第二十六話
お気に入りのリボンを髪に結いてブレザーを腰に巻く。
このスタイルは古いって言われがちだけどあたしは結構気に入ってる。
スキップしながら改札を抜けて大きい校舎を見上げる。
あたしの名前は南 朱莉この育成なんとか学校に通う高校生。
学校名は忘れた。
テヘペロ。
説明会の時も移動で疲れたせいかほとんど記憶ない。
もしかしたら寝てたかも。
入学してすぐにあたしは北姉に出会った。
あの時はいつもより浮かれてた。
新しい生活に出逢いにワクワクしてたし。
彼女は席が隣であたしはすぐに声をかけた。
でも返事はそっけない。
やな感じ。
全員と仲良くなろうといろんな人に話かけた。
そのおかげかクラスでは一番人気があったし愛想がいいって言われた。
やっぱ周りから褒められるとテンション上がるよねー。
そんなバイアスぶち上げの中でも彼女はそっけない対応。
なんかちょっとだけ彼女の事がムカついた。
人気者のあたしなんかには目もくれずちょっと顔が可愛くてスタイル良くて頭も良くて。
男子も女子もあたしと楽しく話してくれる。
目を見て会話してるって感じ?
でも彼女はあたしを見ていない。
それが初めての経験で傷ついた。
むっ!許せない!
意地悪してやろうと思った。
教科書のデータが入っているタブレットを隠して隣のあたしが見せてやろうと。
そうすればあたしとも仲良くしてくれるはず。
いししっ!
これなら目を合わせてくれるはず。
やっぱあたしって天才と思いながら計画を実行した。
授業の時間になった。
あたしは北さんのことが気になってそわそわしていた。
まさか教科書の内容全部暗記してるので問題ないでーす、なんて落ちはないよね?
そらこい!すぐこい!
「ごめんなさい、教科書を見せてもらってもいいかしら?」
きた!
北さんからきたってね!
思わず口元がにやけてしまう。
「なに〜?入学早々忘れちゃったの?しょうがないなぁ〜」
彼女は何も言わずニコッとあたしに笑顔を向けた。
この時は気づいてなかったけど明らかに北姉は机の中を確認する前に声をかけてきていた。
それにまだ視線も合っていない。
そんな事気にもしてなかった。
けどその日は嬉しくて友達とカラオケに行きめっちゃ盛り上がった。
「高校生サイコー!女子高生サイコー!」
「「……イエーイ」」
あれ?みんな疲れちゃったのかな?
次の日に同じ教科の授業があったんだけどあたしはその時彼女にタブレットを戻す事を忘れていたのを思い出した。
……しまった!あたしのバカ!
机の中の収納ボックスを確認する。
……あれ!?ない!?
確かにこの中に隠しておいたはず。
収納ボックスはパスワード制だから本人しか基本的には開けられない。
誰にも教えてないのに。
誰かに盗まれた!?
ハッと我にかえり彼女の方を向く。
北さんはタブレット持っていて普通に授業を受けていた。
あれ?どうして?
予備のタブレット?
そんなのがあるなら昨日のうちに借りればいいはず。
新しく貰ったとか?
じゃああたしが盗んだタブレットは何処に?
つまりあのタブレットは本人の?
不思議に思ってあたしは思わず聞いてしまった。
彼女はあたしがタブレットを隠したことを知っていたらしい。
そんなことはどうでも良くて。
北さんは貴方が満足したのならそれでいいと言ってくれた。
なんで怒らないのか理解できない。
意地悪されたのに。
あたしが根は酷いやつだって言いふらす事も出来るのに。
でも彼女は誰にもその事を言わない。
「あたし……本当に馬鹿だ」
あたしは自分の器の狭さを思い知らされ彼女の事を北姉と呼ぶ事にした。
もっとあたしのことを見て欲しい。
北姉と仲良くなりたい。
そんな思いが強くなった。
次の日から顔を覗き込んで無理やり目を合わせるよう声をかけた。
何日目に合うようになったのかは覚えてないけど少なくとも今の北姉はあたしのことを見てくれている。
「ねぇねぇ〜北姉〜あたし達って苗字似てるよね〜」
「そうかしら?」
「だって北と南だよ?あと東と西が居れば東西南北が出来るじゃん!」
北姉は額に手を当てやれやれと言う。
「ちょっと〜!なにそれ〜!やな感じなんですけどー!」
「この際はっきり言うけどなんで貴方は私に付き纏うの?私が人と交流を避けていることに気がつかないの?」
この時だったのかな?初めて目があったのは。
「うん!知ってる……北姉ようやく目があったね!」
「ちょっと貴方……ふふっ……どうゆう事よ?私真面目な話してるのに……」
「そんな事よりあと二人探しに行こうよ!あとケーキ食べに行こ?この敷地内に美味しいところあってさ〜」
そんな事を言ってあたしは適当に苗字に西と東がついてる人を連れてきて北姉を困らせた。
だけど北姉は戸惑いながらも東西南北というグループを作りその噂はすぐに学校中に広まった。
東は無口なやつだけど実はすっごく優しいやつ。
たまに鳥とかに餌あげてて正直ちょっとキモい。
この間は誰も見てないところでゴミ拾いとかしてた。
見た目とのギャップがすごい。
西はクールで勉強出来るけどすっごくお調子者。
たまに自分の凄いところをデータにまとめたりとかしてて正直ひく。
北姉は……まだ本当の意味で仲良くなれてはいない気がする。
いつか信頼されるようになりたい……。
そんな個性的なメンバーであたし達は楽しい学校生活を送ってる。
三年経って卒業しても友達でいられたらいいのに……なんて思い始めてる。
今度の対抗戦も頑張らないと。
 




