第七十五話
執筆が間に合わず毎日投稿厳しくなりそうです。
申し訳ないです。
金、土、日曜日は投稿しない予定です。
遠い昔の夢を見ていた。
もう心の奥底にしまい込んだ記憶。
俺がお母さんと二人で会話している時のことだ。
しばらく学校にも行かずに家に引きこもっていた頃。
子供向けの映画に連れて行ってもらった。
内容は似たり寄ったりの感じだったけど誰にも評価される事なく陰ながら活躍するその主人公が好きだった。
どんな強敵にも立ち向かいめんどくさい事も嫌がらずに行う。
けどそれが評価されることは無い。
この物語には他にも沢山のヒーローがいて主人公よりも強いヒーローが多く存在していた。
だから主人公にとっては強くてめんどくさくても周りはもっと凄いことしてんじゃんって感じの評価しかもらえない。
自論だけど周りから称賛されてそれがモチベに繋がってまた称賛されるのが一番いい循環だと思ってる。
つまり評価されなければモチベにつながらない次に進まない。
けどこの主人公は最後の最後まで誰からも感謝される事なく終わる。
「ねぇお母さん?なんであのヒーローは最後まで戦っていたの?」
映画を見終えて帰り道そんな事を聞いた。
「そうね……誰かに見つけて欲しかったんじゃないのかな?いつかは自分のした事がみんなに知ってもらえる褒めてもらえるって」
普通の子供ならじゃあ大丈夫だね、僕が見つけたんだからとでも言うんだろうか。
俺はそうじゃなかった。
力があってもそれを使うかどうかは自由だ。
どうせ誰にも見られないなら評価されないなら。
しまっておこう。
やらなきゃ変わらないとか。
努力は報われるとか。
そんなの成功者が言うからであって。
何者でも無い人がそんな台詞を吐いたところで心は動かないだろう。
成功した人は後からなんとでも言えるのだから。
自分の一生を賭けたとか。
バットを振り続けたとか。
それらの過程は結果を出さなきゃ誰にも見られることは無い。
結局誰も見つけてくれないんだから……。
そんな当たり前の事が嫌だ。
だから俺は……。
ーーーー
気がつくと暗闇の中に一筋の明かりが見えた。
なんだか懐かしい様な感覚があったけどそれも意識が戻ると共に薄れていく。
目を凝らし見るとスマホの明かりだ。
「あら?ようやく起きたのね……悪いけど時間がないの、貴方にも手伝ってもらうわ」
「無理です……と言うか俺は何も出来ないです」
だって順位も低いし。
そもそもモブキャラだし。
何より目立ちなく無い。
「じゃあせめて助けたのだから囮くらいになってほしいわ、貴方より優秀な人間を助けるために貴方が犠牲になる……悪くは無いでしょ?」
普通の人なら嫌がるところだが俺的には寧ろ全然おっけーだ。
「おけです」
「随分と素直なのね、助かるわ……とりあえずここからでましょう」
「うい〜」
再びスクリーンの真ん中に黒い線が入り二つに裂かれる。
なんでこんな仕掛けがあるのか気になる。
「ん?不思議そうな顔をしてるわね、軽く説明だけしてあげるけど必要?」
「まぁどうせ捕まるんで」
捕まるなら聞いてもいいよね。
「私たちはこの学園の謎を調べていたとある組織なのよ、名前は言えないけど少人数で優秀なメンバーで構成されてるわ」
ほうほう。
視聴覚室の扉の前で身を潜めながら廊下の左右を確認する。
俺は棒立ちしながら山吹先輩の後について行く。
「私は入学した時からこの学園には何かあると睨んでいたのよ、怪しい点は多々あるけれど特に気になっていたのは他の学校には無いデュエルと夜12時以降の外出後は広すぎて全て調べられてはいないんだけど謎の施設が結構あるのよね」
話しながら周囲を警戒しつつ機敏に動く。
俺はノロノロとその後を追う。
「なんでそんな謎を解きたいんですか?」
「……単なる好奇心って事にしておくわ、貴方も余計な事に巻き込まれたく無いでしょ?」
そりゃもちろん。
けど憶測でしか無いけどもしかしたら山吹先輩は学校に入学してからこの謎を解こうとしたんじゃなくてこの謎を解くために入学したのかもしれない。
て事はいよいよこの人は物語の主人公って事に……。
隙をついて逃げよ。
「ここに隠し通路があるわ入って」
そう言うとそこはルームcの真っ白い壁沿いだった。
山吹先輩お得意のスマホ操作で壁が開きそこには階段が続いていた。
「どう?驚いた?さっきも言ったけど私の仲間達は凄く優秀なの」
「本当に凄いですね、これなら安心して捕まれます」
「変わった子ね、嫌いじゃないわよ」
あざ〜す。
そうして地下の階段へと入っていく。




