目の窓際後方の主人公席はまだ来てないと。
確実に彼が座る場所には注意して必ず巻き込まれないようにしないと。
いきなり召喚戦争始めるとか言ったらぶっ飛ばしてやろう。
前の扉が開き教壇の上に一人の男が立つ。
「え〜皆さんの担任となりました山本 一郎と申します、歳はかなりとってますがまだまだ若者には負けませんよ」
そう言って山本は力瘤を作って見せた。
確かにガタイは良く中肉中背で顔の皺と白髪さえなければ若く見える。
周囲からはパチ……パチ……とまばらに拍手の音が聞こえた。
もちろん俺は無視。興味ない。
頬杖をついたままなんとなく教壇側を向いてる。
山本はニヤリと笑い白い歯を見せる。
あ〜この人絶対若い頃モテてたって言いそう。
「それでは皆さんに初めの支給品をお渡ししたいと思います、机の左下にあるスイッチを押せば出てくるのでそちらを押してください」
言われた通りにスマホのホームボタンのような窪みを押すと机の中から梱包された状態で色々出てきた。
「これって、最新のスマホや一生使えるタッチペン、それにカプセル式の水筒や探し物を見つけてくれるレーダーまで!」
クラスからは感銘の声が上がる。
ん?まさかそれを使って7つボールを集めろと?
俺も袋を開け中から全てを取り出しそれらを触ってみる。
このタッチペンは最近良くCMで見るやつだ。
なんでも微粒子を吸い込みそれらを固めて文字を浮かび上がらせるとかなんとか……。
どうでもいいか。
いちいち仕組みなんて気にならないよね。
ラベルを剥がし色々触ってみたがどれも俺に使いこなせるとは思えない。
説明書とか読むのめんどいしね。
「え〜中を確認しましたらまずはこのスマホを触ってください、もちろんただのスマホとしても利用できますが中には見たことのないアプリが幾つも入ってるでしょう?これらは学校側が管理をしている物です」
電源を入れスワイプすると確かに見慣れないアプリが登録されている。
と言うか明らかに俺の中古スマホより物がいい。
そりゃそうか型落ち直前とは比べ物にならないよな。
これを全生徒に支給するとかどんだけ財力あるんですかね〜。
ま、実際日本一の学校だからね。
ただちょっと重いかも。て言っても気持ち程度重いくらいだからそんな気になる人は少なさそう。
「このBANKと、書かれたアプリは名前の通り自分のポイント……つまりは残高や振込みなどの履歴を確認する事が出来ます、続いてresult……これはテストの結果や現在の順位を見る事ができます、随時更新されているのでこまめにチェックする事をオススメします、他にもーーーー」
なるほど〜さっぱり分からん。
けどぐだぐだ説明きくのも眠くなるし、とりあえず触ってみるか。
これって今の残高とか確認出来るのだろうか?
俺は興味本位でBANKをタップし残高照会を開く。
そこには空白の中にポツンと立っている文字が目に映った。
瞬きをパチパチと二回する。
『0』
俺は目を擦り再びスマホに視線を送る。
「……ぜろ?」
いや……0ではなくoの可能性もいや丸の可能性も。
oってなんのイニシャルだ?
終わり?
お終い?
それならfじゃないか?
いやいや、そうじゃなくて……終わっちゃダメでしょ。
あそうか、まだ入金前ということか。
ちょっと焦ったけど色々説明を受けた後に振り込まれるってことだ。
て事は順位の方もまだ確認出来ないってことだよな。
俺はやや震えた指先でresultをタップする。
『499/500』
えっとなになに[499/500]ってほぼ最下位やないか〜い。
俺はキョロキョロと周囲を見る。
みんなスマホを触ってる。
……え?まじで?
なに?0って?
俺は今日からタワマンで本能のままに好きなだけお金を使って生活するんじゃないの?
そこそこの順位でそこそこの彼女とそこそこの青春を送るんじゃないの?
おかしい……。
俺はスマホを机に置き前髪を弄る。
「……とまぁ色々説明したが質問などある人は居るかな?」
「あの〜俺のポイント0なんですけど〜」
俺は本能に身を任せてその場を立ち上がった。
「0って……そりゃまぁ……なんと言うか……次は頑張りなさい」
ウソ……だろ?
流石にポイント0はやり過ぎでしょ?
それに周りからもすっげえ見られてるし、めっちゃ笑われてるんですけど。
「ぷっ!おいおい0だってよ、お前いくつだった?」
「俺は6万ポイント、順位は200位だった」
「まじかよ結構頭いいんだな、俺は347位で3万ポイントだ、1位とかどんだけ貰えるんだろうな?」
「ねーねー私も結構貰えてるんですけど!みてみて!」
わざわざ説明口調でありがとうモブキャラたち。
でも俺が今求めているのはそうじゃない。
「それじゃ明日からの授業頑張るように、それからアプリとか自由に入れてもいいけどテイッターとかはこの学園内でしか共有されていないのでーー」
クラスが盛り上がる中……俺はただ立ち尽くしていた。
ん?
ふと空席が視界に入ってきた。
場所が一番後ろの窓際という主人公席だったせいかちょっとだけ気になったけど。
入学式の日に休み?遅れてるだけかと思ったけど……。
まぁ……この際そんなんど〜でもよかった。
俺はこんな展開望んでない。




