第21章 炎の逆転ファイター
こんばんは こんにちは
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
お待たせしました、2023一発目の投稿です。
今年もよろしくお願いします!
第21章 炎の逆転ファイター
「確かに、さっきの電撃の落着地点には影ができるにゃ。その影が地面に見えた1.5秒後に電撃が地面に落ちてくるにゃ!」
「それにこの電撃は、バーンの周辺の上空には来ないみたいです。電撃のモーション中にバーンに空中から近づけば、電撃の攻撃を受けることはありませんね」
「ただよぉ、だからって攻撃を避けるだけじゃバーンに勝ったことにはならないんじゃないか?」
「……もしかすると……もう一つのキーワードが関係あるのかも知れないわ……」
「なんです、ヤヨイさん!そのもう一つのキーワードって!」
「『愛とは躊躇わない事だ』ってキーワードよ。タワーの入り口で入力したキーワードに対になっているみたいね!」
「この戦闘中のどこかで使うんだろうが、そんなタイミングなんてあったか?」
ミュートとミカを中心に戦闘データを解析し、その答えが出る間も一向に止まないバーンからの攻撃を僕たちは必死で回避していた。
今現在アイズの二人に加え、シロエとクロエの使っている簡易アイズのメモリーもバーンの戦闘パターンの解析に回しているため、僕らパイロット達はサポートもなく自力で回避をし続けた。
これの何がしんどいかって、思った以上に身体が重く感じるのと、視界外からの攻撃には実際に首を振り、耳を澄まし、目を凝らして注意し続けなければならないのだ。
それでもバーンからの全ての攻撃を完全に回避するのは余りに難しい。避けたつもりでも、バーンの尾や火球が僕らの体を掠めて傷付けてゆく事が何回かあった。
致命傷こそ避けれてはいるけど、体力的にも精神力的にもジリ貧なのは間違いなかった。
「コイツは……時間の問題だな、ロム……」
さっきよりも細かな傷と焦げ跡が増えたダグのフレイムダガーが僕に振り返りながら、苦々しい表情でそう言った。苦しそうながらも、なんか半笑いで僕の方を見たままだ。
なんだか嫌な予感がする。いつもリーダー然とし、僕たちを励ますダグが弱音を吐く時は殆どないし、あるとすれば……。
「ミカ!奥の手を使いぞ!」
「でも、今のエネルギーの蓄積量じゃバーンを倒すどころか、せいぜい数秒の足止めぐらいしか出来ないわよ!」
「構わん!どの道このままじゃ状況に変わりがない!バーンを一回でも追い込んで、ヤツの行動に変化が出ればそれでいい!」
「でも!変化が無かったら……」
「だったらそれまでだ!そもそも俺たちに勝てる相手じゃ無かったって事だ!」
「ダグ!」と、彼ら2人の会話をこれ以上進ませないように僕が叫ぶが、そんな事ではダグの覚悟を崩す事はできなかった。
「今の状態の俺だと、奥の手を使った後は動けなくなるだろう。後は頼んだぞ、エース!」
ダグが僕らを振り返りもせずに一歩踏み出した。
「……わかった。頼んだ、リーダー!」
ダグの言っていることはもっともだ。もう反論したところで無駄に時間を費やすだけだ。ならばいっそ一か八かに賭けるしかないのか。
「了解だ!ミカ、やるぞ!」
そんな僕の不安や焦りを吹き飛ばすかのように、ダグは少し嬉しそうにミカに命令する。覚悟を決めたと言うよりは、その奥に手やらを僕達に自慢げに披露したくてしょうがないんじゃ無いかとさえ思えてきた。
「了解!コード『炎神合体』発動します!」
「よっしゃ!『炎神合体』!!」
フレイムダガーがパトカーモードになり、パンクした前輪をものともせず巨大な竜に向かって疾走する。パトランプが力強く発光すると、その光に導かれるように巨大なシルエットがどこからともなく現れた!
それはフレイムダガーの何倍もの大きさの、純白の翼を備えたジャンボジェット機だ。ずんぐりしたボディーに大きな一対の翼、翼には馬鹿でかいジェットエンジンが左右に二発ずつ。機体後部には大きな輸送コンテナが左右に張り出すようについている。
フレイムダガーを空中から覆うようにして飛んできた謎のジャンボジェットは、その左右のコンテナを空中で展開する。その中から飛び出したのは、僕たちがこの龍が浜に来た初日に使用した救急車と消防車だ!
2台の緊急車両は地面に荒っぽく着地すると、フレイムダガーと並走する。合計3台の緊急車両は眩い赤色灯を回転させ、けたたましくサイレンをかき鳴らす!まるでバーンを威嚇する騎馬隊かのようにも見えた。
変わってジャンボジェットはそこから垂直に飛び上がり、バーンに腹を見せる格好となった。
ジェットエンジンから排出された気流が地面へと吹きつけ、その反動で巨大なジャンボジェットが、風船のように空中に静止する。
するとどうだ!ジャンボジェットの機体の至る所から真っ赤な線が……いや、炎が吹き出し始めた。
それはジャンボジェットの全身を切り刻むように這い回ったかと思うと、装甲が割れ、その姿が壊れた玩具のように崩れてゆく。
いや違う!天を向いていた機首は左右に割れ、地面と水平に固定された。機体後部の格納庫はスライドし、さらに地面方向に鋭く伸びた。機種の上には翼から回り込んできた四発にジェットエンジンがのし掛かる。コイツは……
「変形するってのか……」
シロエが天を見上げながらダグの新たな姿を見て茫然とする。
『合身!』
フレイムダガーが瞬間的にロボットボードに変形し、並走していた救急車と消防車を伴って垂直に飛び上がる。3台のジャンプ用スラスターは、姿の変わったジャンボジェットと同様に真っ赤な炎を吹き出す力強いものとなっていた。
ここまで来て僕達にも何が起きているのかようやく分かってきた。
救急車と消防車は、ジャンボジェットのから伸びたアームにそのバックハッチを接続させると、シャーシの下から巨大な鉄の塊……いや左右の握り拳を伸ばし、力強く握り締める。
ジャンボジェットの機体下部は……いや真っ赤な猛禽類の顔をデザインした胸部が前方に張り出すと、またもパトカーモードに変形したフレイムダガーをマジックアームを使って内部に固定し収納する。
胸部が元に戻ると同時に、その中から巨大な猛禽類……いや鎧武者のような頭部が迫り上がってきた。
全身を駆け回っていた炎の筋を断ち切るように巨大な腕を振り回すダグの新たな姿は、まさにスーパーロボットそのものだ。
『完成!カイザーフレイムダガー!!』
ダグとミカの一糸乱れぬ名乗りに、さしもの銀河竜バーンもその攻撃の手を止め、たじろいた様だ。
「データ照合……そんな……あのロボット……」
声だけしか伝わってこないが、ミュートが呟くと僕の視界にダグの新型ロボットのデータが表示された。
ダグの新たな姿をただ睨みつけるだけのバーン。攻撃の手が休まった為に、僕は表示されたデータを間違いなく見ることができた。
「〈勇者クラス〉……あれこそが勇者ロボなのか……」
データに表示された〈勇者〉の文字列に、僕は驚きを隠せなかった。
世界的に見てもトップレベルの情報で、しかもそれが親友の姿であることに!
純白の翼に真紅のボディー、身体各所に施された猛禽類の……いやあれは炎の鳥、フェニックスのエンブレム。〈勇者〉の称号に相応しい、まさにヒーローの姿だ。
「ミカ、フルパワーで行くぞ!」
「了解!ただし出力は70%も出せないわ!」
「構わん!絶対に当てるぞ!」
「了解!」
新たな姿カイザーフレイムダガーは、以前と異なり顔にマスクの様な装甲が付いているため口の動きがわからない。その代わり、両目に当たるカメラが会話のたびにチカチカと点滅する仕様らしい。
二人だけの会話が終わったと同時に、迎え撃つバーンも準備が整ったらしい。全身を高く持ち上げ、ハサミの様な大きな口を上下に開く。その奥の喉元では真っ赤を通り越して白い光が目を背けたくなるぐらい眩く鋭く光り始める。今まで見たことがないパワーと殺気が僕たちの全身を震えさせる。
『フレイムトルネード!』
カイザーの肩に担がれた四発のジェットエンジンが文字通り炎の竜巻を吐き出した!
うねりながら発射された4本の竜巻は水平に伸び、バーンの手前で一本の、さらに巨大な竜巻に合体した。もうそれは竜巻というには大きすぎる。
炎をまとっているため、その姿と鋭さがハッキリと見えるその巨大竜巻はカイザーとバーンを覆いつくし、二体を結びつける風と炎のトンネルに姿を変えていた。
『フレイムソード‼』
右の前腕に姿を変えている消防車の梯子がこぶし側に展開すると同時に、全体が折り紙のように折り重なり、しかもどんどん伸びてゆく。その姿は銀色に輝く刀身へと変形した。
カイザーは、刀身が手首から生えた右腕をバーンに突き出し、残った左手を右手に添える。
『必殺…』
カイザーの両目がギラリと光った瞬間、肩に乗っている四発のジェットエンジンが文字通り火を噴いた。両の脹脛と足の裏にもスラスターが展開され、それらも一斉に火を噴いた!
右手から突き出された刀身を構え、カイザーの巨体が弾丸のように飛び出す!横から見たその姿は、炎をまとった巨大な一振りの剣のようだ。
『カイザー!フレイム!エーンド‼』
狙い違わず強烈な突き攻撃が、銀河竜バーンの喉元に突き刺さった!攻撃が当たった瞬間、カイザーの纏っていた炎が一際輝きを増し、太陽のように眩しく輝いた。
見ていただけの僕たちにすら、激突時の衝撃波を感じるほどの攻撃だ。変形できず転がっていたクロエのティンガーロボが空き缶のように地面を転がる。
「やったか…」
シロエが手で覆いながらも、その閃光の先にあるバーンの傷ついた姿を確かめようとした。
「いいや…まだだな…」
僕たちの期待は、今さっき最大規模の攻撃を放ったダグ本人に否定されてしまった。
閃光と衝撃波の強風が晴れた先には、全身から煙と、時折火花を放つ膝をついたサイザーフレイムダガーの、ピクリとも動かない傷だらけの姿と、銀河竜バーンの怪しく光る真っ赤な両目の放つ光だった。
「ダメだったのか…」
僕は思わず弱気なことを口にしてしまった。
「おいおい…諦めんじゃねーよ…」
それを否定したのもダグだった。いつだってそうだ。僕が弱気になると真っ先にダグが窘めてくれる。
「あれを見てみな…」
しゃべるのもやっとなのだろう、カイザーはピクリとも動かないが両目のカメラを通してバーンの顔面がズームアップされる。
大きな口をパックリと開け、もう動くことができないカイザーを必死に威嚇しているようだ。大きなそのあごの下にはカイザーの必殺剣で大きく黒焦げており、その装甲には深く鋭い穴が開いていた。
だが、ダグが本当に見せたかったのはその穴ではなかったようだ。ズームはあごの下ではなく、大きく開いた口の中への焦点を合わせていった。
「あれは…シルバーン…‼」
同じく映像を受け取っていたヤヨイさんが真っ先に反応した。
そう、今まで火球の発射口となっていたバーンの口の中の喉の奥にシルバーンが立っていたのだ!
喉の暗がりの中、ギラギラと輝くシルバーのメタルボディーは、ヒーローの姿というよりは巨竜を操る悪の騎士のようだ。
「なんとか…変化を起こせた…ようだぜ…」
苦しそうながらも達成感に満ちたダグの通信がぶつりと切れると当時に、バーンが大きく嘶いた。その全身の装甲のつなぎ目からシルバーンと同じような銀の光が膨れ上がり、それは全身を覆うほどになった。
「とんでもないエネルギー反応にゃ…。おそらくバーンの最大最終の攻撃が来るにゃ!」
ミュートの声は震えていた。僕たちも彼女に言われるまでもなくそれを感じ取っていた。
「愛ってなんだ…。躊躇わないことさ…」
ヤヨイさんがポツリと例の謎の言葉をつぶやいていた…。
やっとこさ投稿できました。
なかなかどうして筆が進まなくて申し訳ないです。
やっとダグの本当の姿、ファイヤダグ○ンじゃなくて
カイザーを登場させることが出来ました!
いやねミニプラ の出来が本当に良くって!




