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Fゲーム2nd  作者: 塚波ヒロシ
25/26

第25章 DOG FIGHT

こんばんは こんにちは おはようございます。


第25章が出来上がりました。


よかったー、思ったよりは早くにUPできたかな!


 龍が浜の海の家の前の砂浜には、今回の争奪戦に参加する全員が集まっていた。

 まずはウミさんたちスターチャート社の戦闘チーム、スレイプニールの5人だ。

 彼女たちは全員がツナギのパイロットスーツを着ていた。

 流石に上半身はファスナーを開けていたが、それでも随分暑そうだ。

 対して、コチラのチームメイトは随分とラフな格好である。

 僕やダグ、ヤヨイさんは短パンTシャツだし、ミカやミュートに至ってはしっかり水着スタイルだ。

 唯一、エンゼル兄弟の兄貴、シロエはいつものバーテンダースタイルで、これまた暑そう。

 クロエはいつものパーカーと短パンである

「さてと、今更だがルールの確認といこう」

 審判役のミヤザキ氏が、向かい合う両チームの間に進み出た。

 アイズであるミヤザキ氏には、審判になってもらった。

 彼はこの龍が浜のバトルフィールド管理プログラムに接続してもらい、今から行われる全戦闘の監視と管理を行なってもらう事になった。

 スレイプニール側からも審判役が用意されているが、彼らの本拠地の空母に座したままでのアクセスなので、この挨拶の場には姿を現せないとの事だ。

「今回の対戦は、5対5のチームバトルとなる」

 僕たちは、チームブレイバーとエンゼル兄弟、そしてヤヨイさんが加わっての5人となる。ミュートにミカはあくまでサポート役だ。

 アイズがいる分有利かと思われるがそうでも無い。

 相手も空母内にアイズを配しているだろうし、もしかすると各機体にサポートAIが搭載されいるかもしれない。

 実際、エンゼル兄弟たちの機体にもサポートAIが搭載されているぐらいだ、大企業のスターチャートがそれぐらいの準備はしているだろう。

「勝敗は、各チームのリーダー機の撃墜だ。それ以外のメンバーは、撃墜されてもペナルティ無しでリスポーン出来るぞ」

 リスポーン……つまり撃墜されても復活可能と言う事だ。

「リスポーンには120秒かかるし、復活場所はそれぞれのスタート地点となる」

 スタート地点だけど、僕らのチームはこの浜辺だ。

 飛行能力が殆どないエンゼル兄弟のティンガーロボ2体を抱えるウチとしては、陸地なのがありがたい。

 対してスレイプニールは、例の空母イスカンダルをスタート地点としている。

 この浜辺から沖に200キロ離れた海域に停泊しているイスカンダルは、今回の対戦には参加していないため、そこから浜辺に近づく事は禁止とされている。

 もちろん、攻撃や援護をする事も反則扱いだ。ただただ洋上のリスポーン地点としての役割しかできない。

「さてと……スレイプニール側のリーダーは?」

「私だ」

 チームスレイプニールのリーダー、スメラギさんが一歩前に出た。

 彼女は黒いストライプの入った純白のパイロットスーツに身を包んでいる。他のメンバーと違い、はだけずに着込んでいながらも、汗ひとつかいていない。

「うちのリーダーは、ヤヨイさんが務めるぞ」

 ダグの言葉に従って、ヤヨイさんも一歩前に出て、スメラギさんと向かい合う形となった。

「「良いバトルを……」」

 互いに握手を交わし。みんなもそれに倣った。

 僕の正面には……ウミさんだ!

「エヘヘ!やっとロムくんとバトルができるね!」

「うん、僕も楽しみだよ!」

 僕よりずっと小さな手で、彼女は僕に負けないぐらい力強く握手をしてくれた。

 そして、彼女の顔には自信が溢れていた。

 スレイプニールのパイロット……にわか仕込みの僕らの空中戦闘が何処まで通用するか、少し不安がよぎる程の清々しい笑顔だ。


「さてと……」

 僕らのチームのマシーンたちは、ヤヨイさんの機体を除いて全て砂浜に出現させた。

 僕のレッドドラゴン、ダグのファイヤーマシーンズ、そして2体のティンダーロボたちだ。

 砂浜に立ち並ぶ鋼鉄の戦士たちを見上げて、ダグが一息付く。

「勝算が有るとすれば、ヤヨイさんのバンドランの火力と、粘り強さってとこだな」

 そう言うと、ダグは浜辺が続く先……僕たちの泊まっていたホテルの方を見遣った。

 ホテルの上空には、その建物よりも巨大な円盤型宇宙船が浮かんでいる。

 ヤヨイさんの戦力、バンドランだ。

 ヤヨイさんの機体は、先日僕らが必死に戦って手に入れた銀河龍バーン。そしてそれに付随する戦闘マシーンたちだ。

 全面がシルバーンの戦闘服の様に、銀の鏡の様に光り輝く円盤型宇宙船「宇宙船ドラン号」

 そのドラン号に格納されている、真紅の空飛ぶサイドカー「サイバード」

 万能戦車「バクシンオー」は、飛行も可能だ。

 そして、それらを自由自在に操り、単体でも僕のレッドドラゴンに匹敵する攻撃力を持つ戦闘服「シルバーン」

 これら全てをまとめて、バンドラン攻撃群となっているんだ。

 撃墜されると敗北となるユニット、シルバーンを倒すためには、ウミさんたちはこれらの守りを掻い潜らないといけない。

 そう考えると、中々にエグい手を使ったのだと思う。

「だからって、守り続けたら勝ちってわけじゃないですよ」

 ミカがダグの隣に並び、ダグの顔を一瞥する。

「対戦なんだぜ?攻めてナンボだろ?」

「絶対に勝たないと……浜が取られてしまう」

 エンゼル兄弟も、白と黒のティンガーロボを見上げる。

「ロムの機体が攻撃の中心になるんだから。油断しないでね」

 ミュートはそう言うと、僕の左腕を抱き抱えながら隣に立ち、僕と同じくレッドドラゴンを見つめた。

 陸地側からの太陽に照らされ、ギラギラと輝くレッドドラゴンは、今にも大空へ羽ばたこうとしている様に見える。

 鋼鉄の装甲がその身を包んでいても、その奥にある野性や凶暴性が滲み出ている様にも見えた。

「うん……やってやるさ……」

 そしてその凶暴性は、操縦者である僕自身から出ているのかもしれない。

 何故って……?

 浜をかけた戦い以前に、僕はこの空中でのバトルが震える程楽しいバトルに思えて、しょうがないんだ!


 戦闘開始のブザーがなり、僕の視界にはでっかい「スタート」の文字が映し出された。

 ドラゴン形態の僕は、表示と当時に翼を大きく羽ばたかせて垂直上昇をする。

 背中にはドラム缶状に変形したクロエのティンガーロボがマウントされていて、ミュートはすでにニャンルーのアバターに姿を変え、人間で言うところのうなじの辺りに拵えた座席に座っているはずだ。

 2人の様子は、僕の視界に映る右下の小さな画面で確認できる。ミュートとクロエの表情には緊張が見られた。

「200キロだと、マッハ1で飛んできても10分でここまで来るね」

 クロエがそう言うと、バトルフィールドの俯瞰図が表示されて、同時に5本の矢印が上から下に伸びていく。

「戦闘機だと考えると、マッハ2ぐらいは出せると思ってもいいわね」

 ミュートの言葉に、矢印が再度描かれる。さっきよりも伸びるスピードが早く、伸び切ったと同時に5分と表示された。

「どう考えても、まずはスレイプニールに攻め込まれるわ。私たちはまず迎撃する形から始めるわよ」

 すでに水平飛行をしているレッドドラゴンの背は、向かい風が吹き荒んでいる。

 ミュートはニャンルーのアバターに、バイクのライダーの様なスキンを重ねている。

 緑色のヘルメットとゴーグルを装備したニャンルーは、強風に全身の体毛をバタバタさせながらも、しっかり前を見据えている。

 そのミュートが、右手でひさしを作り水平線を睨む。

「来たわよ。1時に2機……11時にも2機よ!」

「レーダーにも映ったよ……これはミサイルだ!」

 レーダーが誰よりも広いティンガーロボが真っ先にミサイルを感知する。

 遅れて僕の視界にも、鉤括弧みたいな記号が1、2……合計8個、水平線の少し上にパパっと現れ、ぐんぐんと大きくなり続ける。

 8本のミサイルが高速で僕らに近づいているのを意味しているのだ!

「ロム、ドラゴンブレスで薙ぎ払って!」

「分かった!」

 ミュートの指示に従い僕は大きく吸い込んだ息を、長く続く様に吐き出した。

 まるで冬の日、手を温めるために息を吹きかける様な感じでやるのがコツだ。

 喉の奥に熱を感じ、それを吐き出しながら首を横にゆっくり振る。

 するとどうだ、僕の吐き出した炎は帯状に伸び、それを首の動きで右から左へ綺麗に薙いだ。

 8本のミサイルは、僕の吐き出した炎の帯に絡め取られ、見事に全部が空中で爆散した!

 スレイプニールの先制攻撃を、上手い事不発に終わらせる事は出来たみたいだ。

「敵機は……そのまま突っ込んでくるよ!」

 クロエの警告と同時に、目の前に横たわった黒煙の帯が鋭く伸びてきた。

 針のように伸びた黒煙の先の煙が晴れると、ギラリと陽光を反射する純白の機体が現れた。

 間違いない、スレイプニールの戦闘機ワルキューレだ!

 僕を中心に、左右それぞれに1機ずつ。

 2機の機体は、僕を避けるようにさらに左右に距離を開けると、何とそのまま僕の後ろに飛び去ろうとした。

「ダメよロム、突破させるわ!」

 左右に首を振りミュートが叫ぶ。

「させない!」

「ロム!まだ居るよ!」

 クロエの指摘と同時に、僕は左右の腕……いや翼に鋭い痛みを感じた。

 見れば、さっきの黒煙を上下に避けながら更に2機の戦闘機が機銃を撃ち接近していた。

 狙い違わず、戦闘機の下部から発射された弾丸は、それぞれが僕の左右の翼を攻撃し続ける。

「やってくれる!」

 堪らず後方に逃げるも、連射される弾丸の雨は僕を執拗に追い続ける。

 これじゃ埒が開かない!

 僕は思い切って、上からきた機体に真正面っから突っ込んだ。

 多少の距離があるとはいえ、全く回避行動もせずに機銃を撃ち続けるワルキューレの一機。

 流石、有名な部隊の一員だ。

 お互いに回避はしない。僕も機銃攻撃の痛みに耐えながら口を大きく開く。

 これには相手も警戒したのだろう、少しだけ機体が揺らぎ機銃が外れ始めた。

 それでもお互いの進路は変わらない。衝突コースだ!

「我慢比べだ、ワルキューレ!」

 僕は小さめの火球を出すも、相手もギリギリのところで回避する。

 衝突こそ避けるも、僕たちは高速で背中合わせに交差することになった。

「ところが、コイツは竜なんだよ!」

 そう言うと、僕は尾てい骨あたりに力を込め、力一杯お尻を跳ね上げた!

 そう、僕は竜だ。翼を持ち……尻尾もある!

 相手は驚いた事だろう。高速で飛んでいる目の前に、大樹のような龍の尻尾が振り下ろされてきたんだから!

 尻尾に強い衝撃と、大きな爆発音。それを壁になるものが何もない状態で体感したミュートが悲鳴を上げる。

「にゃーーーーーーー!」

 まぁ、今のミュートにはダメージを受けるボディーがないので大丈夫なのは知っているけど……後で謝っておこう。

 一機撃墜……と一息つくところだけど。

「下からの戦闘機が、浜辺に向かったよ!」

 クロエの警告が、僕をハッとさせる。

 ワルキューレ3機の波状攻撃には、流石のダグ達もいつまで持つか⁈

 そう思った瞬間には僕は、浜に向かい羽ばたき始めていた。

 さっきの下から遅れて攻撃してきた機体は見えているのだけど、翼のダメージが今になって効いてきた。

 痛みもそうだし、何より飛行スピードが出ない!

 このままじゃ、僕が浜辺に着く頃には一面火の海になっているだろう。

「ロム、アレをやろう!」

 背中の上からクロエが話しかけてきた。

「あの3機目だけでも落とさないと、数の面でも不利になっちゃうよ!」

 そう言うと、クロエはドラム缶状態のまま僕の背中から離れ、ジェット噴射で空中に飛び出した。

 少しだけ前に出たクロエのティンガーロボは、そこで噴射を切り一気に距離を詰める。

 意図を察した僕は、そのティンガーロボを大きな顎で咥える。

 側から見れば、レッドドラゴンがティンガーロボを丸呑みしようとしているように見えるかもしれない。

「いくぞ、クロエ!」

「お手柔らか……ううん、全力でお願い!」

 そう言うクロエのティンガーロボのお尻に、僕は肺活量目一杯の炎を吹き出した!

 まるで吐き出されたマシュマロのように、クロエのティンガーロボは出鱈目な回転をして、一直線に3機目のワルキューレに迫って行った。

 そしてその先の浜辺では、火柱が上がり始めたのが見えた。

 

って事で、やっとこさバトルシーンに入りました!


燃える空戦になればいいなぁ!

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