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Fゲーム2nd  作者: 塚波ヒロシ
19/26

第19章 チェックメイト組曲

こんばんはこんにちは、それともおはようございます?

こんな時間にやっとこさ第19章を投稿いたします。

一応今週分ってコトで許してー!

第19章 チェックメイト組曲


 スーパーロボット……。

 Fゲーム内のレース、バトルステージに参加するプレイヤー達が私財を使い果たしてでも入手したい搭乗ユニットの筆頭だ。

 大きさや重さはまちまちで、小さなものなら自動車と同じぐらい。大きなものだと、僕が知っているものだと数十メートルにもなる。

 姿形も多種多様だ。全身鎧の騎士の姿の様なものやドラム缶に手足が生えた様な姿のもの、動物をモチーフにしたもの、頭部が二つもあるものなど、様々だ。

 Fゲームに登場するロボットは主に二種類に分けられる。

 一つはこの惑星移民船サジタリウスの中でカーボン達が作ったアニメ作品や映画、コミックなどに登場したロボット達だ。

 現在進行形で設定や映像作品が作られている。もちろん玩具やフィギアも新製品が続々販売されている。モノによっては「Fゲームに無料でエントリーできますよ」なんて物もある。

 バージョンアップこそ頻繁に行われるので、追加された設定を追うだけでも十分楽しいんだけど、残念な事に総じて弱い。

 強大な兵器を積んでいる設定だとしても、みんなが入手しやすく、ゲームに出しやすいため「ビギナー」がよく使っているため弱点も調べればすぐにわかる。つまりカモにされやすいんだ。この前見た映像では、たった一機のライオン型ロボットに五機の最新ロボットが一瞬で蹂躙されていた。

 じゃぁ皆んなの憧れのロボットとはと言うと、それはサジタリウスが出港前に実際に地球時代に造られたロボット達になる。スーパーロボットという単語が出すのは本来はこちらとなる。

 サジタリウスが出航した西暦2020年代、ロボットの登場するアニメ作品ってのは「衰退していた」んだ。けれどもキャラクターグッズの市場は「むしろ活発」になっていた。

 当時のアニメファン達の年齢層は相当幅広かったらしく、子供や若者はもちろん、すでにその親の世代でも未だアニメ作品を追っかけ、グッズを購入する人が相当数いたらしい。

 そうするとおもちゃ業界としては、仕事が有り、金銭的にも余裕のあるその親世代向けの高額商品を多く市場に出して行った。

 子供の頃には高額で買って貰えなかった、昔大好きだったアニメのロボットが、当時に最新技術でアップデートされた完成品玩具やプラモデル、立体物として新発売され、しかもアニメでの設定通りに変形や合体、必殺技再現ギミックを搭載。販売価格もとてもじゃ無いけど子供が買える様な物ではなくなっていた。「ハイエイジトイ」なんて言われていたらしい。

 現代、僕たちFゲームのプレイヤー達が欲しいのは、そんな「ハイエイジトイ」のデータなんだ。

 パーツ差し替え無しの完全変形や合体、発光や音声での必殺技再現、豊富なオプションパーツ。

 説明書には、そのロボットの詳しい設定が丁寧に書かれていて、それらのデータを元にFゲーム内で戦闘できる様にデータを構築、「現実化」してゆく。

 もし、そのロボットが活躍するアニメ映像なんてものが手に入るとさらにデータ量が増えてゆく。当然、ゲームで使える様にするための金額もとんでもない事になる。人によっては文字通り私財を投げ打ってしまう事にもなる。

 ただゲームに勝つためだけに……?

 いや、そうじゃない。

 Fゲームのプレイヤーにはギャラが発生する人が多く居るんだ。

 僕たちみたいに大会に出て賞金を得るチームや、依頼者の代わりにバトルに出て、依頼料をもらう用心棒みたいな人達もいる。今回の龍が浜防衛戦もまさにそれだ。

 一番金銭的に裕福になると言われているのが、スポンサーが付いてくれる事だ。今回戦うスレイプニールがそうなる。

 スポーツ用品メーカーや玩具メーカーなんかチームに出資して、金銭やマネージメントのサポートをする。こうなってくるとゲームをしなくても給料という形で財布が潤うってわけだ。まぁその代わりやりたくもない仕事をしなくちゃいけないみたいだけど。

 話をスーパーロボットの説明に戻そうかな。

 Fゲームプレイヤー達は大きな大会には必ずと言っていいほど新型マシーンを用意してそれに臨むんだ。もちろん勝つために。

 肉弾戦の刀剣バトルゲームなら新しい武器、新しい鎧、新しい技。レースゲームならニューマシーンやさらなるチューンナップをする。

 スーパーロボットバトルともなると、毎回何機かは新型ロボットが戦場に現れ、皆んなの羨望の眼差しを受ける。

 ただ、皆んなが今までに見たことも聞いたこともないロボットが殆どなので、一見すると強いのか弱いのかが全くわからない。

 これに困ってしまったのが大会を運営する側だったんだ。

 大会としては白熱したバトルを放映したい。実力が拮抗したバトルの方が視聴率が取れると思っているんだけど、プロの解説者でも実際に戦ってもらわないことにはそれがわからないんだ。

 そこで考えたのが、スーパーロボットの実現化費用によるクラス分けって事になった。

 サジタリウス号にメインコンピューターはタイムラグがあるとはいえ、常に地球から発せられる電波を受信していて、民間人では持つことのできない膨大な地球文化のデータにアクセスすることが出来る。

 そのデータの少なさ、言い換えればレア度によって現実化するための金額が設定される。

 また、データが膨大に溢れている有名なロボットだったとしても、元のアニメでの強さや活躍ぶり、主人公機なのかやられメカなのか……などなどが数値化され、それを元にスーパーロボット達をクラス分けしていったんだ。

 大きな大会になると、視聴者が金銭をベットすることが出来る。いわゆる賭け試合が出来るんだ。もちろん参加するには年齢制限が有るけどね。

 そうなると、クラスが一つの目安なってくるってわけだ。


 スーパーロボットのクラスは、チェスのコマ名前を思い浮かべて貰うとわかりやすい。


〈ウォーリア〉〈ファイター〉

 一番下のクラスで、もっとも手に入りやすいロボットだ。まぁそれでも相当な金額が必要だけどね。

 アニメ劇中だと、登場するロボットが戦闘機や戦車の位置付けになっていて、何百機も生産されている事になっていることが多い。いわゆる兵器としてのロボットだ。昔のアニメだと「量産機」なんて言われているみたいだ。やられメカには違いないんだけど、そういうのに限って武器が豊富だったり、戦場を選ばなかったり、多少破損してもそのまま戦闘を続けることが出来たりする。

 Fゲーム内で有名なのは、今回戦うスレイプニールの操る「ワルキューレ」だね。

 元のアニメでは地球軍の主力可変型戦闘機という事になっている。地上も宇宙も戦闘機形態で飛行が可能で、挙げ句人型ロボットにまで変形し地表を兵士の様に歩く事さえできる。

 実際、大きな大会でも優勝経験がある機体で、現時点での〈ファイタークラス〉のトップとまで言われている。

 手に入り易さだけでいうなら、今すぐおもちゃ屋さんでプラモデルを一個買って、数万円かけて現実化してもいい。これでも立派な〈ファイタークラス〉のロボットだ。勝てる勝てないはキミ次第ってわけさ。

 ちなみに〈ファイター〉と〈ウォーリア〉に明確な違いはないみたい。元のアニメでの設定によって変わるらしいんだけどね。


〈ナイト〉

 騎士を意味するナイト。このクラスは前述のファイターやウォーリアの中でもレア度の高いロボットたちが集うクラスで、二番目に登録数が多いクラスとなる。

 僕のレッドブルとレッドドラゴンもこのクラスなんだ。

 戦闘力はウォーリアもファイターもナイトも同じくらいなんだけど、主に主人公やライバルの機体だったりと劇中での個体数が少ない機体がこのクラスになったりする。よく試作型とか実験機とか言われていて、中には劇中でたった一機しか作られていないモノとかもあるみたいだね。


〈リーダー〉〈ビショップ〉

 このクラスになると一機購入するのに家が一軒建ってしまう金額になるので、主に金持ちチームが一機だけ持っているってレベルの代物なってくる。

 元のアニメだと主人公の最終最強の機体だったり、劇中の大ボスが乗っているとんでも機体にこのクラスが当てられているみたいだね。

 このクラスになると、運営チームとしても虎の子なのでなかなか参加している大会の映像も出回らなかったりする。そりゃチームとすればタダで世の中に情報をくれてやる訳にはいかないもんね。

 実は僕も一機だけしか知らない、ずいぶん昔の機体がこのクラスだったはずだ。

 本名不明のトリコロールの機体。エントリーナンバー78。たった1分で12機もの大部隊を全滅させた伝説のロボット……〈白流星〉の事だ。

 因みに〈白流星〉は〈リーダークラス〉だけど、噂では同等の戦力を持つとされる赤い機体もいるらしい。どうやらそいつは〈ビショップクラス〉なんだそうだ。


〈ルーク〉

 城や砦を表すクラス名の〈ルーク〉は今までとはちょっと毛色が違う。

 このクラスはレア度よりもその大きさが重要になってくる。

 高層ビルの様な巨大な体躯を持ち、その全身が武装の塊の様なロボット……らしいんだ。

 クラス名は大会運営の企業なんかが公表しているんだけど実物は見たことがない、存在が怪しいクラスなんだ。

 ただ……噂ではあのスターチャート社が一機だけ持っていると実しやかに囁かれている。

 コードネーム〈SDF〉……実際にスターチャート傘下のスレイプニールと戦う僕たちにとっては、あまり嬉しくない噂なんだけどね。


〈キング〉〈クィーン〉

 スーパーロボットバトル史上ではもっとも有名で、最も戦闘力があり、最も高価な機体に与えられるクラスだ。全ての意味において最強の称号と言ってもいい。

 たった一機でバトルフィールドの敵機を全て破壊し、敵陣地を火の海に変えた伝説の機体「アイアンキャッスル」……今の所、この機体のみに与えられた称号となる。

 〈ナイトクラス〉の攻撃すらものともしない重装甲と、師団レベルのロボット軍団をたった一発で蒸発させた熱線砲。それ以外にも目から発射されるビームにミサイルの様に飛んでくる両腕など固定武装も豊富で、まさにその姿は鋼鉄の魔神そのものだった。

 10年ほど前にたった数度しか戦場に現れなかったにも関わらず、いまだ最強のロボットとしてFゲーム史に名を刻んでいる。全プレイヤーの憧れと恐怖の的になっている。

 僕も勝てるかどうかは別として、一度でいいから戦ってみたいロボットでもあるんだ。

 さっきも言ったけど、〈キングクラス〉はこの「アイアンキャッスル」以外にはいまだ現れていない。〈クィーンクラス〉は、その〈キングクラス〉を打ち倒したロボットに付けられるクラスだと言われている。


 ここまでが通常のクラス分けになる。それぞれチェスのコマの種類を元にして名付けされたのがわかって貰えたんじゃないかな?

 それ以外にもクラスはあるんだけど、ちょっとだけ特殊なんだ。ざっと説明しようかな。


〈ビースト〉は動物モチーフになっているロボットだ。ライオンというネコみたいな動物モチーフのロボットが五体合体する「ファイブレオ」はこのクラスだ。動物がモチーフっていうだけで強さはマチマチなんだけど、「ファイブレオ」は強さだけで言ったら「アイアンキャッスル」に匹敵するんじゃないかと言われている。まぁ五体全てが戦場に現れる事が少ないからなぁ。分離状態なら一体一体が〈ナイトクラス〉だと評価されているね。


 さらに変わった所だと〈勇者〉ってのもある。

 これはどうやら特定のアニメシリーズにしかつかない称号なんだそうだ。

 称号名とその条件は開示されているのに未だ戦場に現れていないんだ。見たことも聞いたこともない。一体どんな姿をしているのか全く想像もつかないんだ。


 さてさて、何でいきなりこんな説明をしたかと言うと、理由はちゃんとある。

 僕たちの現状をもう一回説明しよう。

 僕たちは龍が浜のすぐ近くにある龍が島に来ている。と言っても、バトルフィールドとしての龍が島だ。

 そこはヤヨイさんの旦那さん達の趣味が高じて「ドラゴンハンター」というゲームの世界を再現したフィールドだ。

 そこはファンタジー小説みたいにドラゴンやモンスターが闊歩していて、ハンターと呼ばれる戦士達が武器を手にそれらと戦うアクションゲームとなっている。

 亡くなったヤヨイさんの旦那さんは生前、この島の中央部に建つそれはそれは巨大な塔の天辺に、自身が若い頃に愛用していた武器や装備を封印していたんだ。

 「銀河刑事シルバーン」……ヤヨイさんの旦那さんは若い頃アクション俳優だったらしく、彼が唯一出演した子供向け特撮ヒーロー番組の名前だ。

 旦那さんはその作品をとても愛し誇りに思っていた。アイズとなってもその気持ちは変わらず、ついにはシルバーンの劇中で登場した数々の装備をFゲームで使える様に現実化し、それをこの塔の天辺に封印したんだ。

 僕たちチームブレイバーと、急遽チームを組む事になったチームエンゼル兄弟と一緒にこの封印を解くために、この龍が島に手持ちのロボットに乗って上陸した。

 順調に塔の最上階まで辿り着いたんだけど、僕たちの前にはとんでもない「敵」が今まさに立ち塞がったんだ。


 「ドラゴン」って言われた時、どんな姿を想像する?

 大きな翼を生やした、直立する爬虫類ってのが一般的なんじゃないかな。こんな世界にいる僕だって、何となくトカゲとか爬虫類の姿はボンヤリと想像できるさ。

 人によってはもう一つの姿も思い浮かべる人もいるんじゃないかな。

 僕たちの前に現れたのは、まさにそっちの方なんだ。

 深い海の様なブルーの塗装と、ヘビのように長くトグロを巻いた姿。

 目は血のように真っ赤で、口は長く大きく開いている。鼻先からは針のようなヒゲが左右に一本ずつ伸びている。頭頂部からは二本の角が天に向けて伸びている。

 ただ、僕のイメージする「ドラゴン」とは全く違っていた。

 鱗はなく、その身を包むのは青い鋼鉄の装甲だ。そこには鮮やかな赤いラインと黄色のラインが描かれている。

 身体の中腹あたりには、まるで宇宙船のようなシルエットとなっていて、一見すると宇宙船の機首からドラゴンの長い首が生えているように見える。艦尾からは首よりも長い鋼鉄製の尻尾が鞭のように生えている。

 何よりもその大きさが異常だ!

 僕たちだって自動車よりも大きなロボットに乗っているはずなのに、このドラゴンの前に立つとあまりに小さい。10両編成の新幹線と、それに乗る乗客以上のサイズ比だ。

「ヤヨイさん……確かコレって……」

 ミカが呆けたような力無い声で、やっとのこと話し始めた。他のメンバーは余りのことに声が出てこないようだ。

「間違いないわ……銀河龍バーン……シルバーンの装備だわ……」

 ヤヨイさんの声も随分震えているけど、ちょっと嬉しそうだ。

「流石はウチの旦那ね……コレと戦えっていうなんてね……」

 やっぱりそうだよね。封印された秘宝には番人がいて、そいつと戦わないと手に入らないってのはゲームじゃよくある話だ。

 だからって!コイツはあまりにヤバい!クソゲーのバランスじゃないか!

 ミュートが無言のままで目の前の視界を埋め尽くす巨大ドラゴンロボットの情報を出してくれた。

〈ビースト〉〈キング〉〈ルーク〉

 称号欄に何故か……いや今まで見た事がない3つのクラスが並んでいた。

 白くぼんやりと輝く文字列は、僕たちに対しての死刑宣告なんじゃ無いかと思える程、悍ましいものだったんだ。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

何だか説明コーナーになってしまいましたが、こう言うのって考えるのは楽しいっすよね!


まだまだFゲーム2続きそうです。まだまだお付き合いくださいませ!

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