第七十七話
白いベットに微かに香る薬品の匂い。
俺は近くにあったベットで横になる。
ふかふかで最高だね。
山吹先輩も隣のベットに腰をかける。
その姿もすごく絵になる。
かっこいいね。
腕を組み下を向いてる。
何か考え事でもしてるのかな?
「何か質問ある?貴方は聞きたくないかもしれないけど」
特にないけど暇だし……。
「あ、そういえば何で二対一でデュエル出来たんですか?」
「本来は一人側が不利になるから成立しないのよ、けどあれは違うみたい。どんな条件でもデュエルを了承してくれるみたいね」
なるほど。
相手がオッケーしてくれれば可能って事だね。
本来なら不利になるから絶対ないけど。
「他に質問ある?」
山吹先輩は薄い透明な湿布を両腕に貼る。
あれは結構前に発売してた貼れば一週間以上持続する冷えピタみたいなものだね。
肌荒れとかもないし何より薄くてパッとみじゃ分からないし腕を動かす分にも違和感を感じない。
俺も良く小鳥遊に殴られた時山口に貼ってもらってる。
「山吹先輩って何でこんな事してるんですか?」
湿布のフィルムを剥がす音が室内に響く。
「こんな事って?」
「その組織に入った理由的な?ことです」
湿布を貼り終えた山吹先輩は再びベットに腰を下ろす。
「そうね……入ったというか私が立ち上げたんだけど」
へ〜。
恥ずかしいのかツインテールの片方を指先でクルクル巻いていた。
何それ可愛い。
さっき回し蹴りしてた人とは思えない。
「初めは私一人で仕事をしていたわ、仲間は欲しかったけど他人に任せたくなかったし信用も信頼も出来ない。けどこの学園で生活を続けていたら数人……ほんの数人だけ心を許せる人ができたわ」
これまた長くなりそうな予感。
やっぱ聞きたくないです。
なんて言えないよね。
とりあえず頷く。
欠伸しそうで心配だね。
「けどその人達にはやっぱ任せられなかった……だって危険だもの、信頼してる彼らをそれに巻き込めない」
「なるほど、でも頼ったんですね」
「ええ、頼らざる得ない状況まで来てしまった……だから仕方なかったのよ」
そう言うと山吹先輩は顔を下に向ける。
両手を太ももの間に挟んで手をあっためる様にしていた。
山吹先輩の太ももは引き締まっていて凄くいい感じだね。
「ん?……私の足太いでしょ?」
「凄く良いと思います」
俺は親指を立てた。
「あらそう、ありがとう……親がね……キックボクシングなんて古い事やっているのよ、その影響で私もやらされたわ」
「そうなんですね」
適当に返事をすると山吹先輩は深くため息を吐いた。
それにあってから見た事ないくらい弱々しい表情している。
それが意外でびっくりした。
こんなにクールな山吹先輩もただの高校生でただの女の子なんだって思ってしまった。
「……卒業したくないな」
そんな事をポツリと呟いた。




