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透明の「扉」を開けて  作者: 美黎
5の扉 ラピスグラウンド
16/1940

お家探検

 

お風呂も入ってスッキリした、私。


実は私が泊まっている客間には、お風呂とトイレがついている。

家人が普段使うのは、1階の水場だ。

教会なので、お客さんが泊まることが多いのだろうか。

それなら私がここに泊まっていて大丈夫かな、と思いながらも、ありがたく思う。



さて、どれにしよう?


ハーシェルが用意してくれた長袖の服をベッドの上に並べる。

長袖だけど、薄手の服が多いのが嬉しい。

森の夜でも寒くなかったし、今日も割と暖かい。というかちょっと暑い。

暑いのが苦手な私にはギリギリの薄さだ。

そう、ホントだったら半袖の方がいいんだけど。


今日はバルーンスリーブの様な広がった袖が手首で絞ってあるブラウスと、スカートにしよう。


そう決めると、ウエストが大きいのでブラウスをインしてハイウエストにする。

広幅のベルトがあるといいんだけどな……?


普段着なのだろうが、襟元やスカートの裾に細やかな刺繍がしてあるのを見て、お洒落がしたくなる。

生地と同色の細やかな刺繍だけれど、意匠が素敵で持ち主のセンスが窺われる良い服だ。


もしかしたら、奥さんが自分で刺繍したのかなあ…。

ベルトも作りたいし今度機会があったら余り布があるか、聞いてみようっと。


残りの服を、部屋のタンスにしまう。


コーディネートが決まると、足取りも軽く1階へ降りた。




ハーシェルは既に仕事に行った様で、不在である。

ここはやはり教会で、ハーシェルは神父なんだそうだ。

祀られているのはどんな神様なのか、気になる。


それにしても、お父さん神父っぽいもんね………。納得。



あまり人がいない時間なら、教会の方も見に来ていいよ、と許可をもらっている。

ティラナによると、朝イチ、昼休み、夕方が忙しいようだ。

忙しい時間帯はどこも同じだな、と発見できて面白い。


朝の忙しい時間がもう少しで終わるだろう、という事でそれまでの時間、お家探検を始める事にした。



お家探検の言い出しっぺは、勿論私だ。

何故って家具や食器なども好きだが、間取りも大好物だからだ。


昨日キョロキョロできなかった分、思う存分楽しむつもり!



「お姉ちゃん、どこが見たい?」


張り切って案内しようと、ティラナが手を引いてスタート地点の入り口に連れてきてくれる。


「入り口はここだけなの?」


勝手口の様に見える簡単な扉なので、玄関が無いのかと聞いたけれど無い様である。


教会にも入り口があるので、まぁ3つもあってもしょうがないか。


納得して、改めて台所へ入った。


まず、目に入るのが、台所の右壁にドーンと構えている、竈と水場だ。

竃は小さいカマクラみたいになっていて、下の穴にまじない石が入っているのが見える。

上に開いている小さな穴のところにお鍋などを乗せるらしい。

調理道具はフライパンの様な浅めの鍋や、大きな鍋などが棚に整理して置かれている。

2人なので、そんなに多くはない。


シンクの用途であろう、水場は石でできていて蛇口となる出っ張りに、大きめの青いまじない石が嵌っている。

1つの家にどのくらい石が必要なんだろう?と考えながら、並びの食器棚を楽しむ。


食器は先日のお茶で、素晴らしいティーセットを見たので期待していたのだが、実はその種類はピンキリだった。


言葉通り、良いものは細かい模様の磁気の皿から、素朴なものは木の皿まで。

ガラスのコップも厚めだがいくつかあって、それに対して木のマグカップの様なのも、幾つかある。


面白いなぁ。


そのまま奥のお風呂とトイレに突入だ。


お風呂は2階のお風呂と概ね同じだ。

こちらの方が気持ち、広い。

そして2階は外国のようにトイレとお風呂が同じ部屋にあるが、こちらは独立している。


風呂、トイレ別ってやつね………。


「火の石あった~」なんてお風呂で確認しながら、トイレもちょっと覗く。


こちらのトイレは、幸いにも座る様式だ。

和式じゃなくてよかった、と思いながら四角い箱のようなトイレを見る。座り心地は、固い。


横の壁にまじない石があって、トイレで用を足してから触るとなんと水でどこかへさらわれていく。

初め、下水完備?!と驚いていたらティラナはウケていたけど、何処に行くのかティラナは知らないらしい。

そういうものだと思って、聞いた事がないみたいだ。

どうなってるのか後でハーシェルに聞いてみよう。

聞きたい事がいっぱいあって、忘れそうだけど。



お風呂の横に階段があるので、そのまま上の客間以外の部屋も見せてくれた。


2階は3部屋しか無くて、それ以外に少し大きめの納戸がある。階段を上がって真ん中に廊下、右側にハーシェルとティラナの部屋、左が客間と納戸だ。


ティラナは一応部屋はあるけど、寝る時はまだお父さんと寝る事が多いと言っていた。

しっかりしているけど、そういうところは可愛い。

こんなんお父さん溺愛だよ………。


こっちの世界でもそのうち「お父さん嫌」とか言われるのかな…なんて思いつつ、1階へ戻る。



1階奥の居間は、過ごしやすい空間だ。


教会部分は多分石でできているけど、住居部分は木造で壁も床も木なので、見慣れている感じで落ち着く。

大きめのタンスの様な物や飾り棚、本棚がある。


あとで本も見たいな………。


字が読めるのか、試してみたい。

背表紙には謎の文字らしき物が、見えるけど。


居間にある家具はどれも高そうで、装飾が細かく見ていて飽きない。

手を後ろに組んで、ゆっくりぐるりと見て回る。


そうしているうちにティラナがお茶を入れてくれた。


「もうすぐお父さん手が空くと思うの。」


「全然、見れるだけでいいから案内は無くても大丈夫だよ。」


そう言ったけど、ティラナはお父さんのいいところを見せたいらしい。

仕事中はかっこいいのだそうだ。

かわいいやつめ。



今日のお茶もハーブティーだったので、気になっていた事を色々聞いてみた。

育てているのか、買ってくるのか気になっていたのだ。


街に入って思ったのが、家々には庭がない。

基本的に石畳の通路で鉢植えに植物がある所は多かったが、庭のある家は無かったと思う。

買っているとしたら、店があるはずで、ハーブティー屋さんがあるなら是非行ってみたい。


そんな話をしていたら、ハーシェルが迎えに来てくれた。

教会も一息ついた様だ。




「あの、良ければ表から入ってみたいんですけど…。」


なんてボソボソ言っていたら、ハーシェルが少し驚いたような顔をして了承してくれた。


やっぱり、正面から行かないとね!



自分の家の近所に教会はないが、神社は多い。

そして神社も教会も好きだ。

いつか世界の寺院を廻ってみたいと常日頃から思っていたのだが、こんなところで野望が実現するとは…(異世界だけど)。


やはりこういう所は正面から、鳥居をくぐりたいのだ。

ま、鳥居はないけど雰囲気を堪能するためには表から入らないとね。うん。



ぐるっと廻って正面に立った。



思った通り、やはり雰囲気がいい。



私は信仰のための建物が好きだ。


何の神様を祀っているのか、違いはあれども信仰心、という点では共通していると思う。

偶像崇拝でも、自然崇拝でもやはり長年そこにあるものは「人の想い」が蓄積していると思うからだ。

そしてその場所が纏う、なんとも言えない空気。


蓄積されているのが想いだけなら、清浄な空気にならないような気がするので、やはりなにか神様のような存在がいるのだろうか。


ここも素敵だな………。


ちょっとお辞儀するようにして、正面から入る。上が丸い形の重い木の扉が、また雰囲気を高めている。



大きな木の扉を押して入った、最初の部屋。


小さいホールの様な、天井が高い入りの内装には青いタイルが一面に張り巡らされていた。



「うわぁぁぁぁ~~!!」


サイコーです!神!


内部は天井に向かうに連れて、青の部分が増える細かな装飾で一杯だった。

一気に造られたのではなく、段々と増えていったのであろうタイルは、所々意匠が違う。


それがまたいい味を出してる~!


きっと、人々が少しずつ奉納したのだろうと思える内装に、胸がときめいた。


ん?待てよ?ここに来て1番のときめきがコレ?

イケメンの1つや2つは??


首を傾げているとハーシェルが中へ促した。


そうここは、まだ入り口だったのだ、そういえば。




中もまた、私にとってはたまらない空間だった。


何の神様だろうか、正面にはティラナくらいの大きさの人形の像が見える。


椅子が等間隔に並んでいて、西洋の教会にすごく近い。

両脇と正面上部にある美しいステンドグラスの窓が、更にそれを強調する。


ステンドグラスの模様が、規則的な唐草だったり十字だったりの模様だから。

西洋というよりかはイスラムに近いかなぁ……………。


正面の像が気になって、そのまま進んだ。



「え…………………。」



なにか、見た事があるような、像というよりは人形だった。


いつの間にか、朝が先に歩いて匂いチェックをしている。

「シンラ様に似てるわね。」と言っているけど、シンラとは誰だろうか。


少し気になったが、人形が気になって更に近づいて行く。


「………………。」




多分、古い、古い人形だ。

陶器のような肌は少し黄身がかっていて、その創られてからの年月を物語っている。


女の人の人形で、髪は長く、ベールのようなレースと刺繍の布を被っていて、服も古いが素晴らしい刺繍とレースが使われているのが分かる。

元は、白かったのだろうか。

全体的に黄ばんでいるようだが、それを含めて長い事ここで大事にされてきた事が分かった。


「ねぇ。朝。………私、人形も探してたよね?」


「この人形かな?」と朝に訊くと、「どう思う?」と逆に訊き返された。


「うーん。なんかピンとこない。そうだと言われればそうかもしれないって感じ?」


感じた事をそのまま答える。


「それならそれでいいんじゃない?まだ時間はあるし。」


そうサラッと答える、朝。


え。時間?タイムリミットあるの??



「気焔、これって姫様?判る?」


「依るが姫様だと感じたものが姫様だ。」


え。またこの丸投げパターン?



「ずいぶん熱心に見ているね。」


そう、ハーシェルに突っ込まれて、私たちのコソコソ会議は終了した。



これ、この子達が喋ってるのがバレるの時間の問題じゃない??

それか、私が怪しい(もしくはアブナイ)認定されるのかのどちらか。


うーん。どうしたもんか。







依るは基本的にノーテンキなので、ハーシェルの


探る目付きに全然気付いてませぬ。

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