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Fゲーム2nd  作者: 塚波ヒロシ
9/26

第9章 桜晴

こんばんは、それともこんにちはですかね?

毎度お世話になります、塚波です。


…すみません、書いているうちに楽しくなってきた

劇中屈指のゲームチーム『百花繚乱』…

その話が中心になってしまい、バトルシーンが

また来週になってしまってます。


いや本当、なんと言っていいのやら。

第9章 桜晴


「ミュート……、僕は何日ぐらい父さんと連絡を取ってない……?」

「龍が浜に来てから今日までの2日と、その前の4日で併せて6日間ね」

「ミュートは……なんでそれを教えてくれなかった?長いなとは思わなかったのか?僕が親に1週間も連絡してないだなんて」

「……おかしいとは思わなかったわ。この仕事の事で忙しかったし、それに親と離れて暮らすって、そういうものだと思ったから……」

「……そうか……。ミュートはそう判断したんだな……」

「そうね。そう判断したわ。異常な事だとは思わなかったわ……」

 僕はもうそれ以上にはミュートと話しても、何も進展しないと判断して会話を続けなかった。

 僕の感じた違和感は、単なる思い過ごしなんだと思う事にした。この一週間、頭の片隅にも親の事を思い出す事が一切無かった事に、何も疑問を持たないように言い聞かせた。

 そのせいでなのか、写真を見ても直ぐに両親の結婚式の物だと思い出す事も出来なかったし、この飛行機酔いの事も相談する事もしなかった。もしかするとこの飛行機酔いは僕の小さい頃のトラウマが原因なのかも知れないのに。

 単に忙しくて、楽しくて親の事を気にかけなかったのだと、自分に言い聞かせる事にした。そうでもしないと、何か別の要因……ミュートのせい?……で忘れかけているんじゃないかと、何故か突拍子もない考えが頭をよぎってしまいそうだったからだ。

「『百花繚乱』ってのはゲームチームの名前なんだよな。そんな御大層な名前ならオレでも覚えていると思うんだが……」

「知らなくて当然ね。大昔の……この船が出航する前の時代だものね」

 ヤヨイさんはそう言うと、写真をテーブルに並べて、全部が見えるようにしてくれた。

「ウチの旦那に聞いた話何だけどね……」

 懐かしそうな表情で語り出したヤヨイさん。いつもの元気なそれとは違い、年相応の大人の女性のその顔に僕は少し頬が温かくなって来ていた。


 ゲームチーム『百花繚乱』は、その名前に忠実で、百人のゲームプレイヤーからなる大規模なゲームチームだった。

 元々は自費出版の二次創作漫画(同人誌と言うらしい)の作成サークルから出発し、無料動画投稿サイトへのゲームプレイ動画投稿につれ知名度と参加人数が増えていったようだ。

 常に参加希望を申し込むプレイヤーが後を絶たなかったのだが、とうとう100人集まった時点で募集を打ち切った。

 もちろん参加後に脱退するプレイヤーもいたのだが、すぐに空きの席は埋まってしまい、ほぼ常に100人の満席だったようだ。

 動画で配信されたゲームは多岐にわたる。レースゲーム、対戦格闘ゲーム、戦争ゲーム、カードゲーム。100人もいれば得意分野は相当分散しており、部門ごとで10人ほどの小チームに分かれての行動が多かったようだ。

 ただそんな中で『百花繚乱』の真骨頂とも言うべき、大人気動画コンテンツがあった。

 『ドラゴンハンターズ』というゲームのプレイ動画だ。

 『ドラゴンハンターズ』は『百花繚乱』ができた当時でも歴史に長いゲームソフトで、古くは携帯型ゲーム機の頃からシリーズが繋がっている人気のあるゲームソフトだ。

 『ハンター』と呼ばれるキャラクターを操り、武器やアイテム、地形を使って巨大なドラゴン達と戦うアクションゲームだ。

 ドラゴンは人間大の弱いものから、それこそ家よりも大きな強大なものまで多種多様で、それらを手持ちの武装とプレイヤーの技術を総動員して死に物狂いで戦い、倒す。それがプレイヤー達に爽快感と達成感を与えて、大人気ソフトの一種となっていった。

 人気に出た要因は他にもあり、倒したドラゴンの血肉を素材として生成する武器防具の種類の多さと独特なデザイン。プレイヤーを突き離すようなある種不親切な程情報量の少ないインターフェイスは、プレイヤー達にサバイバルを擬似体験させるような計らいを意図しており、巨大ドラゴンに対峙した時の絶望感を演出していた。

 そして特筆すべき特徴にして、人気ソフトになった最大の要因は「多人数参加型ゲーム」である事だ。

 巨大ドラゴンが絶望を与えるのと同時に、隣にいる「仲間」が信頼感と安心感をプレイヤー達に与えた。そして巨大ドラゴン討伐を達成する事によって、全員に連帯感と、喜びを共有する一体感を大きく与えたのだった。

 多人数同時参加は、最初の頃は携帯ゲームを皆でそれぞれ持ち寄り、近くにいる四人程度で一緒に遊べると言った細々としたものだったが、ゲーム市場が携帯ゲーム機からネットワーク接続型据え置きゲーム機や高性能ゲームプレイ専用コンピューターなどに移って行くと、同時参加人数は加速度的に増えてゆき、最終的には(限定ステージのみだが)100人同時参加と言うところまできた。

 それこそがまさに『百花繚乱』の真骨頂。動画の人気コンテンツになったのだ。

 正直、100人のプレイヤーを集めてゲームをするってのは簡単な事ではない。それはプレイヤーもゲームメーカー側もそう思っていた。だが『百花繚乱』はその100人参加ステージを毎週一回はクリアーをし、ついにはメーカーの用意したステージを全部クリアーしてしまったのだ。

 動画視聴者達は毎週配信される、自分達では到底参加することができないステージをどんどん攻略してゆく『百花繚乱』に目が釘付けになった。実際は『百花繚乱』のメンバー達は単にゲームを楽しむために集まっただけに過ぎなかったのだが、視聴者達がその「ただのサークル活動」という、ある種いい加減さを許さなかった。

「誰が最強プレイヤーなのか……」

 『百花繚乱』メンバーの誰もが意識しつつも、仲間内でのイザコザを起こさないため、暗黙の了解でタブーとされてきたそれに、視聴者の一部がメスを入れてしまった。

 『百花繚乱』の活動を勝手に集計していた非公認のサイトが『百花繚乱ランキング』を名乗り、独自の集計方法でプレイヤーをランク付けてしまった。

 このサイトはファンは勿論のこと、『百花繚乱』と競い合っている他のゲームプレイヤーチームや、最終的には『百花繚乱』のメンバー達も注目する事になった。

 その中で、そのサイトが勝手に(最終的には半公認)100人のプレイヤー達を区分し、称号や二つ名を与える事になった。

 まずは大きな区分として、1位から50位までを「五十華」、51位から100位までを「百華」とした。そして最上位ランキングの1位から10位までを特別に「十華」(とみか)の称号を与えた。

「十華」はゲームプレイヤー達に賛否はあれど、その活動に注目が集まった。

 実際にその人気を裏付ける実力を持っていて、彼らが全員集まった『ドラゴンハンターズ』の最難関ステージでは、本来は50人集めてもクリアが難しいと言われる程の難易度のクエストを、たったの10人で、しかもゲームメーカー公式サイトの最短クリアー記録を大きく短縮する大記録を打ち立ててしまったのだ。

 それ程までに人気を博し有名になった『百花繚乱』だったのだが、ある時をもって突然の解散となってしまった。

 『百花繚乱』公式サイトには「チームの維持の限界」と「個々人の活動を優先する方向に舵を取るため」とその理由らしき文言が書かれていたが、明確な理由は無く、また配信動画でもトップメンバー達の声明は無かったために、ファンたちは解散理由に憶測を重ねていった。

 金銭的な対立や、色恋沙汰。あの強さは不正データを使用していたのでは?傷害事件が起きたのでは?などなど……。

 サイトやブログ、SNSなどに解散に対する考察記事が拡散されて、賛否を巻き起こしたが、公式サイトはそれらに対して一言も語ることは無かった。

 そうこうしているうちに、世界的な移住計画『箱舟計画』が発表され、世間はそれどころではなくなってしまった。

「じゃあ父さんか母さんはその『百花繚乱』のメンバーだったってことなんだろうか」

「恐らくね。ウチの旦那が確か15位のプレイヤーだったのよ。彼がこんなフル装備をして他のメンバーの結婚式に参加してるって事は、新郎新婦は相当なランクの、もしかしたら『十華』ぐらいのランカーかもね。映っているメンバーの装備を見ると、全員が最上位クラスの装備を身につけているわ。彼等にしてみると最上位装備ってフォーマルなスーツみたいな感覚だったって言っていたわ」

 さて、長々とこんな事を話した訳だけど、それには大きな理由がある。この「龍が浜争奪戦」に参加する僕たちの勝敗に大きく関わる事だ。

 僕のニューマシーン「レッドドラゴン」の事だ。

 もうその名前から推測できると思うけど、このマシーンはドラゴンの姿をしている。そしてそれは『ドラゴンハンターズ』に登場するドラゴン「炎竜 ギガレウス」そのものだった。

 とは言え、ギガレウスは真っ赤な鱗に全身を覆われ、皮膜を張った翼を携えた巨大な生物としてゲームに登場している。だけど、僕の「レッドドラゴン」はシルエットこそ瓜二つだが、その細部は機械そのもの。つまり「ドラゴン型ロボット」だったんだ。

 「ドラゴンハンターズ」シリーズは大人気のゲームソフトだったので、当然グッズも多岐に販売されたんだ。

 キャラクターのイラストのプリントされたタオルやタペストリー、缶バッチやノートなどなど。そしてドラゴンやハンターたちのフィギュア。

 そのフィギュアの中で一種類、異彩を放つ商品が発売されて、これがまたそれ程売れなかった。それこそが僕のニューマシーンの元になった「メタルボーン Gレウス」だ。

 発売したのはロボットアニメ玩具で有名なメーカーで、そのロボットフィギュアの高価格シリーズで販売されたんだ。

 本来、巨大な生物として描かれていた「ギガレウス」を、金属の装甲や骨格を持つドラゴン型のロボット「Gレウス」として独自にアレンジし発売してしまったのだ。

 しかもだ、この「Gレウス」の最大のギミックとして「ハンターロボ」に変形することが出来てしまうのだ!

 本来は対立し、死闘を演じるもの同士の「ハンター」と「ドラゴン」を巨大変形ロボットとしてまとめ、一つの商品として売り出してしまった訳だ。

 出来は良かった。両形態のスタイルはよく纏まっていて、金属のフレームはガッチリとしている。ギラギラと輝く金属装甲は高級感があったんだ。だけど……あまりにアレンジが効き過ぎていたため、ゲームにファン達にはあまり受けいられなかった。むしろゲーム内の姿を忠実に再現したもっと安価なアクションフィギュアの方が売れた方だったみたいだ。

 そんな、いわば「キワモノ」が今回の僕のニューマシーンなんだ。ダグが「面白い戦いができる」って言ったのは、そう言うところからかも知れないな。

 ニューマシーンで戦うにあたって、僕には少し不安要素が残った。

 まずは「ドラゴンモード」での飛行訓練。飛行機酔いが克服できるのか?そして、ドラゴンってのはどんな方法で戦っているのか?

 だけど、今のヤヨイさんの話を聞いて少し安心した。恐らくその姿はどこかの動画にあるんじゃないだろうか?またはドラゴンを題材としたアニメーションや映画が参考になるんじゃないかな?

 もう一つの不安要素は、「ハンターモード」での剣技だ。「ハンターモード」なると、どうやら剣と盾を構えて戦う事になる。これは「ドラゴンモード」の時の竜の尻尾が変形した武器だ。

 レッドブルだと、ミサイルランチャーやマシンガンと、主に銃火器を使用したり、素手でプロレス技をかけたりとおおよそ剣を使う戦闘とはかけ離れていた。

 ただこれについても、「ギガレウス」との戦闘動画でなんとかなると思っている。その場合、注目するのはハンター側になるだけだ。

 そして、その動画を入手するのに父さんか母さんの力を借りる事になるだろう。1週間も電話しなかった事を謝り、今回の事を話せば怒られるって事は無いはずだし、何より両親の元気な顔も見たくなってきた。

 あとはヤヨイさんからの情報も期待できる。旦那さんの動画だって残っているかもしれない。

 僕はそう思ってヤヨイさんの方を見た。するとヤヨイさんの表情が少し厳しく曇り、天井を見詰めていた。

「なんかありました?ヤヨイさん」

「そう言えば思い出したのよ。明日レースをするミヤザキさん。彼って『百花繚乱』のメンバーだったのよ。しかも『十華』の第9位のランカーだったはずよ……」

 ヤヨイさんの重い表情を見て、僕らの表情も次第に曇り始めていったのだった。

 


 


書いているうちに楽しくなっちゃうって事は

良いことなんですかねー。

全然予定通りに行かなくてちょっと焦ってきました。


来週こそはバトルシーンに突入できるのか?



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