第二十八話
なんだか最近西くんの様子がおかしい。
南に無理やり東西南北のメンバーに入れさせられてからしばらく経って色々あったけどなんだかんだ上手くやっている。
基本的に害がなければどうでもいいと感じてしまう私だがこの3人は違うのよね。
口では言えないけど南には感謝している。
アホだけど人と話すのは上手いし私に忠実だし。
けど今はそんな事より西くん。
彼はあの対抗戦からというものどこか上の空のようだった。
「そ・れ・は北姉!恋だよ!」
「は、はぁ?」
またアホが何か言ってる。
南は顔も良くてスタイルもいいんだけど脳みそが空っぽだから発言の意図が読めないことが多いのよね。
まぁ人間何処かしら欠点はあるものだけれど。
それにあの西くんが恋をするなんてとても思えない。
「だからね〜西くんは臆病なんだよ〜だからきっと恋も奥手でなかなか告白が出来ずに悶々としてるってこと〜」
「ちょっと貴方ね……あんま憶測で物を言うもんじゃ……」
「ううん!あたしには分かる!男の恋ってきっと女の子より複雑なんだよ!いいなぁ〜あたしも恋したいなぁ〜」
両手を合わせ目をキラキラさせている。
はぁ……臆病……ね。
南はそう言うけど西くんが臆病だとはとても思えない。
東も実は優しくて臆病とか言ってるけどあの堅い声色で優しいなんてことはあり得ないでしょ。
けど南の言うことは大体当たってる。
なんでなのかしらね。
本当に他人の事はよく分からない。
理解するのは難しいわね。
「まぁ南の言ってる事が事実だとして、一体誰に恋してるのよ?」
「そ・れ・は……あたしも知りませ〜ん」
手でバッテンを作る南。
「……ちょっと叩いていいかしら?」
いや〜んと言って私の身体に抱きついてくる。
「ちょ!何処触ってんの!」
とりあえずデコピンした。
反省しなさい。
「いったーい!……でもあたしの予想だと多分あの子じゃないかな?」
「あの子?一体誰?」
私には見当もつかない。
「ほら、対抗戦でバドミントンの時に試合中声かけてきた子、話の内容は知らないけどあの時にキュンってしたんじゃない?ほら北姉も私にキュン……て!」
顔を近づけてきたので押し返す。
やっぱこの子アホだわ。
「お待たせしました、北姉さん、南……東はまだ来てないみたいですね」
「ええ、この学園のホームルームって教室によってだいぶ変わるから」
「それもそうですね、けど東が遅れるなんて珍しいですね」
「ええ、そうね……それとも何かあったのかしら?」
一応スマホを開きメールが届いてないか確認をする。
「ん〜あたし的には何かあったような気もするけど……あっ!そういえば西くんって今恋とかしてるの?」
ちょ!またいきなりこの子は……。
「は!?え!?……いや、いきなりなんですか!?こ、恋なんて僕がする訳ないでしょ!?」
まさかの反応ね。
これはさすがの私でも分かる。
やっぱそうなのね。
あの冷静沈着で他人に興味の無さそうな西くんが本当に恋をしているなんて。
南は西くんのほっぺをツンツンしてからかっている。
ってことは……。
東も本当は臆病なのかしら?
だとしたら少し気になる事があるわね。
「ああ!!あの子居るじゃん!ほら!西くんの好きな人!」
指差す先には落ち込んでいる男子生徒と女の子が居た。
あんな子だったかしら?私は全く覚えていないのだけれど。
「ちょ!あ!……ま、待って下さい!南!」
「声かけてくる!ついでに東くんの事も聞いとくよー」
全力疾走で彼らの方へ向かっていった。
西くんは追いつけない事を分かっているので顔を真っ赤にして立ち尽くしていた。
「私たちも行きましょう、どうせ東を探すのだから」
西くんはメガネをクイっとする。
「北姉さん、僕は本当に恋なんてしてないですから!」
「はいはい……さっさと行くわよ……ふふっ」
私はそう言いつつ思わず笑ってしまった。
 




