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高校生の物語4

私はバスに乗っている。そのバスは、普通の物より幾段か大きく見えた。しかしよく見てみると、バスだけでなく周りの乗客や椅子まで大きい。そして私は、周りが大きいのではなく自分が小さくなったのだと気付く。


「いやー、赤音も今日で8歳か。早いもんだな。」背の高い(私目線だが)男が私の頭を撫でながら言う。不思議と悪い感触では無かった。


「水族館に着いたら何が見たい?」私ほどではないが、まぁまぁ美人の女が言う。


「あんこう!」私の口は、私の意思とは無関係に動く。


2人の男女は笑う。


「イルカや鯨はいいのか?」


「熱帯魚もいるわよ?」


「あんこう!」私は元気よく言う。


「よし、じゃあ一番最初にあんこうを見に行こうか。」男はにこやかな笑みを浮かべ言う。


「うん!パパ、ママ大好き!」私は二人の男女に抱きつく。そして、その直後バスは衝撃に襲われた。そして、目が覚めた。


------------------

ピーッ、ピーッ、ピーッと無機質な電子音が響く。


私はそっと目を開ける。汚れのない白い天井が見える。

私の目には涙が溢れていた。


私は、全て思い出した。ずっと忘れていた両親と過ごした記憶を。そして、バスの事故で両親を亡くしたことを。


私の体は何本もの管が通っており、それは点滴薬へと繋がっている。目を凝らして見てみると、記憶抑制効果増進剤と書かれている。それは家族が事故にあったその日、病院で点滴されたものと同じものだ。

おそらくこの薬のせいで、記憶を奪われていたのだろう。

管を抜こうとするが、体は動かない。


『せっかく、思い出した私の家族の記憶。忘れたくない。』私は心の中でも念じるが、自分の意識と相反して意識は遠のく。


『忘れたくない。忘れたくない。忘れたくない。』どんなに念じても薬にには勝てないようで、とうとう私は意識を手放した。


-----------------------

朝日が眩しい。私はもぞもぞとベッドから這い出す。そしていつも通り美味しくない配給食を流し込み学校へ走る。


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「皆さん、おはようございます。では、早速授業を始めますね。」丸眼鏡をかけた先生が教卓に立って言う。


「あれ、一時間目って国語ですよね?なんで先生が授業するんですか?」私がそう言うと周りから失笑が漏れる。


「まだ、寝ぼけてるんですか?一時間は数学ですよ。」先生は呆れたように私を見る。


「えっ!でも…。」私は反論しろうとする。


「お寝ぼけさんはほっといて、授業を始めましょう。」しかし先生は授業が大好きのようで、無視されてしまう。

授業に興味がない私は窓から空を見上げる。大きな入道雲がフワフワと浮いている。

そういえば他のクラスは230人なのに、なんでこのクラスだけ28人なのだろう。人数の割り振り方が、おかしな気がする。しかし先生の怒号により思考は四散し、私は二度とこの違和感を思い出すことは無かった。



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