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異世界転生応援室トラック係・釣合秤の業務報告書  作者: 日ノ日
第一部 第二章
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第16話 聞き取り調査②

「目立つ魔法は無しかー」


 個人面談を始めてから三日。森羅の面談は一応終了し、今日からは滴の番となり、とりあえず森羅と検証した魔法を一通り話した後、滴がテーブルに倒れ込んだ。


「ああ。とにかく写真とか動画に残らないことが最優先だからな」


 一番の問題児相手ということで少し強めに言うが、とうの滴はこちらの意図などどこ吹く風で、暢気に頭の後ろに手を回してイスにもたれ掛かった。


「それ、シツチョーも言ってたな。今はどこからでも監視されてるって。ん? あー、だから転移じゃなくて転生させてるのか」


「何の話?」


 恐らくは異世界送りに関係する話だろうと確認すると滴は、んー。と唸りながら視線を宙に飛ばしたが、直に表情を戻して語りだした。


「シツチョーから聞いたんだけど、異世界送りには相手を殺して、魂だけ異世界に送る転生と、生きたまま体ごと送り出す転移の二種類存在するんだと」


「転移?」


 言われてみれば確かにそうだ。

 創作物の異世界ファンタジーは死んで生まれ変わるものばかりではない。

 むしろハカリが子供の頃に見たアニメなどでは、現代人がそのまま異世界に迷い込み、元の世界に戻ることを目的にした物語が多かった。


「じゃあ。転移なら、相手を死なせる必要はないのか?」


 結果が変わらないとしても、直接的な人殺しに荷担するよりは気楽だ。

 それなら自分でも参加できるかもしれない。

 そんな想いは、即座に否定される。


「だーかーら。それが出来ないのが分かったって話。転生と転移じゃ必要なエネルギー量がまったく違うんだってよ」


「エネルギー量?」


「そ。転生なら魂だけを送ればいいけど、転移で肉体そのものを送るには、桁違いのエネルギーが必要らしい」


「文字だけのメールと動画ファイルを添付したメールみたいなもんか」


「……いや、その例えは分からないけど。神、じゃない。上位存在はそれを天災の自然エネルギーを利用して作り出してる。まあ、転生の場合でも天災を起こすから被害の大きさは変わらないんだけど」


「室長のやってたやり方だとエネルギーが足りなくて、転生にするしかないってことか」


「いや。アタシらの全力なら転移させるくらいのエネルギー量は出せるけど、その場合は魔法を全開で使う必要があるからな。それだと目立ち過ぎるから、シツチョーは目立たない転生を選んだんだろうなって話」


「それなら、うまく隠す方法があれば出来るのか……」


 規模が大きくなると難しいが、今現在音を漏らさないように張られている遮音魔法のようなもの(滴の場合は薄い水の膜のような形状だ)もある。

 調査済みの魔法を組み合わせてできないかと、メモを片手に思考を続けるハカリに滴は首を横に振った。


「ムーリーだーよ。どのみち異世界送りじゃ個別魔法は使えない。そうなると範囲魔法でごり押すしかないんだけど、そっちだと結局天災と変わらないくらい周りに被害が出るし、天災と違って誤魔化しも利かないから無理」


 個別魔法とは効果対象が一人に限定された魔法であり、攻撃系の場合、範囲魔法に比べ威力が高くなると森羅が語っていた。対象が一人ならばそこまで目立たないため、緊急時に使用を許可する魔法リストに入っているものも多い。

 何故それが使えないのかと問うと、滴はため息を吐いて続けた。


「小子が言ってただろ。導具には上位存在の力、神気が宿ってる訳だけど、異世界送りが終わるまでは転生予定者の体、後は起こった後の天災にも神気が宿ってるんだよ。上位存在はアタシらより格上だから、神気に邪魔されてまともに魔法が発動しないってこと。だから天災を直接止めることもできない」


 神気なるものが無ければ、天災すら止められるのか。と言いたい気持ちを抑え込んで、さらに質問を重ねる。


「収束が邪魔されるってことは、攻撃魔法以外も使えないのか?」


「ああ。導具を持っていると転移とか飛行とかも使えないらしい」


「あ! なるほど。だから車の運転できる奴が必要なのか」


 準備もなく転移しては周りに見つかる可能性もあるが、森羅によると転移魔法は透明化などの魔法とも併用できるため、隠蔽は可能なはずなのに何故そうせずにわざわざハカリに車を運転させたのか、森羅から魔法の説明を聞いたときから不思議に思っていたが、これで納得できた。


「そーいうこと。だからもしやるなら拡散されても関係ない範囲魔法で一気に吹きとばすしかないけど……」


「それだと目立ちすぎる、か。やっぱりダメかー」


「まあまあ、時間を掛けて覚悟を決めればいいだろ」


 こちらに気を使って慰めるようなことを言う滴だが、ハカリとしては例え時間を掛けても覚悟とやらが決められる自信は無く、返事はできなかった。

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