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Fゲーム2nd  作者: 塚波ヒロシ
8/26

第8章  太陽の砦

こんにちは、それともこんばんは?

今週分もお付き合いください、塚波です。


バトルシーンを書こうと思っていた目論見はまんまと外れ、どちらかと言うと敵チームの紹介及び、少しだけ物語のバックボーンを書くことになりました。

楽しみにしていた方には申し訳ないです。

貯めた分、バトルシーンは気合を入れて行きますよ!


ではでは今週分をお楽しみくださいませ!


第8章  太陽の砦


 スメラギさん達とのミーティングはしばらく続いた。

 条件はすべて飲むのには変わりなかったが、僕らレーサーへの賞金の面で少し揉める形になったが、こちらもまたスターチャート側の要求どおりになった。まぁ主催者はミヤザキ氏なのでこちらとしては貰えるだけでも儲け物なんだと思うけど。

 ミーティングもほぼ終わり、あとはサインをするだけという段階でスキンヘッドがコーヒーブレイクを要求した。いや、と言うよりも……

「なぁ、艦内は見られないのかい?」

 敵状視察を堂々と要求した。ウミさんを含め全員が苦笑いをしたのだけど、スメラギさんだけは困った様子もなく「私達の監視下ならば許可しても良い」と、意外にもOKをした。

 僕らは全員が席から腰を浮かせるほどビックリした。

「正気かアンタら……。言質は取ったぞ。今更ノーは言えねえぞ?」

「大丈夫だよ。なんなら今から艦内見学ツアーに洒落込もうか?」

 要求したスキンヘッド本人が驚くのも、敵情視察だと分かっていても自信たっぷりのスメラギさんも、僕には立場が逆転している様に見える。

 さっきのミーティングもそうだけど、スメラギさん達に手玉に取られている様で気に入らなかった。


 空母イスカンダル。排水量やら色々説明されたけど意味の分からない語句が多くてイマイチ凄さが分からなかった。後でミュートに聞いておこうと思う。

 でも外観の巨大さに比べ、僕たちが歩いている通路はとても狭く感じる。

 人が二人すれ違うのがやっとの通路幅で、壁の至る所に配管やらスイッチ、バルブなどが並んでいる。そのゴチャゴチャ感は低い天井にまで続いていて、僕程度の身長の人間でもなんとなく背をかがめてしまいそうだ。実際は背の高いエンゼル兄弟が胸を張って歩いていても頭をぶつける事はなかったけど。

 その中でも一番驚いたのは、搭載機の格納庫まで見せてくれた事だ!

 許可を簡単に出すこともそうだし、その光景にも驚愕した。ミュートに至っては、驚きを通り越して青ざめてまでいた。

 エンゼル兄弟も終始無言で、ミヤザキ氏も全く同じだった。

 僕も空母と耳にした瞬間から薄々思っていたのだけど、格納庫を見てそれが確信に変わった。

「まるで……軍事基地ね……」

 今やゲームの中でしか見ることが出来ない、時代錯誤とも言うべき光景がそこにあった。

 確かにバトルステージというゲームのワンシーンには違いないけど、圧倒的な存在感がここにはあった。

 今までの薄暗さとは逆に、煌々とライトに照らされた庫内では、紺色のツナギ服を着たエンジニアがタブレットを片手に機体を調整している。

 アイズの男性なのだろう、ウィンドウを10個以上立ち上げていて、周辺のエンジニアに指示を出している。

 そして彼らが取り囲んでいる機体は……

「これが私達の機体『ワルキューレ』だよ」

 スメラギさんが胸を張り、声高らかにその名を読み上げた。

「私達は、スターチャートカンパニー 航空戦闘大隊 第11小隊 通称『チームスレイプニール』だ。今回はこの5人で君達と龍が浜を賭けて戦うこととなる!お手柔らかに頼むぞ」

 僕らに振り向き、『ワルキューレ』を背景に仁王立ちするスメラギさんは、満面の笑みで僕らに自信たっぷりの宣戦布告をしたのだった!


「飛行機酔いなのに、僕らと戦えるの⁉︎」

 格納庫からの帰り道、ウミさんが待ってましたと言わんばかりに僕らに駆け寄って話しかけてきた。彼女は格納庫でビビりまくった僕たちの様子に満足気だった。

「そうなんですよね……」

 意気消沈した僕は、気弱にも彼女に不安要因を説明してしまった。

「困ったなぁ。ボク、やっとキミと全力で戦えると思ったのに!」

「なぁに、アンタは今まで手加減でもしていたのかしら?」

 僕の後ろを歩いていたミュートが、不機嫌を隠すことなくウミさんに突っかかる。

「手加減はしてないけどねぇ。ただ前回はミュートを助けるために道を譲ったし、ソレに土台にもされちゃったよね。お礼の一つもキミからはなかったんじゃないかなぁ?」

 今日のウミさんは絶好調だ。ミュートは痛い所を突かれたらしく、ソレで黙ったしまった。

「どうしたものかなぁ……」

「ソレなら確かマルヨシさんもそうじゃなかったですか?」

 僕の前を歩いていた……キタミさんが振り向きながら会話に入って来た。

「マル姐さん、昔は飛行機酔いしてたんだって?」

「ん?ええ、そうよ。このチームに入った当初は大変だったわぁ。ウミちゃんとかはまだ居なかったわねぇ」

 外見年齢とは裏腹に、ひどく舌足らずな喋り方をするマルヨシさん。顎に指を添えるのはクセなんだろうか。

「マル姐さんはソレ、どうやって治したの?今は飛行機酔いなんてしてないよねぇ?」

「えっと……あ、そうそう!鳥のアバターを使ったのよ」

「どういう事ですか?」

 前を進むマルヨシさんの顔を覗き込むようにキタミさんが興味深々と聴いてくれた。

「飛行機を操縦すると酔っちゃうから、その前に先ずは自分の体で飛ぶ事に慣れたのよ。感覚に慣れたらあっという間だったわ。それに、その感覚を今の操縦に活かす事も出来ているわぁ」

 顔だけでマルヨシさんが僕らを振り向いた。ニッコリと笑いかけるその顔に僕はドキッとした。

「ウフフ……、さぁそろそろ会議室よ。対戦相手に塩を贈れるのもここまでねぇ」

 分かってやってるんだな、この人達は。それだけ今回の龍が浜争奪戦に自信があるんだろう。

 ただ、それは僕も同じだった。自信……とは違うけど……何か引っ掛かると言うか、気付きというか。あえて言うなら「突然差し込んで来た光の様なもの」を感じた。

 慌ててメモ画面を立ち上げて、こう記した。

「自分自身の力で飛ぶ」


 ダグは呆れて、ホテルのロビーのソファーに座り込んでしまった。

 彼はミュートがコピペしたミーティングの内容と、レースの契約書を自分にウィンドウに写し、ソレを眺めている。

 ミカは甲斐甲斐しく、ヤヨイさんも含めた5人分の飲み物を用意していた。

「ロムの判断で決めてくるには文句は言わないが、電話の一つぐらい寄越してくれたって良くないか?」

「すまない……。どうも飛行機酔いの影響が残っていて……」

「まぁいいや。あとミュート。こっちからケンカを吹っかけるようなマネは今後しないでくれよ。オレだってみんなのスケジュールを考えているんだから……」

「ごめんなさい……」

 ミュートはミュートで、ミーティングの間もそうだったが少し元気が無さそうに見える。啖呵を切った時はあんなに勢いがあったのに。

「オレとしては概ね理解したし、了解もした。で、どうだった?」

「エンゼル兄弟は今まで通りでいいと思う。強敵には違いないけど、勝てない程じゃない」

「問題は……『スレイプニール』だな」

「調べはつきましたよ。データを送ります」

 ミカがウィンドウを操作すると、僕ら各自のウィンドウが自動的にポップアップして資料が映し出される。全員が読み進めるほどに青ざめていった。

「やっぱり、あの『スレイプニール』だったか……」

 ダグが僕に確認をする。ウミさんが在籍している事は知らなかったけど、あの『スレイプニール』に間違いないはずだ。

 『チームスレイプニール』は戦闘機乗りのゲーマー達にはあまりにも有名で、半ば伝説になっているチームだ。

 スターチャートカンパニーの航空隊は、大きく4つのチームに別れている。

 『スレイプニール』『アンヴァル』『ペガサス』『ユニコーン』の4中隊で、さらにそれは3つの小隊からなっている。

 スレイプニールの場合、航空機小隊『スレイプニール』を筆頭に、輸送隊『グラニ』や整備隊『ステーブルワン』を支配下に置き、その他活動に必要な隊が随時所属する形になる。

 名馬の名を冠する4中隊の中でも『スレイプニール』隊は華々しい戦歴を持っていて、僕たちが参加する予定の「ギャラクシーウォーズ」では過去2回も優勝しているし、その他の有名な航空レースや宇宙戦ステージで、個人団体問わず優勝を勝ち取っている。

 レーサーズマガジンにも度々取り上げられていて、特に新型汎用戦闘機『ワルキューレ』を手に入れてからの戦績が半端ないものとなっている。

 それもそのはずだ。あの戦闘機『ワルキューレ』は僕に持っているレッドブルと同じく「ロボットに変形する」いわゆるスーパーマシーンなのだから。

 実際には戦闘をした他のプレイヤーからの証言だけで、動画映像は著作権を盾に見る事が出来ない。それでも実際に格納庫を見てきた僕たちはその証言に嘘はないと思えていた。

 大空を縦横無尽に飛び回る『ワルキューレ』達。その戦力はたった5機ながら大艦隊にも匹敵するとまで言われている。

 巨大戦艦を轟沈させ、幾つもの基地を蹂躙し、何十機もの敵機を殲滅する『空飛ぶ死神』……僕たちチームブレイバーが何処までやれるのか不安しか無かった。

「で、ロム……マシーンは決まったのか?」

「あぁ……これを見て欲しい……」

 僕は自身が火だるまにされるイメージ映像を頭から追い出し、ホテルに帰ってから慌てて検索した『インデックス』のデータをみんなに転送した。『スレイプニール』のデータに重なるように表示されたデータを見ながらダグが唸った。

「悪くは……ないな。確かにこれなら良い戦いと言うか、相手への意表を突いた攻撃が出来るかも知れない……」

 ダグは『ワルキューレ』の資料を見比べるようにして言葉をボソボソを吐き出した。恐らく頭の中で戦闘シミュレーションでもしながらだからなのだろう。

「コレって確か……」

 ヤヨイさんがウィンドウを見ながら立ち上がり、ロビーの奥に進んでいった。確かホテルの地下に続く階段の方角だ。

「ロムが一人で用意したにしては悪くないんじゃないかしら?」

 とミュートが呟く。理由が分からないが気減悪そうに口を尖らしている。

「ほら、空母でマルヨシさんやウミさんが言っていただろ?自分自身で飛ぶのなら酔わないかもって。それで思い出したんだよ。こんな機体もあったなぁって!」

「はいはい……ウミさん様様って事ね!」

 なんだよ……機嫌悪そうに。敵に贈ってもらった塩をどう使おうと良いじゃないか……。

 そうこうしていると、ヤヨイさんがパタパタと駆け戻ってきた。

「これよ、コレ!この写真を見て!」

 ヤヨイさんが数枚の(コレまた珍しい紙製の)写真を持ってきた。

 ウィンドウに移し、みんなに拡大して渡された映像には、どこかで見た事のある光景が映っていた。

 「結婚式にて」と書かれたその映像には、教会前の空き地で、思い思いの鎧を着込んだ何十人もに人達が肩を組み、楽しそうに並んでいた。写真は他にも皆で立食パーティーをしている光景が写されている。問題は最後に一枚だ。

 「レウスGとレイアG装備の新婚夫婦」と書かれた写真には、空き地で焚き火をし、その火で一斗缶ほどの肉の塊を炙り焼いている二人の鎧の戦士と、それを取り囲む数人の同様の格好の仲間たち。

 僕はこの写真をどこかで……最近……見たことがあったはずだ!

「ミュート、この写真を何処かで見たことがないかな?」

「……憶えていないのね?ほら、『私の資料室』の写真でしょ……?」

 ミュートがポツリと小さな声で応えながら、一枚の画像を僕のウィンドウに寄越した。

 ヤヨイさんが持ってきたものと全く同じ写真だ。

「コレは……?」

「あなたに両親の結婚式の写真でしょ……?」

 何か他にも言いたい事があるようなミュートの静かな口調に気になる事があったんだけど、今はそれどころじゃない。

「でも、何で同じ物がヤヨイさんの手にあるんだ?」

「そうね……。私の写真は旦那の物なのよ。ほら、コレが旦那よ」

 ヤヨイさんが指差したのは、中央の巨大な肉の塊を焼いている人物のその横で、飲み物の入ったジョッキを高々と掲げている鎧の戦士だった。

「そして、その隣が海の家のオーナーのミヤザキさん。他の出資者も別の写真に写ってるわよ」

 一通り説明を受けた僕たちは、驚きの余り沈黙してしまった。

 どういうわけか知らないが、どうやらうちの両親とこの龍が浜の出資者全員が知り合いらしい。

「そっか……。だとすれば、君の両親は『チーム百花繚乱』の、しかもトップメンバーの誰かかも知れないね……」

 ヤヨイさんの目がスゥーっと細くなる。でもそれより、僕には今、背筋が寒くなるような事に気が付いてしまったんだ……。

ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

やっと敵チーム『スレイプニール』をしっかりと

登場させられました!


え?どっかの誰かによく似た5人だって?

…オレの愛馬たちじゃないんだからね!!


あとはロムの両親とアイズのバックボーンを書き、

いよいよバトルシーン!

バトルシーンが書いていて一番楽しいです!


ではではまた来週も楽しみくださいね!

ご期待して頂けるのでしたら、是非とも高評価ブックマークのご登録、よろしくお願い申し上げます!

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