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一汁三菜 密着!ビンボーイ

閑話です。

汚い表現が多数出現します。

特に3段落は人を選ぶと思います。普通の感性をお持ちの方は飛ばし読みすることをおすすめします。

なお、本作入りができなかった没作品集です。

お楽しみください。

 これはとある中年の一日の記憶である。




 「おはよう♪朝だよ♪目を限界まで開いて♪脳みそ、みそみそ♪最高の目覚めだね♪」


 「トン トン トトトン トン トトン トコトントン♪」


 日が昇り始めた頃、いつもの音楽で目を覚ました。


 この歌の作詞は親父で作曲はお袋だ。息子を起こすために作ったらしい。


 6歳の頃から毎朝、お袋が部屋の扉の前で起きるまで歌ってるのだ。今日は一段と気合いが入っていて、親父の太鼓の音も聞こえる。親父の太鼓は聞く度に変わっている。毎回新鮮だ。


 お袋の声は決して大きくはないが、年をとった今では丁度いい目覚ましとなっている。


 「おはよう。おふく…『早く降りてきなさい!』」


 今日も、挨拶を最後まで言わせてもらえなかった。いつものことだ。遠ざかっていく足音を聞きながら布団をたたみ、下に降りた。












 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 

 朝御飯を食べ、月に一回の浴槽掃除を行う。


 「おい!足場が不安定だ!しっかりしろ!」


 一人では高さが全く足りないため、親父を肩車しながらの作業だ。日々甥の突撃を受けてる腰はそろそろガタが来そうだ。


 「分かってる!親父も揺れるな!」


 両手に杖を持ち、4点で体を支えなんとか持ちこたえている。が、その努力を嘲笑うように親父は貧乏ゆすりをする。親父がいつか落ちそうでたまらない。


 「これは心拍じゃ!お主が脆いのじゃ!」


 ついに、親父の体は心拍がからだ全体を揺らしてしまうほど弱ってしまったらしい。


 言っても無駄だとわかったので梯子の役割に徹する。


 親父の動け!や屈め!、稀に跳べ!などの指示に従いながらようやく浴槽掃除を終えようとしていた。


 ふと、気泡が目立つ水滴がての甲に落ちてきた。天井に頭が張り付いた時、切り取った木材が原因で雨漏りしてしまったのではないかと、内心冷や冷やしていると、


 「ふむふむ。悪くないのじゃ」


 もうそろそろ終わるというところで、何かいいながら、ずっと止まっている親父を不思議に思い、少し目線を上にあげる。


 「昼飯よりおいしいのじゃ!」


 変態がいた。ペロペロしていた。それもカビが生えてヌルヌルしていたところだ。


 「親父?何してるんだ……」


 呆然と呟いた声が聞こえたのだろう。こっちにちらっと目線を向けた。


 「おお。もういいぞ。降ろしてくれ。次は便所頼んだぞぃ」


 果たして浴槽をきれいに出来たのだろうか。痛む腰を擦りながら満足そうにスキップしている親父を見て、この事は忘れようと誓った。これからも湯船を楽しむために。







 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 親父の指示通り、次は便所掃除だ。


 トイレットペーパー倒壊事件によってトイレが詰まりかけている。


 一般的な村のトイレはボットンスタイルというのが採用されていて、ある程度まで貯めてからそれを捨てる。もしくは、肥料として使う。


 ただし、相も変わらずうちは一手間かかっている。もちろん弟の嫁さんのだが。


 なんと、貯めるタンクの下に回転する刃がついている。これにより、常に尿と糞が液体状でたまっている。


 嫁さんオリジナルの虫除け結界がついているため、糞尿に虫がたかることはない。


 この液体がある程度たまると自動的に畑に流れるようみぞができている。これにより、手間が省けるという訳だ。


 だが、今回トイレットペーパーが落ちたことにより詰まったらしい。ジャンケンの結果により俺が負けた。なぜか、他のみんなはシンクロしたかのように同じ手を出し続けていたが…。


 よって、今からマグマダイブならぬダストスープダイブという訳だ。もちろん素っ裸!文句あるか!?


 臭いがわからなくなり、糞尿液に風呂のような温かさを感じるくらいはこの液体に浸かっているだろう。


 一個ずつたっぷり液体を吸ったトイレットペーパーをサルベージしていると、頭に温かさを感じる。頭だけは液体から出ているので、上から垂れているに違いない。


 「ん?なんだ?」


 手でさわってにおいを嗅ぐが全くわからない。鼻が機能していないため、なにが降り注いでいるのかもわからない。


 「ゼンイチ?」

 

 声が聞こえたのか、甥の声が返ってきた。


 「そうだ。何かしてるのか?」


 この液体の正体を知るため甥に聞くが答えが返ってこない。


 かれこれ、5分ぐらいでようやく止まった。そして、妙にスッキリした甥が鼻をつまんで便器を覗きこんだ。


 「ゼンイチ!かかった?きゃはははは」


 甥の返事に唖然とするが、追い打ちのように言葉は続く。


 「これ拭いたやつね!あげる!」


 シミがついたトイレットペーパーが降りてきた。


 甥の心無い言動にぼーっとしてたので、そのまま液体に取り込まれていく。慌てて掴もうとするが、空振ってしまう。理由が分からないが、何かが起きている。


 一瞬躊躇するが、甥のさっきの態度を思いだし、気にすることはないと、トイレットペーパーを追うため、頭を液体につけて下に潜っていった。


 尚、全身コーティングされた体では出ることができないため、極力物をさわらないように万が一のために用意してあったボットンの中にある扉から外に出た。その姿をみた親父が水の魔石を投げて渡してくれて、事なきを得た。見た目だけの話だが。


 その後、全身を消臭液に約一時間つけることによって、家に入ることを許された。


 その間、家の前を通る人がこちらをみるとすぐ目をそらした。なぜなら全裸で消臭液に浸かってるからだ。当たり前のことだ。


 この記憶を臭いと共に消してくれないかと、消臭剤を一口飲んだが、嘔吐するだけの結果となりやっと戻ってきた嗅覚をまた麻痺させるのだった。


 




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 無事脱臭を終え、皆が食べ終わった夕食を1人で食べた後、家族みんなで筋トレの時間だ。余談だが、昼食はいつも通りだったが、いつもより何倍もいい香りがして、とても幸せな気持ちになった。これが飴と鞭ってやつか!?


 筋トレといっても、なにも変わったことはしない。全部で2時間。ゆっくろ時間をかけて行う。メンバーは俺、親父、お袋、弟の4人で、嫁さんが監督、甥は刺客だ。


 まずは、腹筋、背筋、腕立て伏せを10回10セットずつ行う。

 

 「ふんぬ!ふんぬ!ふんぬ!ふんぬ!ふんぬーー!!」


 「おほ、おほ、おほ、おほ、おほ、おほほほほ」


 「1!2!3!4!5!」


 誰がどれか分かるだろうか?上から、親父、お袋、弟だ。俺は無言で行っている。


 その後は、体幹トレーニングだ。親父はこれに力をいれていて、両腕をついて、体が一直線になるように姿勢を保つ、通称プランクと呼ばれるものを3分間20セット行う。


 もちろん、こんなの出来るわけがない。嫁さんも分かってるのか、姿勢を崩したり、少し休憩しても何も言わない。ただ、親父はきちんとやってるらしい。自分ので精一杯で見れていないが、嫁さんが言っていた。普段の狂人ぶりからは想像できないほどこのときは真面目だ。怖い。


 逆に苦手なのが、弟だ。1セット目からお尻を上に突き上げ、逆V字の姿勢でやっている。それが面白いのか、いつも甥にお尻を叩かれていて普通にやったほうが楽そうだ。



 最後は踊る。これはお袋の提案だ。これは多分筋トレではない。残りの時間を使い全身を使って踊る。


 踊りはこうだ。両手を地面について足と一緒に前後左右に動かす。一つ挙動する事に呼吸を意識するために「ウホっ」と言わないといけない。


 端から見れば地獄絵図だろうが、俺たちはいたって真面目だ。特にお袋はアレンジをいれている。途中でたって胸を両手で叩きながら雄叫びをあげたり、四足歩行のまま外の倉庫にいって、口に果物だいたいリンゴを口に咥えて、そのまま躍りを続けたりする。


 それを真似しようとしているのか、親父は両手両足でリンゴをつかんで床の上で握りつぶしながら踊っている。果汁で滑るのか何回も転倒して頭や腰を打っている。


 これを見るとさっきの真面目な親父は幻だと思えてほっとできる。やはり、親父は狂ってないと。


 なお、お約束通り、濡らした床は親父がなめとっている。実に汚い。



 「あなた!勇ましい!」


 なぜかお袋は微笑ましいものを見るように親父を見ていた。どういうことだ?


 結局その後、俺が水ぶきをしなければならなくなる。二度手間である。今日もため息をつきながら、唾液の乾いた臭いがする床を拭くのだった。

次回は第2部にはいります。

連続投稿できるように、日数調整が入る可能性があります。申し訳ありません。10月6日から再開予定です。

それでは、第2部、村編でお会いしましょう。

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