1 冷遇されていた日々
この作品は好評不評により、非公開にする可能性のある作品であります。
一応、一万字以内の短編で完結する予定です。
よろしくお願いいたします。
私はソフィー・ルノワール。
ルノワール家の三女であり、家族内で唯一誰とも婚約を結んでない、珍しい娘であった。姉二人はもう結婚を間近に控えている。
家での私はみんなの雑用係。掃除も洗濯も調理も全部私。最初は嫌だったけど、もう慣れた。
使用人がいるのに、何故家事を私に押し付けるのか、未だに意味が分からない。
鏡の前で身だしなみチェックをする。
ストレートのセミロングの銀髪が陽に照らされ煌めき、明るい碧い瞳が艶を出している。銀髪碧眼とはまさにこの事だ。容姿は整っているのに、何でも受け入れてしまう性格から、家族に虐げられる羽目になっている。
でも、家族以外の男性には容姿があってか、ひどく気に入られている。
それがまた、姉や母親の反感を買うのである。
だが、家族以外の男性で一人だけ私を良く思わない人物がいた。それはまだ、先の話。
身だしなみチェックが終わると、朝食の準備をする為に厨房へ向かった。
廊下にて。
「ああっ! ……ごめんなさい」
前から姉が近づいてきた。そして、わざとらしく転ける。転けたと同時にほうきの柄の部分が私の胃付近に突き刺さった。
「痛っ!」
「大丈夫ですの?」
「お気になさらず。痛いのには慣れておりますので」
「もっと痛めつけてやろうかしら」
そう仰るのは次女のアリア・ルノワールだ。くるくるの濃いピンク色の髪が特徴だ。
「……」
私は立ち去ろうとする。
別れ際――
「掃除やっといて」
ほうきを渡し、そう呟くアリア。
私、今から朝食作らなきゃいけないのに。
厨房に着いた。
ほうきを持っているので、周りの人から奇異な眼差しで見られる。
「おい、ほうき持って料理出来るのかよ」
呆れた顔をする副料理長。
ほうきを適当に隅に置き、
「頑張ります!」と私は意気込んだ。
今日の朝食のメニューはロールキャベツと食パンとハムサラダのセットだ。それを約15人分作る。
調理中、ロールキャベツの良い香りがする。この香りを嗅ぐ為に調理してるといっても過言ではない。
何故なら私は食べれない。というより、食べさせてくれない。なので、いつも家族の残り物を食べている。
「これで朝食完成だな。みんな、お疲れ様」
全く私の方には視線を送ってくれない。みんな、いない者として私を扱ってくる。
「お疲れ様ー」
美味しそうで羨ましい、という気持ちを募らせながら、儚げに朝食の皿を運ぶ私。残り物が無い――つまり、食事が食べれない、という日もある。
まずはお姉さまの部屋に食事を運ぶ。このお姉さまは一番上のお姉さまだ。廊下で会った人とは違う。いつもお姉さまは機嫌が悪い。皿を地面に叩きつける事もあるので、怖かった。
「お姉さま、お食事です」
「早く入って」
テーブルに食事を置く。
今日のメニューは気に入ってくれるだろうか。
「ロールキャベツ、まあ悪くないわね」
良かった。
ほっと胸を撫で下ろす。
「それでは、失礼します」
お姉さまとのやりとりは早めに終わらせたい。時間が掛かると怒るから。
私はそうしてお姉さまの部屋を出た。
次に向かうのは庭だ。
優雅にティータイムを愉しんでる公爵様がいるはず。
庭に辿り着いた。
そこは――
色とりどりの薔薇に囲まれ、鳥は囀り、黒い蝶は飛び交っている。なんて、美しい空間なんでしょう。
そんな美しい空間にぽつんと存在する人物。
「遅かったな。何でこんなに遅いんだ。一番最初に俺に運ぶべきだろ」
私を鋭く睨む魔王のような公爵様がいた。