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第二十三話


 無事に対抗戦も終わり一息つけると思っていた私。


 何故か私の部屋で打ち上げする事になりました。


 なんでぇ?


 理解できない私を差し置いてテンションの高い新庄くん。


 特に散らかってもない部屋をとりあえず掃除だけはしましたが……。


 下着とかは奥深くに隠しました。

 

 私は見られても恥ずかしくない下着とか持ってません!


 買いに行くの恥ずかしいし?


 私みたいなのが履いてると調子に乗ってるって思われそうだし?


 あ……見られる相手が居ませんでした。


 はぁ……。


 新庄くんは気楽で羨ましいです。


 ……けど。


 彼の嬉しそうな横顔を見てちょっとだけかっこいいなと思ってしまいました。


 私が芋女って事もありますけど。


 一生懸命バドミントンしている姿が。


 汗を流して必死に動いている姿が。


 私にとって魅力的です。


 誰も彼の魅力にはまだ気がついてない。


 私だけが……知ってる。


 この事に高揚を隠せません。


 だって……私だけが……知ってるんだから。


 あの時……一回戦が終わった後に新庄くんが伝えてくれた一言。


 私は誰の役にも立ってなくて……みんなの中では背景にすぎなくて。


 誰の目にも止まることのない……そんな人間だと思ってた。


 けど彼のかけてくれた一言はどんな偉人の台詞より私にとっては深く刺さった。


 深く考えすぎちゃうのは私の悪い癖だ。


 だから今は少しでも楽に生きられる方法を見つけようと思います。


 たった一人の彼を支えながら。


 すると新庄くんは私の名前を呼びじっと見つめてきた。


 眠そうな目元。


 私は誰かと目を合わせるのが得意じゃありません。


 視線を泳がせても新庄くんはゆっくりと近づいてくる。


 な、なに!?


 なんなの!?今日の新庄はどうしちゃったの!?


 バドミントンの時もそうだったけどなんか今日変だよ!?


 戸惑う私に新庄くんはゆっくりと口を開く。


 「ご飯まだ?」


 ……やっぱいつもの新庄だった。


 さっきまでの気持ちを返して欲しい。


 私は「はいはい」とため息混じりに返事をした。


 人付き合いの苦手な私だが新庄くんとは普通に話せるようになってる気がする。


 別に恋とかではないんだと思うんですけど……自分でも良くわかりません。


 デリカシー無いし少なくとも……多分新庄くんは私を異性としては見てくれて居ない気がする。


 この間も私の下着姿見たのに全く慌てた様子もなかったし……。


 私だけ騒いでなんか馬鹿みたい。


 私は冷蔵庫を開けて鶏肉と卵を取り出す。


 とりあえずメニューは唐揚げにするとして……打ち上げだからちょっと豪華にした方がいいよね?あと……。


 頭の中では考えていても何故か彼を目で追ってしまう。


 私は料理をしつつチラチラと新庄くんを見ていた。


 鼻歌を歌ってスマホをいじっていた。


 第一私みたいに芋くさい女が恋愛なんて大それた事出来るわけないし。


 友達だって彼しかいなくて……。


 鍋に油を浸し火をかける。


 今回の対抗戦……本当は勝てたんだと思う。


 ペアが私以外なら誰でも。


 そもそも少しでも運動が出来る人なら誰でもよかったんだ。


 別に私である必要はない。


 そのあと西くんが壊れて私たちにチャンスが出来たのに……。


 それも私のせいで無駄にしてしまった。


 どうしてあんな事言ったのか分からない。


 他人を説教するほど私はできた人間ではないのに。


 でもあのグループが散ってしまうのが凄い嫌だった。


 自分で育てた花じゃなくても枯れたら悲しくなる。


 誰かを気にするような人間じゃなかったのに……。


 心に余裕が出来たのかな?


 だから他人に優しく出来る。


 それって私が救ってもらったから?


 ……分からない。


 菜箸を鍋に入れ気泡が出て来るのを確認すると中に衣と卵をつけた鶏肉を投入する。


 パチパチといった音が部屋を反響させる。


 あの時新庄くんは私を責めてきたりはしなかったけど本心かどうかは分からない。


 でもやっぱり彼は……。


 優しい。


 え?


 なに!?なんなの!?


 今日の私はどうしちゃったの!?


 発情期なの!?


 そりゃちょっとは彼氏の一人くらい欲しいとは思うけど……。


 なんか変なの!


 私もおかしい!


 メスになってる!


 動揺からか卵を落としてしまう。


 床に落ちた卵はぐちゃぐちゃになってる。


 もう食べれる状態じゃない。


 ううん……この気持ちはもう捨てよう。


 私が告白すればこの関係は終わってしまう。


 それに告白なんて絶対無理。


 「山口〜まだ〜?お腹空いた〜」


 ……でも新庄くんはもうちょっと私を女の子として見てくれてもいいのに。


 私は彼にちょっとだけ意地悪をしようと思います。


 戸棚からワカメの袋を取り出す。


 [弱いワカメお得用]


 一旦これだけ渡して目の前で私が唐揚げを食べたらどんな反応するのかな?


 想像したらちょっとだけ面白いです。


 このまま三年間楽しく過ごせたらいいのにな。

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