第2章 夏の日の21XX
こんばんは こんにちは おはようございます!
今週もまた投稿致しますよ!
前回お伝えした通り、新作「Rゲーム」と、この前
完結できた「Fゲーム」の続編の、読者数が多かった方の続きを書くということでした。
集計数を見たところ、僅差ですが続編「Fゲーム2nd」の数値が上回っておりました。
ということで、今回以降「Fゲーム2nd」の連載を
再開したいと思います。
ただなにぶん書き溜めが少ないので、1章ごとの投稿になりそうです。調子が良かったら2章投稿もあるかもしれませんが。
新作「Rゲーム」は不定期投稿か、一区切りついてからの投稿になる予定です。
第2章 夏の日の21XX
「うわぁ、本当に青いんだな……」
僕の隣でダグが素直な感想を呟いた。
荷物を両脇に抱えた僕とダグは、それらを下ろすことも忘れて、真っ白な砂浜の先に広がる青い海に目を奪われていた。
どこまでも続く海原は空の色と同じで、どこからが空でどこまでが海なのか境界線が曖昧で、まるで見ている全てが淡い青の絨毯が天の先まで延びている。
頭上からは突き刺す光をコレでもかと吐き出している太陽が、僕たち二人を押し潰そうとその巨体を誇らしげに輝かせている。
「初めて来たんだけど、海って凄いなぁ」
僕のささやかな語彙力では伝えきれない圧倒的な光景が津波の様に押し寄せて来た。たかが海を見るだけでここまで心を揺さぶられるとは思っても見なかった。
「とりあえず準備しようぜ。2人が来ちまうぞ」
「了解だ」
我に帰った僕とダグは、太陽の日差しに体を灼かれながらビーチに荷物をやっと下ろし始めた。
「お待たせしましたー」
移動に使ったダグの救急車の奥からミカの声が聞こえた。
僕たちはパラソルにシート、ベンチに飲み物など既に準備を終え、ダグに至ってはハシゴ消防車を呼び出し、救急車との間に大きなシートを貼り、簡易的なテントの様にしてしまった。
「わぁ、屋根まで作ったのね!コレで日焼け対策もバッチリじゃない!」
顔を覗かせたミュートが感心する声を上げる。
うちのチームの美女2人に日焼けさすまいと、ダグが考案した簡易テントが功を奏したのだ。
僕は僕でダグに頼まれて、「ある装置」を用意しておいたんだけど、まさにそれを使う時が今だとダグとアイコンタクトを取った!
「第一回 チームブレイバー 水着クィーン決定セーーーん!」
「ドンドンドン パフパフー」
ダグと僕があげた嬌声に、丁度救急車の蔭からこちらに出てきたミカとミュートがドキリとして歩みを止める。彼女たちの目には僕ら2人がどんな風に映っていただろう……。
先ずは我々の服装から説明せねばなるまい。
我らが頭領にしてこのセレモニーの主催者、タクミ-アサヒ氏であるが、ふわりとした白髪、同じく白い髭を鼻元にたくわえている。上品なベッコウの眼鏡は、その奥に潜めた鋭い鑑定眼が外に漏れることを防いでおり、一瞥しただけではその猛禽類の様な眼光に気付く女性は居ないであろう。
頭髪や髭に合わせたのであろう、白に近いアイボリーの三つ揃えに黒の蝶ネクタイ。まさに紳士たる者のその姿は、いつフライドチキン屋の軒先に招待されてもおかしくない程である。
かく言うわたくし、ヒロム-アラシヤマも気品という面では負けては居ないはずだ。
鮮やかな薔薇を思わせるアフロヘアーに口紅と目元のメイク。そしてそれらを際立たせるための、敢えての顔全体に施した純白のファンデーション。サンイエローのオーバーオールとそこから出される紅白縞のシャツ……。
ピエロと言うことなかれ、コレこそは全ての人々を分け隔て無く迎える、かの有名な人物なのだ。いつでもハンバーガーショップに馳せ参じる心構えの表れなのである。
「最初の方、どうぞ……」
ダグが、いや今は「大佐」と呼ぶべきだろう彼は、彼女たちがしかめっ面だけを覗かしている救急車の陰に向かって、優しくも威厳のあるバリトンで彼女たちの呼びかけた。
「何アレ……何なのよアレ……」
「分かりませんよ……そもそもあの格好……」
「ミカの事呼んでるんじゃない……?」
「えぇ〜⁉︎私が最初なんですか?」
おやおや、どうやら大佐の貫禄に脚がすくんだのか、彼女たちは我々に前に立つ事を躊躇している様だ。
ほんの暫くして最初の女性が、モジモジしながら現れた。
我々は、彼女たちの審査を厳正に行う為に、事細かなチェックシートとメモをつける為にレジャーシートの上に横長の座卓を用意したのだが、彼女はその2mほど先の台の上に登った。
我が家にあったみかん箱をサテンで包んだだけの簡易的なものだが、彼女程度の体重ならば十二分に支えてくれているはずだ。
「ミカ、がんばって!」
二番手の女性から小声で声援が飛ぶ。それに意を決したのだろう、台の上の女性は少し落ち着いた様だ。仲間と励まし合うのはとても良い事だ。
「まずはお名前とスリーサイズを……」
私はタイミングを見計らって、できるだけ優しい声で彼女に問いかけた。
「ミ……ミカ-アマノです。う、上から99 55 88です」
「ほう……全てゾロ目なんだね……」
「素晴らしい。確か古い言葉で『フジコちゃんサイズ』と言うんでは、大佐?」
「確かに。コレは『フジコちゃん』ですな」
「何か得意な事はありますか?」
「いつもしているので、家事全般は……。あとメカニックを少々……」
「ほうほう。家庭的であり、それでいて力仕事も出来る」
「素晴らしいですね。さて、本日の水着ですがチョイスした理由はありますかな?」
我々はミカくんの着ている水着……黒のハイレグビキニ……について、いよいよ質問の矛先を向けた。
「えっと……ダグ……私の彼氏が黒のビキニにして欲しいって言っていて……」
「大佐!まさか貴方の差し金ですか……」
「いやいや待ちたまえ。私が言ったのは『黒のビキニ』までだよ。あんな今にも体が溢れ出しそうなほどの布面積の少なさまでは要求してはいないさ。あのハイレグこそ正に彼女のエロさ……もとい我々を楽しませようとする奉仕の心の表れなのだよ」
「なるほど……奉仕の心……確かに」
私は大佐の隙のない言い訳……もとい熱い鑑定に、自分の心も狭量を恥いった。
「さて最後に君、最も自信のあるセクシーなポーズをとってくれ……」
「……え?……」
「わかりやすく言おうか?エロいポーズをとってくれたまえ」
「……このカメラに向けて、だ!」
大佐の眼鏡が太陽光を反射してギラリと光った。そして私に持つカメラのレンズもそれは同じだった。
「……そ、それでは……こういうのでどうですか……」
ミカはおずおずとポーズを取り始める。膝立ちになり、両手で後ろ髪をかきあげる。
背景になった海面がギラギラと反射し、ミカの少し汗ばんだ素肌を艶かしく輝かせる。
「エロい……エロいですよ!」
大佐のカメラのシャッター音がさっきから鳴り止まない。当然だ!ミカの怪しくうねった肢体に我々の視線は釘付けになっていた。
「ふぅ……素晴らしいパフォーマンスでした。10点です」
先程トイレから帰ってきた大佐が、自身のディスプレイに『10』を表示させる。満点である。
「私も、もちろん10点です」と、大佐の採点に横並びにして自分の採点ディスプレイを表示した。
「良いのかね?次の方が未だパフォーマンスをしていないのに我々2人とも満点を出してしまって……」
「私は……彼女の可能性を信じたいと思います……」
「うむ……。君が言うのならそうするとしよう」
「エントリーナンバー2番、ミュート-ラスルグです」
「元気があってよろしい。スリーサイズをどうぞ」
「上から90 54 81よ」
「『フジコちゃん』では無いが、素晴らしいサイズだ」
「着ているブルーの水着もよく似合ってますね。そちらを選んだ理由はありますか?」
「だってロムが……コホン、私の彼氏の好みです。正直、こんなに面積の少ないのはどうかと思ったんですが、彼のたっての希望で……」
大佐の羨ましそうな視線が私に突き刺さるにだが、それを無視して質問を続ける事とした。
「えぇっと……ではパフォーマンスをお願いします……」
「わかりました……」
そう言うとミュートは何やらキーボードを中空に出現させ、コマンドを打ち込んでいる。
ここは通常空間とは違い、アバターの変更や環境デザインの変更が個人レベルで可能なバトルステージなので、ミュートはそれを操作しているように見える。
10秒もせずにミュートのコマンドが完成し、その瞬間、我々の視界は全てブルー一色に覆い隠された。
「なんと、コレではパフォーマンスが全く見えないぞ」
「どう言うことかね、ミュートさん!」
大佐も私もブルーのスクリーンに阻まれて姿の見えないミュートを非難する。
が、それは直ぐに間違いだと分かった。
「ウフ、コレでどうかしら?」
ミュートの誘う様な囁きに伴い、目の前のブルーの視界の所々に、大小幾つもの、丸い穴が開き始めた。
その穴を通して色々モデルの様にポーズを取るミュート。我々が見るその姿は……
「ま、まるでスッポンポンじゃないか!」
「ミュート!脱いでないんだよな!なんとハレンチな……いやなんと素晴らしい……!」
視覚の補正……。あるパターンの図形などを見た時に、人間の脳は「本当のそれとは全く違う物」として認識してしまう。
ただの格子状の図形の中に、存在しないはずの円が見えたり、同一直線上に並んでいるはずの方形が上下にずれて見えてしまったり……。
今回のパターンもそうだ。ミュートの水着だけ隠れるように虫食い状に広がったフィルターを通して見る彼女の姿は、我々には完全な裸体として認識されてしまう。本当はそこに水着があるのに!
なんとエロい……いや素晴らしいパフォーマンスなんだろうか!コレはまさに脳科学と生理学の融合である!
私は自然と涙と鼻血を垂らしてしまった。それを拭うことも忘れ彼女を見入っていると、ふと大佐が隣にいる事を思い出した。
涙にぼやける視線を彼にやると、彼も私と全く同じく、感涙に咽び、鼻腔から流血していた。
我々はどちらともなく頷き合い、その鼻血でそっと「10」のとなりに真っ赤な「0」を書き足していたのだった……。
ここまで読んでいただいて、誠に有難うございます!
今回は思いついちゃったため書いてみたくてしょうがなくなったギャグパートです。頭が悪い回です。
くすりとでも笑ってもらえたなら幸いです。
週末の一服になれば嬉しいです。
面白いと思っていただけたら、是非高評価ブックマークよろしくお願いいたします。
コメントもお待ちしております。
ではではまた来週までお待ちくださいね!




