第9話 富雄の本音
翌日、小鳥遊グループ執行役員会議。
「それで、あの件はどうなった?」
『はい、予定通り、全員解雇にしました』
「ふむ、それでよい。売り上げがあげられない連中だからな」
小鳥遊富蔵。かつての財閥とつながりの深い、大手企業小鳥遊グループの代表取締役であり、息子である富雄の父でもある。
『代表の言う通り、売り上げが低迷していたディスプレイ部門は、クビにして正解でしたよ。』
富雄がそう語った。
「まぁ、あんな部署いつまであっても困るしな」
『そうですね。でもよかったじゃないですか。ベーシックという制度が始まって。あのおかげで飯は食えるんですから』
「そうだな、安心してクビがきれるようになったな」
しわを寄せながらにやりとする富蔵。
『本当、良い時代になりましたね。どんな人でも生活はできるんですから』
すると、早朝の会議であくびをしている役員がいて、代表にその姿を見られてしまった。
「君、田中君だよね。君の部門この上半期調子よくないよね。」
[あ、いえ、、それは。]
「いいよ、別に。もう明日から来なくて。」
[そ、そんな待ってください。まだ私はこの会社で、、]
[いいって。もう。能力足りない子は。はい、さようなら」
頭を垂れて、席を立つ田中。
すると、首を横にかしげた富雄が、さも、彼に興味なさそうに話し始めた。
『いいじゃないか。仕事がなくても。ベーシックのおかげで飯は食えるんだから』
富雄はさらに続けた。
『会社は僕ら有能な者たちでやってくからさ。邪魔しないでほしいんだ』
そして、富雄はまっすぐ、正面にいる田中の目をぎろっと見ながらこう言った。
『だからさ、働かなくていいよ。金はベーシックからでるから、君は家で大人しくしててよ』




