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「・・ケンだけが親から見捨てられたアイを助けてくれたの・・そんなケンがバカにされたままなんて・・絶対にイヤなの・・!」


山の中、アイの決意に満ちた瞳を見てケンは何を言っても無駄だと悟る


「はぁ〜、しょうがないな、ちょっと待っててアイ」


ケンは足元の地面に顔が付いてしまうほどしっくり見ると小さな足跡を見つけニヤリとした笑みを浮かべる


「どうしたのケン?」

「俺に良い考えがある」

「考え?」

「ああ、アイツらを見返してやろう」


・・・・・・


「はぁ〜、結局獲物が取れなかったな」

「やっぱり山の中の獲物少なくなってきてるよな」

「さっき見つけたウサギもちょこまかと動き回って結局逃しちまったしな・・はぁ〜」


ケン達の事をノロマとバカにしていたヘロドとワクシーは獲物を一匹も取れず、肩を落としながら帰路についていた


「ごめんよ、ちょっと通るよ〜」


その前をケンが通り過ぎて行くと・・


「ん?なんだよノロマのケンが・・はぁ!?」

「おい!なんだよ!そのウサギは!?」


ケンとアイの背には紐で括り付けられた大量のウサギが乗っており、それを見たケンタウルス二人は驚きの顔を浮かべる


「あら?あらら?どうしたの君たち〜っ?手ぶらじゃないかぁ〜っ、もしかしてあれだけ好き勝手な事を俺に言っておきながら獲物一匹も捕まらなかったのかな〜っ?ブブブブッ!」


ケンはさっきのお返しと言わんばかりに口に手を当て、完全に勝ち誇った含み笑いをする


「・・フッ」

「「ぐふっ!!?」」


ケンの横で完全に見下した表情のアイに鼻で嘲笑われた事がトドメになったようにヘロドとワクシーは肩を落としたまま動けなくなる


「それじゃ俺達この大量のウサギを持って帰らないといけないからお先に失礼するね〜」

「・・お先に」


そして言いたい事は言い終えたとばかりに勝利の笑みを浮かべたケンとアイは手を取り、ケンタウルス二人組みを置いてさっさと帰路につくのであった


「・・やっぱりケンは凄い」


ヘロドとワクシーの姿が完全に見えなくなってからアイはケンを称賛する


「いや、あれは偶然ウサギの足跡が見つけられたおがけだよ」


あの時ケンはウサギの足跡を複数見つけていた、そして足跡周辺を探索してウサギの群を見つける事に成功したのだ


「それにウサギを捕まえられたのは、アイが追いかけて罠に誘導してくれたおかげで俺一人だったら一匹も捕まえられなかったよ」


ケンはあらかじめに罠を作っておいて、そこに見つけたらウサギを追い込むようにアイに追いかけてもらって捕まえたのだ


「だからこのウサギは俺とアイとの共同作業の結果って言ったところだね」

「ケンとアイの共同作業・・共同・・共同・・ふふふ」


(なんでアイ、そんなに嬉しそうなんだろう?)


「そうだ!このウサギは持って帰る前に一匹だけ俺達で鍋にして食べるとしようか」

「やった!ケンの料理、美味しいから好き」

「その代わり野菜も残さず食べるんだよ」

「うっ・・わ、分かった、頑張って・・食べる・・」

「アイは相変わらず野菜苦手なんだね」


(ケンタウルスって草食だとばかり思っていたら雑食なんだもんな)


ケンタウルスは上半身は人のため味覚や胃などの消化器官も人に近くなっていた、そのため肉なども平気で食べられる

アイなどは野菜よりも肉が好きなほどである


「それはケンのせい、ケンが嫌がるアイに苦いのを口いっぱいに押し込めるから・・」

「それはアイが薬草を残そうとするからでしょう!」


馬に憧れ野草を食べる癖のあるケンはこの世界に転生してからも野草を食べ続けていた

そのせいで何度が死にかけた事があるケンだったがそのおかげでこの世界の薬草にも詳しくなり、アイの看病をしていた時には多くの薬草を採取してはアイに食べさせていたのだ


「けど、どうして急にウサギ狩りをやる気になったのケン?」

「それは・・べ、別に良いでしょう、あいつらにノロマノロマって好き放題言われて俺もカチンときただけだよ」

「そうなの?ケンは全然気にしてるようには見えなかったのに・・?」


(アイが俺の事で怒ってくれて嬉しかったからなんで恥ずかしくて言えないよ!)


恥ずかしい本心を隠したままそっぽを向いて歩くケンだったが・・


「お前達!こんなところで何をしている!」

「えっ!?なに!?突然なんなの!?」


突然現れた大人のケンタウルスの集団に囲まれ混乱してしまう


「ケン!」

「げっ!?父さん!!」


ケンの前に眉間に皺を寄せ見るからに不機嫌顔のケンの父親が現れる


「私のところから勝手に連れ出したポニー達はどうした!」

「あっ、そ、それは・・」


競馬に使ったポニー達はケンが父親のところから無断で連れていったものだった


「あ〜、その〜、ポニー達なら今も草原で楽しく草をムチャムチャしていると思うよ・・」


ポニー達を放置して山に来てしまったため、ケンはバツが悪そうに答える


「なんだと!お前は私のポニーを草原に置き去りにして、こんな山で何をしているんだ!」

「それは、その・・ちょっとウサギ狩りを・・」

「ウサギ狩りだと・・!?」


そこではじめて父親はケンの背に大量のウサギが背負われている事に気付くと驚きの表情を浮かべる


「このウサギはお前が狩ったと言うのか!?」

「あ・・うん、そうなんだけどさ・・」

「どうやって狩ったと言うのだ、お前が追いかけてウサギを捕まえたわけではあるまい?」

「それは・・その・・罠を使って捕まえたって言うか・・」

「罠だと・・!」


罠という単語が出た瞬間に大人のケンタウルスの顔に明らかな嫌悪感が浮かぶ


「このっ!ケンタウルスの恥晒しがっ!!」


ドガッッ!!!


「ぐっっ!!?」


鬼のような形相で顔を真っ赤にして怒ったケンの父親はその怒りのままにケンの頬を思いっきり殴り付けたのである


「ケン!!?」


殴られ、地面に倒れたケンにアイが心配そうに駆け寄る


「罠などを使うとはお前はそれでもケンタウルスなのか!」

「全くだ!自分の脚に自信が無いからってそんな罠で捕まえるなんでケンタウルスの恥晒しめ!」

「はぁ〜〜〜」


殴られ赤くなった頬を撫でながらケンは思わず深いため息を吐く


(いつもこれだよ、ケンタウルスって言うのは走る事に誇りを持っているからな)


ケンタウルスという種族はその性質上走る事に誇りを持っている、それはもう強過ぎるほどに・・狩りに対しても獲物を見つけたら力の限り追いかけて捕まえる事に美学を感じるためにケンのように罠を使って捕まえるなど邪道と思われているのだ


(前にも罠を使ってウサギを捕まえたら、めっちゃ怒られたんだよね〜)


アイを助けた事や罠の使用などもあり、ケンは親に疎まれ、勘当されてしまっていた


(まぁ勘当された1番の原因は・・やっぱりローンの事だよな・・)


ケンの妹であるローンは1年前の13歳になった日の朝、置き手紙を残して旅に出てしまったのだ


「貴様に妙な事を吹き込まれたからローンは旅なんかに出てしまったのだ・・!」

「それは・・!」


置き手紙には『私は襲い来る数々の苦難を乗り越え、多くの友に出合い成長し、誤解から戦った敵とは、『なかなかやるじゃねえか』『お前もな』と互いの実力を認め合いライバルと言う名の友となり、努力と友情のおかげで無事に7つの玉を見つけ出します!そしてその7つの玉を巡って最後は頭に触角の生えている緑色の魔王との死闘を繰り広げ、最後は私の新必殺が炸裂して倒す事に成功!魔王を倒した私はケンタウルス王女になり、この世界に平和をもたらす事に・・しかし!そこに今度は宇宙からの侵略者が現れる!?私の運命はどうなってしまうのか!?乞うご期待!!』

と置き手紙というより漫画のあらすじのような内容が書いてあった


(俺の影響というのは否定のしようがないよな・・手紙の内容のせいで最初は旅に出たって誰も気づかなかった程だし・・)


ローンはケンから聞かされていた漫画の話を大変に気に入っていて、漫画の真似をして度々山で修行として寝泊まりしている事はあったのだか、旅にまで出るとはケンも予想していなかった


「ローンは私の後継となり、ケンタウルスの長となるはずだったのに・・!」


ケンの父親は、ローンが13になった時に皆に次のケンタウルスの長はローンだと発表するつもりだった、しかしその前にローンが旅に出てしまったために次の長が決められずにいたのだ


「いいかケン!お前は弟には近づくな!ローンのような事になったらかなわんからな!」

「近づくなって・・名前だって俺に教えてくれてないじゃん・・」


ローンが旅立った後、ケンには弟が産まれていたのだが、両親はケンに会わせることはせず、名前すら教えていなかった


「こんなのが息子だとは・・長のなんと不憫な事だ・・」

「まったくだ、なぜあの立派な長からこのような子が産まれてしまったのか・・」


ケンに蔑みの視線を向け、罵詈雑言を浴びせるケンタウルスの大人達


「・・ぐっ・・よくも・・よくも・・ケンの事を・・!」


その罵詈雑言にアイの目はカッと吊り上がり、今にも爆発しそうになっていた


「アイ!俺は大丈夫だから、落ち着いて」

「けど・・けど・・!」


そのアイの手をギュッと握り締め、なんとかアイが暴走するのを押さえているケン


(しかし、ひどい言われようだな俺・・けど確かに言うとおりなんだよね・・俺ってケンタウルスの中で異端みたいだし・・)


「そんな穢れた方法で捕らえたウサギはこちらで回収しておこう」

「えっ?あっ!ちょっと!!」

「返せ!それはアイとケンの共同作業のウサギ・・!」


抵抗虚しく、ケンとアイの背に乗っかっていた全てのウサギは持ってかれてしまう


「長、これで」

「・・いや、この量では冬を越すには到底足りない・・」

「なら我らも早く狩りをしなければ」

「しかし、この山でこれ以上捕れるのか?」


回収したウサギ達を手に相談を始める大人のケンタウルス達


「・・やはり・・売るしかないか・・」

「そうだな、それが1番だろう」


(売る?いったい何を売るつもりなんだ?)


ケンはその言葉を少し疑問に思う、確かにケンタウルスは狩った獲物や山で採れた薬草などを商人に売る事がある

しかし父親達の様子はあまりに不穏な空気を醸し出していた


「ケン、お前はまだ居たのか?早く私のところにポニー達を戻してくるんだ!」


立ち聞きしていたケンだが、その事に気付いた父親に追い払われてしまう


「あ〜あ、せっかく捕まえたウサギ全部持ってかれちゃったなぁ〜」


(けど、長である父さん自ら狩りに出るなんで今までなかったよね・・?)


父親達が集団で山で狩りを行うなど今まで無かった事に疑問を思うケンだったか


「あいつら・・ケンの事悪く言った、それにケンとアイとの共同作業のウサギを・・ユルサナイ・・ユルサナイ・・」

「アイ、俺は大丈夫だからそんなに怒らないでよ」

「はふっ・・!」


さっきの出来事で険しい表情になり呪詛を呟いているアイを少しでも落ち着かせるために頭を優しく撫で続けていたら、帰る頃には長達の事は綺麗サッパリ忘れていたのであった



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