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Fゲーム2nd  作者: 塚波ヒロシ
7/26

第7章 星空はいつも

こんばんは、こんにちは、おはようございます。


今週もお世話になります、塚波です。

恒例の週末配信を致します。


一つお詫びが!

バトルシーンは今回ありません!ごめんなさい!

思った以上に前置き部分が長くなってしまいました。


次回か次次回にはインサートできる計算です。


ソレでは第7章、始まり始まりー!


第7章 星空はいつも


「またテメエらかよ。ったく……」

 浜辺に集まった数人の中でも、一際背の高いスキンヘッドの男性が、僕を見下ろしながら毒を吐くように言ってきた。

 集まったのは僕とミュート、海の家のオーナーでこの浜辺の出資者ミヤザキ氏。そして彼が呼んだレーサーの二人組の計5人だ。

 離島につながる橋をレースで使用するために、ミヤザキ氏とは別の出資者に許可を取りに行く事となったんだけど、顔合わせをしておこうと言うことになって、ミヤザキ氏お抱えのレーサーチームを呼んだという訳だ。

 二人組のレーサーはどちらも男性なんだけど、外見からして正反対の二人に見える。

 一人は、さっきから僕を睨み付けて、グチグチ文句なのか悪口なのかを吐いている。

 まず綺麗に剃り上げられた頭部。髪の毛が一本の無く、夏の昼の太陽光線が鏡のように反射している。眩しくて僕が目を逸らすと余計に僕を睨み付けるのでタチが悪い。僕の隣にいるミュートが「帽子でも被ってきてよね……」と囁いてくるが、全くその通りだよ。

 薄茶色のサングラスをし、口にはストローのようなものを咥えている。ミント味のスティックだと思う。まぁタバコを吸われるよりはまだ良いかな。

 細かいストライプの入ったワイシャツの上に、これまた太陽光線をキラキラ反射する真っ黒なベストを着ている。履いているスーツパンツも同じ素材なんだろうな。しかも靴は真っ白なエナメルの革靴で、浜辺には全く似つかわしくない。むしろバーテンダーのような格好だ。

 もう一人もおおよそ浜辺に出るには場違いな格好だ。

 バーテンダーと同じぐらいの高身長で、彼の吐く悪態に無言で頷いている。

 厚手の純白のパーカーにダメージの入ったデニムのパンツ。黒いハーフブーツを履いている。フードは目深に被ったままで、両手はパーカーのお腹のポケットに入れたままだ。

 顔はほとんど見えないけど、長い前髪から時折見える眼光は鋭く、僕ら二人を常に見ているようだ。

「ねぇ……この人達に会ったことはあるの?」

「ううん、初めてだと思うんだけど……」

 ミュートの疑問ももっともだ。こんなにインパクトのある人達を忘れる事はないと思うんだけど、その割には明らかに僕らの事を敵視しているんだよね。

「紹介しよう、彼らはワシの弟子みたいなもんだ。レースチームの『エンゼル兄弟』という……」

 もうそこまで聞いて僕らは合点がいった!そう、この数戦で毎回のように対戦してきた……

「あのすけべモヒカン!」

「その言い方はやめい!」

 指をさすミュートに食い気味に突っ込むスキンヘッド。パーカーの方も無言で睨みつけてくる。

「レッドブル!テメエは毎回毎回インチキをして、オレたちの楽しいレースを邪魔してきやがって!」

「今度は……負けない……」

 スキンヘッドと、やっと口を開いたパーカーが丸出しの敵意を僕にぶつけてくる。当のミヤザキ氏はその光景を、さも面白そうににやけ顔で見ている。

「ソレでな、お前らにどっちが浜辺の防衛戦に出てもらうか競って貰うんだが……、レースコースに選んだ橋の使用許可を取りに、皆に揃って貰った訳だ」

「そりゃ構いませんが、メールや電話じゃダメなんすか?」

 打って変わって、そこそこ丁寧な口調のスキンヘッドの質問に、ミヤザキ氏は不思議な事を話した。

「ソレがわからんのだよ。遣いを出すから、停泊している船まで来て、直接話しをしたいと言われたんだ」

「あれ……ヘリだ……」

 パーカーの言う通り海側から爆音と共に近づいてきたのは、馬鹿でかい灰色のヘリコプターだった。青い空高く飛行するヘリはあっという間に僕らを飛び越し、浜辺に隣接した駐車場に降り立った。

「アレに乗れってことかしらね」

 ヘリの巻き起こした強風で乱れた髪を直しながら、ミュートが不安そうに僕を見上げる。

「そうだろうね……とりあえず行ってみよう」

 僕も少しだけ不安になってきた。ただソレがミュートの抱えたものと同じだったとは言い難かった。


「ケッ!お前はそんなんで対戦に出ようとしてたのか?」

 相変わらず機嫌の悪いスキンヘッドを見て、僕は一層気分が悪くなってきた。

 僕の不安はやっぱり的中した。そう、飛行機酔いってやつだ。乗っていたのはヘリコプターだけどね。

 揺れがどうこうとか、閉鎖空間がどうこうとかじゃ無く、何か分からない重圧感が堪らなく気持ち悪く感じる。

 僕はこの依頼を受けるまで、一回たりとも飛行機やヘリに乗ったことがないので、トラウマどころか何かしらの思い入れすらないはずなんだけど。

 ミュートにもその原因は分からないらしく、ただただ僕の背をさすって、僕を落ち着かせようとする事しか出来ないようだった。

 吐くものを全て出してしまっても嗚咽が止まらない僕を見て、さすがのスキンヘッドも気の毒に思ったのか、それ以上は無言だった。

 悪夢のフライト(たったの15分程度)が終了しヘリが降り立ったのは、真っ平らの船の甲板だ。そこはまるで真っ青な海の上に浮かぶ、大きな駐車場のように見えた。

 ペンキで綺麗に引かれた白線が船の頭尾を結び、その脇から斜めにも延びている。大きく書かれた「01」という数字や、鉄道の線路のようなものがアスファルトの地面に埋まっていたり。

 一個一個は今まで見たことのある物なんだけど、ソレが船の上に集合していると、こんなにも異質な光景になるとは思わなかった。

「航空母艦……空母……聞いた事はないのか?」

 ちょうど隣にいたパーカーが、僕を見ずにそう聞いてきた。

「聞いた事はある。……見るのは初めて……」

 少しずつうねりが治まってきたお腹をさすりながら僕は彼にそう答えた。

 彼とは反対側の隣にいるミュートは、逆に僕の背中をまださすってくれている。

「全員よく見ておくんだな。この船こそが龍が浜防衛戦の対戦相手だぞ……」

 僕らの並びの一番左端でミヤザキ氏が、海風に逆らうようしっかりした音量で僕らに注意をする。

 そう僕たちは敵の本拠地に、武器も持たずに降り立ってしまったんだ。

 ヘリから降り立った僕たちは、白い軍服の様なキッチリした服装の女性の先導で会議室に案内された。

 席に座ると間も無く、同じく白い服の女性が四人現れ、先程のと併せて5人が揃った。その5人は揃って僕たちと向かい合う形で席に着く。

 やっぱり軍服なんだろうか。着席する所作すらもキッチリ揃っていて感心する。軍隊を目の前にしているようでむしろ圧倒されている気分になり、収まりかけていた飛行機酔いが戻ってきそうだ。

 僕たちは左からミヤザキ氏、スキンヘッド、パーカー、僕、ミュートの順で座っている。相手側も恐らく一番年上の女性がミヤザキ氏と向かい合っているので、彼女達を中心に会議が行われるんだろう。

「御足労頂いて、ありがとうございます」

 僕から見て一番左端に座っている女性が、みんなを見渡しながら静かに話し始めた。

「スターチャート本社を代表して御礼申し上げます」

 向こうの全員が一斉に立席し、頭を下げる。いちいち行動が揃っているのでやっぱり怖い。

「ねぇ……あれ……」

 慌てて立ち上がった僕たち全員を向こうの女性達はニッコリしながら着席を促すのだけど、ミュートの向かいにいる背の低い女性だけは僕とミュートにウインクを飛ばしてきた。

 ミュートが僕の袖を引き、彼女をよく見る様に促した所でやっと僕も気が付いた。驚きと共に納得もしてしまった。そりゃそうだよな。相手がスターチャートカンパニーなんだから。「彼女」が居たってなんら不思議じゃない。

「私がこのチームのリーダー。アズサ-スメラギです。以後お見知り置きを……」

「ベニコ-マルヨシです」

「スズカ-オトナシです。ようこそ、空母イスカンダルへ」

「マツリ-キタミです!」

「ウミ-アズマです!久しぶりだね、ロムくん!」

 5人の女性が次々に名乗ってから着席する。そう、スーパードラゴンのドライバー「ウミ-アズマ」の所属するチームが今回の「龍が浜争奪戦」の対戦相手だったんだ。


「成程、承知致しました。龍が浜ブリッジのオーナー、つまりスターチャート本社からの許可も出ております」

「話が早いですな。では早速……」

「……条件があります……」

 ミヤザキ氏が席を立つのを停める形で、2番目の席の女性……ベニコさん?が少し大きめの声で話し始めた。僕ら側からは透けて見えない様なフィルターがかかっているウインドウを開き、スラスラと読み上げていった。 

 ウミさんを見れば、彼女は目をつむり、楽しそうにその条件を聞いている。時折片目を開けて僕に挑戦的な視線を送ってきた。

 スターチャートの条件ってのがこれだ。

1 レースは龍が浜ブリッジ(全長1200メートル)で行う。

2 両チームとも3台ずつエントリーし、それぞれがリレー形式でレースをする。

3 決着はどちらのアンカーが先にゴールしたかとする。

4 加速ブースターや変形システムなどは一切使用禁止。アイズの乗り込みも禁止である。

5 ただし、このレース専用のニトロブーストユニットのみ使用を認める。

6 また単純な体当たりなども使用可能

7 レース中に万が一橋の欄干を超え、コース外に出た場合は失格、そのチームは即時敗北となる。禁止機能の使用も同じく。

8 企画、放映、配信の権利は全てスターチャートに所属する。


 ミヤザキ氏は黙って聞いていたが、話が終わるとスキンヘッドに視線を移した。

 スキンヘッドは両手を緩く広げて「自分は構わないですよ?」と、今度は僕に視線を飛ばしてきた。そっちはどうなんだ?ということだろう。

 僕も「構いません」と即答した。そもそもがエンゼル兄弟との果し合いだけが目的で、それ以上の事は誰が管理しようが問題ないはずだ。

 言った後で隣のミュートを見ると、僕を少し寂しそうに見ながら一つだけ頷いてくれた。

「企画と配信……まぁつまりテレビ番組として流すのですが、エンターテイメントとしての部分もこちらの企画部が作成しております。企画書の言外の部分なのですが、皆さんの衣装やいわゆる罰ゲームなんかも企画されているみたいですので、そういう部分でもご納得頂きたい」

「問題ないね……たださぁ、こっちも一つ企画を出したいんだけどさぁ」

 スキンヘッドが僕を見ながらスメラギさん呼びかける。

「ウチらにもそちらにも美女が揃ってんだし、とびっきりセクシーな衣装やら罰ゲームを用意して貰いたいんだよねぇ。ソレこそ露出度爆アゲのさ……」

 スキンヘッドは態とらしく舌舐めずりをしながら僕と、その隣にミュートにイヤラシイ視線を送ってきた。

「ソレをする理由がないで……」

「構わないわ!際どい水着だろうがコスプレだろうが。もちろんアンタたちからも人を出すんでしょ?」

「ミュート!キミもソレを着る事になるんだよ?」

「構わないわ!別に裸じゃないんだから!」

「……そちらの双方がOKでしたら、私共も問題ありません。まぁあくまで放送できる範囲で、と言うことになりますが」

「ひゅー!話しが分かるねぇ!コイツは録画しておかないとな……」

 盛り上がっているスキンヘッドを無視してミュートを見ると、彼女は腕を組みながらソッポを向いていた。

 はぁぁぁ……ミカとダグになんて言おう……

ここまで読んでいただいて有難うございます。


前シーズンのキャラクター、エンゼル兄弟とウミさんが再登場です。


今回はエンゼル兄弟兄弟としっかり絡みがあるので、キャラクターの骨子を今後も書けたら良いなと思っております。


今後の励みのために、高評価ブックマークもお願い致します。コメントも是非お願いします。


ではではまた来週お会い致しましょう!

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