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高校生の物語1

ピーッ、ピーッ、ピーッと無機質な電子音が響く。

私の体は何本もの管が通い、それはまるで私を拘束する鎖のように思える。

なぜか、私の目には涙が溢れていた。

一体どうして私はここにいるのだっけ?

しかし、薬の副作用だろうか。

私はまどろみの中へ意識を手放した。


------------------------


「もし、もーし黒木さん?黒木赤音さん。生きてますかー?」


「むにゃ?」私がゆっくり目を開けるとそこには大きな丸眼鏡があった。あっ、違った。大きな丸目が音をかけた女性が私の顔を覗き込んでいた。


「えーと?おはようございます。」


「はい、おはようございます。ちなみに、今何時か分かりますか?」眼鏡の女性がにこやかに私に問いかける。私は腕時計型の端末を起動させる。


「11時45分です。」


「それがどういうことか分かりますか?」


「えっと、あと15分で給食だということでしょうか?」周りから苦笑が聞こえる。丸眼鏡の女性は口元に笑みを称えながら睨んでくるという、難しそうな芸当をこなしてくる。


「貴方が1時間目から4時間目までずっと寝ていたということを意味していると思いませんか?」


「そういう捉え方も出来ますね。」正直、童顔の先生に睨まれたところでそれほど怖くない。


「それじゃあ、皆さんには15分間小テストを解いてもらいます。今日の授業をしっかり聞いていれば、分かるはずだからがんばってください。」先生は軽やかに教卓へと戻っていく。


「えっ、ちょっと先生待ってください。酷いです。」必死に弁明を試みるもそれは叶わない。


「酷いのは貴方の授業態度でしょ。」机に埋め込まれたプリンターから容赦なくプリントが出てくる。


「始め!」


------------------------

「あと15分で給食ということでしょうか?最高だわ。ハハハハ…。」詩織が可笑しそうに笑う。自分でも思い出してしまい、恥ずかしくなる。


「もう言わないで。」私は顔を手の平で隠す。


「よくそんなに寝れるよね。あんだけ揺すられても起きないなんて逆にすごい。」真帆が言う。


「えっ!私揺すられてたの?」二人の友人は同時に頷く。


「詩織とチャットしてたら朝になってて…。てか、あんた何で普通に授業受けてんのよ。一緒に寝てくれれば良かったのに。裏切者。」


「大丈夫、大丈夫。起きてはいたけどテスト一個も分かんなかったから。」


「いや、それは…。」


「御愁傷様。」


「そんな憐れむような目で見ないで。」


「私でも一問目は分かったのに。」


「あれ、分からないとかやばくない?」


守勢から形成逆転し畳み掛ける。


「そんなことより、リリウムヒルズの前に新しいカフェ出来たんだって。放課後行かない?」このぐらいで勘弁してやるかと思い、わざとらしく話を変える詩織に合わせてあげる。


「どんなとこなの?」


「おっ!さすが赤音。食べ物のこととなると食い付きが違うね!」


今度は徹底的にいじめ抜いてあげよう。そう思っているとキーンコーンと予鈴が鳴り響く。


「うわ、やべ!」話すことに集中しすぎていた詩織のお皿には、殆んど手をつけられていない合成食が残っている。


「…半分いる?」


「残さず食べなきゃ怒られるよ。」


「はぁ。」詩織は栄養満点(味は地獄)と評判の国民支給食βを鼻を摘まみ、水で流し込みなんとかお腹に詰め込んだ。


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