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透明の「扉」を開けて  作者: 美黎
5の扉 ラピスグラウンド
17/1939

眠れない夜は(紺の時間)


夕食を終えて部屋へ入り、お風呂は午前中入ったのでそのまま着替えた。


ティラナが洗っておいてくれた自分のワンピースを寝巻き代わりにして、ベッドに入る。




やっと一息ついた気がして、ふうっと息を吐いた。


やはり緊張していたのだなぁと思う。


何もかも新鮮で、楽しいけれど同時に不安もあるから。

ぼんやりと木の天井を眺め、また息を吐いた。



「ねぇ気焔。ここで探し物をするのに、タイムリミットってあるの?」


寝転びながら、そう訊いてみる。


「いや、外の時間とは時間軸が違うからいつ何時まで、というのは無いはずだ。だがいつまででもいい、という事でも無い。」


静かに話し始めた気焔が言うには、探している物の素材自体が劣化するので、早いに越したことはないそうだ。


「んー。靴はあるから、服と指輪、石は気焔なんだよね?」



きちんと確認する。

ここは5の扉だから、石は黄色の気焔の筈だ。


「そうだ。」と気焔は答える。


昼間に見た、神様の人形は(ハーシェルに聞いたら皆、この人形に祈るらしい)何となく姫様じゃないような気がする。

違う気がする、と言うよりは靴を見た時のような「これだ!」感が無いのだ。

それよりも、被っていたベールが気になったくらいだ。


めっちゃいいレースと刺繍だったもんね………。


焦ってもしょうがないしな。


自分に言い聞かせて、目を閉じるが眠れそうにない。



もう一つ、心配事が居候の事だ。


「いつまででも居ていいよ。」と2人は言ってくれるけど、いつまでもタダメシを食ってるわけにもいかないだろう。

しかし自分ができるような仕事があるのかどうかも、分からない。


まだ外にも行ってないし。

出かけてみたら、求人とかあるかな?


考えていたら目が冴えてきて、諦めて起き上がった。


窓際にある小さな机に座り、月を眺める。


「同じだなぁ。」


そう呟きながら、置いてある本を静かに開いた。




実は昼間に、教会を探検していた時の事。


祭壇の奥に物置のような部屋があって、そこには教会で使う本や資料が並べられていた。


「好きに見ていいよ」とハーシェルは対応に出てしまったので、お言葉に甘えて色々見てみる事にしたのだ。



うはーっ。大好きこういう空間!宝探し!


小さな明かり取りの窓から差し込む光で、ちょっと埃っぽい小さな部屋の、全体が見える。


本棚は入ってすぐ横にあり、奥の方には何に使うのか分からない道具や大きな絵、白い布がかけられた棚のような大きな物もある。

あまり使われていないのか、奥は埃っぽいが本棚は綺麗だった。


文字が読めるのか気になっていたので、手に取ってみる。

開くと、やはり読めない。


「これなんて書いてあるの?」とティラナに聞いてみると、「………何かの3巻みたい。わたしまだ字は読めないの。」と言う。

数字は分かるみたいだ。


「私も一緒に字を習いたいな。」


そうティラナにアピールしつつ、他の本もめくってみた。


そうして何冊か戻した後、見覚えのある文字が、あった。


「呪」


え。不吉。


でも漢字だ………。


不安も感じるけど、味方を見つけたような気もして「とりあえず見るだけなら大丈夫でしょ。」と手に取った、私。


表紙は何もない。模様はあるけど。

本というよりは日記帳っぽい。

1ページ開いて、そう思う。


パラパラ見てみると、それは覚書ノートのような物だった。

読めない漢字や謎の記号はあるけれど、基本的には日本語。


「なんで………?」



「そろそろご飯の支度をするから、手伝って!」


楽しそうなティラナに、借りていっていいか許可を取り、とりあえず部屋に持って行った。




そんなこんなで眠れない夜に、日記の様なものを読んでみることにする。


「謎の指示とか書いてあったら、どうしよう…。」


ファンタジー読みすぎの私は思ったけれど、書いてあったのは本当に覚書やメモだけだった。


でも、内容的には「森で採ってきたハーブでのハーブティーの作り方」とか「動物の名前」とか「石鹸の作り方」だ。

後は何やらよく分からない、メモ。


え。めっちゃ役立つじゃん。


どうやら推理するに、この世界に来た日本人?が生活しやすくする為のメモだろう、その他色々役立ちそうな事、役に立たなそうな事、色んなジャンルのメモだった。


他に気になるメモといえば、大部分を占めていた「おまじない」のメモだった。


「まじない」は「呪い」とも書くので、背表紙の字の意味が解る。

しかし、なんだか怖いので一文字で書いておくのは止めて欲しいと思う。


面白いのは意中の人を射止めるおまじないとか、見たい夢を見る方法とか、願いを叶える、金運が上がるなどのおまじないだ。

知らない単語もいくつか出てくるので、この世界に合わせたおまじないだと思う。


しかし、願い事は万国共通だね………。


とりあえず、石鹸とハーブティー、食べれる物とかはすぐ試してみよ。



めくりながら「アレもこれも」とピックアップしていると、最後の方に刺繍の図案があった。形や布の大きさからして、あの人形のベールだとピンとくる。


きっと同じところから来た人が作ったから、気になったのかな………。


そんな事を考えて細かい図案を見ていたら、とうとう眠くなってきたのでやっと、眠りにつくことにした。



ベッドでは既に、朝が高イビキをかいていたけど。




朝はきっと、腹を出して寝ている…


あ、猫の方ね。

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