第八十六話
俺たちは山吹先輩と白衣の先輩を追うような形で走っていた。
なんかアジトだか地下だかを目指すらしい。
人気が全くないいつもの道は少し気味が悪かった。
どんな日でも大体数人くらいは人影があるのに。
けどまぁ今は先輩達について行くしかないよね。
この後の展開なんて大体読めてる。
どうせ俺が巻き込まれて嫌な思いするんだよね。
目立ちたくないのに目立つ羽目になったり。
クラスから嫌われ者になったり。
有り金全部無くなったり。
いっそ超大事な場面で逃げよっかな。
この計画を立てた黒幕といよいよご対面って時とか。
みんなで力を合わせて戦おうって時とか。
そう言うのは主人公達の役目ですから。
モブはモブらしく大人しくしてますよ。
そんな事を考えていると先輩達の会話が聞こえて来る。
「清水兄弟は確実に捕まったわね〜それにあの柔道着を着た一年生は結構有名人よね〜」
「ええ、一年生の情報は結構落とせてるからその辺は把握してるわ……」
「二人が心配なの〜?あの二人なら大丈夫よ〜」
「ええ……そうね」
白衣の先輩がやたら語尾を伸ばすのも気になるが山口が俺らについて来るので精一杯なのにも気がついた。
俺は足を遅め山口の隣に着く。
「大丈夫?」
山口はかなり息を切らしていた。
「ダメかもです……私を置いて先に行ってください」
凄いいいセリフなのに凄くカッコ悪い。
「きつそう?」
「対抗戦の時もそうでしたが私は運動がからっきしダメなんです、皆さんの足を引っ張るのも嫌なので」
「はいよ」
「あれ?凄いあっさりです……ここは一緒に残ってくれるんじゃ……」
俺はややスピードを上げる。
山口が何かボソボソ言ってたけどまぁいいっか。
そして先輩達の隣に着いて。
「あの〜山口きつそうなんで俺と山口は後から行きます」
俺がそう言うと様子を伺うように二人とも後ろを向く。
山口が一番後ろでギリギリ着いてきてる。
その手前に何かギャーギャー言い争いながら着いてきてる小鳥遊と柚木。
この二人はめっちゃスタミナに余裕ありそう。
「そうね……一番後ろの彼女は限界っぽいわね、目的地までのルートを送っておくからついたらデータは消す事、そして必ず二人で来なさい」
「ういー」
足を止めて山口が来るまで待つ。
四人の後ろ姿はみるみる小さくなっていく。
山口の姿はいつまで経っても近づいてこない。
これならいっそこのまま山吹先輩から離れる事が出来るんじゃ?
モブキャラらしくあっさり捕まって大人しく出来るんじゃ?
ラッキー。
ようやく山口の声が聞き取れる範囲まで近づいてきた。
「ま、待っててくれたんですね……やっぱ晶くんは優しいです」
……。
「うん……だって俺は山口のペットだしね」
「なんで目が合わないんですか」
「……周囲を警戒してるだけだよ」
山吹先輩と離れる理由が出来てラッキーなんて思ってないよ。
ジッとこちらを見て来る。
とてもじゃないけど目を合わせられない。
心を見透かしてきそうだよね。
「なんかこうして二人っきりになるの久しぶりじゃないですか?確か体調を崩した時以来です」
「そうだっけ?……まぁ基本四人で行動してるからね」
「はい……晶くんは私のことどう思います?会った時に比べて変わったと思いますか?」
う〜ん、胸以外は変わったよね。
胸以外は。
もちろんそんな事言えないからね。
「変わったんじゃない?」
「嬉しいです……でも実は外見だけじゃなくて考え方も変わってきてるんです。前みたいに周りに合わせようとか自分の意見は極力抑えようとか……余計な事は言わないようにしようとか……」
ふ〜ん。
なんか急に真面目な展開になってきたね。
こう言うの苦手。
「だから初めて晶くんに会った時決めてたことが一つあったんです……この気持ちは隠そうと、露呈してしまったら今の関係が終わってしまうと分かっているからです」
へー。
「それは困るね」
驚いた顔をする山口。
「こ、困るんですか?」
そりゃ困るよね。
「だって俺のお世話してもらわないと」
「やっぱこの関係は早めに終わらせるべきですね」
プンプンしてしまった。
やっぱ女心って複雑だよね。
「……晶くんはそうやって茶化しますけど私にとっては大事な事なんです。だからいずれ答えは出します……多分他の二人より私の方が劣ってるのは間違いないので早めに答えを出して諦めようかなと……」
「無理なの前提なんだ」
山口の表情は悔しそうだった。
それと同時に諦めもついているようだった。
「だって無理ですよ……私に勝ち目はありません。と言うか本人にその気がなさそうなのが一番ムカつきます。手の一つくらい出してきてもおかしくないのに。なんでなんですかね?」
まるで俺に答えを聞くようにグイグイ近づいて来る。
「さぁ……それは本人に聞かないと」
「……そうですね、いずれ聞きます……今はこの関係をもうちょっとだけ楽しみたいですし」
一体なんの話をしてるのやら。
ただ俺は鈍感系主人公と違ってある程度察しもつく。
関係を終わらせる。
それってつまり……。
そろそろ寄生するのをやめろって事だよね。
山口だって女の子だし一人の空間も欲しいはず。
確かに負担をかけすぎてるもんね。
「山口……あのさ」
「き、急に真剣な顔でどうしたんですか!?い、いきなり肩を掴まないでください!まだ心の準備が……」
「これからは風呂掃除と洗濯物畳むの積極的にやるから」
「……それは助かりますけど晶くんは察しが悪すぎます」
え?そうかな?
確かに女心には疎いかもね。
「どっと疲れたので休憩させてください10分後に後を追いましょう」
「おけ」
なんだか俺も妙に疲れた気がする。
ストック無くなったので更新止まります。
現在別の作品を執筆していますので暇な方はそちらを見ていただけたら嬉しいです。




