割りと変態で最低な勇者の話
「うぅ・・・。」
目を覚ますと俺はベッドの上に居た。
「あっ!!お婆ちゃん!!お兄ちゃん起きたよ!!」
「おぉ、そうかい?」
小さな子供と腰の曲がった老婆が、俺の元に駆け寄ってきた。一体誰だ?
・・・というか。
「うっ!!」
体の節々が痛んだ。なんでこんなに怪我をしてるんだ?
「コラコラ、まだ動かない方が良いよ。酷い怪我だったんだから。」
「そうだよ、お兄ちゃん突然空から降ってしたんだから。」
「空から?」
どうして俺は空から降ってきたんだ?
「アンタ名前は?」
老婆にそう言われても、名乗る名前なんて思い出さなかった。
「わ、分からない。俺は自分が何者なのか分からないんだ。」
「もしかして記憶喪失かい?これは困ったねぇ。」
老婆はそう言うが、一番困ってるのは俺だ。自分が何者なのか分からないなんて、気持ち悪くて仕方無い。
「お婆ちゃん、記憶喪失って?」
「自分が誰だったのか分からなくなっちゃう病気だよ。」
「えぇ!!大変だね!!」
幼子の言うとおり大変である。これから一体どうすれば良いのか?誰か教えてくれ。
「お兄ちゃん元気出して!!私はマールって言うの。お婆ちゃんの名前はダルク。お兄ちゃんが自分のこと思い出すまで、この家でゆっくりすると良いよ。ねっ、お婆ちゃん。」
「ほっほほ、そうだね。」
「えっ!?良いんですか!?」
そんなお人好しが、この世に存在するのか?
「良いんだよ、孫と私の淋しい二人暮らしだから、一人ぐらい増えた方が賑やかで楽しいさね。」
「あ、ありがとうございます!!」
世の中捨てたものじゃないな。なんだか感動して涙が出てきそうだ。
「あれ?」
ふと自分が右手に何も持ってないことに違和感を感じた。
「なぁ、マール。俺は空から降ってきた時に、手に何か持って無かったか?」
「いや、何も持ってなかったよ?何か大事なものでも失くしたの?」
「・・・いや、分からない。ただなんとなく、何か持っていた気がしたんだ。」
~二週間後~
二週間もすると俺はすっかり元気になって、ダルクさんの家の畑の野良作業を手伝うようになっていた。
「病み上がりなんだから、あんまり無理しないさんな。」
「はっは、体を動かしてる方が体の調子が良いんですよ。」
クワで畑を耕しながら俺は笑う。もしかすると俺は記憶を失う前にも、こんな仕事をしていたのかもしれない。
二週間もすると一つだけ分かったことがある。それは俺は切れ長の目で整った顔立ちのイケメンであるということだ。これなら女に不自由はしてなかっただろうな。
「お兄ちゃん、お水飲んで♪」
「おおっ、サンキュー。」
マールが汲んできたコップの中の冷たい水を飲むと、乾いた喉が潤い、とても良い気持ちになった。もう記憶が戻らなくても良いかもしれない。
ん?
俺は隣の家の御婦人が洗濯物を干しているのを見て、思わず近づいて御婦人に話し掛けてしまった。
「すいません、洗濯物はそれで全部ですか?」
「はい?」
なんでこんな質問をしてしまったのか自分でも全く分からないが、何故だか凄く気になってしまった。
「全部ですか?」
「い、いえ・・・下着類は家の中で部屋干ししてますけど。」
「そうか、家の中ですか・・・それは残念だ。」
「はぁ?」
御婦人がそう言うのはごもっとも。自分でもなんで残念なのか意味が分からない。
これ以上不審がられるとマズイので、俺は畑に帰って野良作業に戻った。
すると、しばらくすると空から声が聞こえてきた。
「ここに居たんですか。探しましたよ。」
綺麗な透き通った声、俺が天を見上げると、白いワンピース姿の青い長い髪の美人な女が、空からゆっくりと降りてくるのが見えた。それには驚いたのだが、とりあえず俺は見る角度を調節した。
「きゃ!!中を覗こうとするな!!相変わらずの変態ですね!!」
チッ、隠しやがったな・・・ん?俺は何を見ようとしたんだ?
「おやおや、また人が空から来るなんて、凄いねぇ。」
「凄い♪凄い♪」
ダルクさんとマールが各々リアクションをしていると、青い髪の女は地上に降りてきた。そうして降りてくるなり、俺にこう言い放つ。
「もう!!早く魔王退治に行きますよ!!」
「魔王退治?」
魔王退治とはなんだ?なんで俺がそんなことをしないといけないんだ?
「何ですかそのリアクション?まるで記憶喪失みたいですよ。」
うん、まさに俺は記憶喪失なんだよ。
「御嬢さん、その人は本当に記憶喪失なんだよ。」
「なっ!!あんな事をやらかしておいて記憶喪失とか!!良い御身分ですね!!」
この女は何を怒ってるんだ?やらかした?俺が何かをやったのか?
俺が何も分からずに首を捻っていると、ダルクさんが代わりに色々聞いてくれた。
「御嬢さん名前は?それでこの人のこと知ってるのかい?」
「私は水の女神。そこの人は縮めて"水神"とか呼んでましたけど、知ってるも何も、その人をこの世界に呼んだのは私ですから。」
水神か、確かに水の女神じゃ長いもんな。それにしても、この言い方だと俺は、今流行りの異世界転生者だったのか?凄いな。
「それにしても困りましたね。もしかすると魔王城の空間移送装置で移動した反動で記憶が飛んでしまったのでしょうか・・・でも、まぁ、それならそれで良いかもしれませんね。また一から今度は真っ当な魔王退治の旅に出れば良いだけの話です。頑張りましょう山田さん!!今度は真っ当な魔王退治の旅を!!」
水神に正面から両肩を両手でガシッと掴まれた。顔にもなんか圧があるし、やたら真っ当という言葉を押してくるし、本当に俺は何をしたんだ?あと名字は山田だったんだな。
「見つけたぞ!!」
また上から声が、気になって空を見ると、そこにはスタイルの良い黒いビキニ姿の赤い髪の女が居た。しかし、その女はただの女では無く、両手両足が鳥の足のようになっていて、一番の特徴は背中に大きな鷹のような茶色の羽の翼を持っていることであった。
「お、お前は十二神将の一人!!ハーピィのルフワ!!」
大袈裟に驚く水神だが、ダルクさんとマールはニコニコして「また、お客が来た」と喜んでいた。
しかし、どちらかといえばルフワは招かれざる客であった、
「えぇい!!外野はうるさい!!おい!!勇者!!貴様は八つ裂きにして殺して、例のものを返してもらうぞ!!」
十二神将という肩書きを持ってるくせに余裕無く激昂しているルフワ。綺麗な顔が台無しだぞ。返してもらうということは、俺が何か奪ったということだろうか?
「だがタダ八つ裂きにするだけでは飽きたらん!!そうだ!!この町も全滅させてやる!!」
そこまで言うとビューッ!!と何処かに飛んでいってしまったルフワ。何処に行った?
"ドガーン!!"
凄まじい轟音がルフワの飛んでいった方から聞こえてきて、するとまたルフワがこっちに戻ってきた。先程と違うのはニタリと邪悪な笑みを浮かべていることだろうか?
「ふはははは!!この村の貯水タンクに大穴を開けてやったぞ!!大量の水がこの村に流れ込んで、全員お陀仏コースだザマーミロ♪」
な、なんてことしやがる!!
ルフワの言った通り、夥しい量の水が大波のように村に迫っていた。
逃げ惑う村の住民達だが、今から逃げても間に合いそうに無い。
ダルクさんも「もう、おしまいだねぇ」としみじみ言っている。
「おいっ!!お前は水神なんだから、あれぐらいの水なんとかしろ!!」
俺は水神を怒鳴ったが、水神は悔しそうに唇を噛んでいた。
「わ、私は神なので、下界の事には干渉できません。」
チッ!!使えない!!このままだと御世話になったこの村を俺のせいで潰してしまう・・・それは駄目だろ!!
「あはははは♪自分の愚行を呪え勇者よ!!」
もう駄目かと思われた。だがその時、ルフワの翼が起こした風が、水神のワンピースのスカートをフワリと浮かせて、水神の紫のレースパンティが見えた瞬間に俺の体に電流が走った。
「おい!!水神!!」
「な、何よ!?」
ここで普通なら有り得ない爆弾発言を俺はした。
「一刻も早くお前のパンティを寄越せ!!」
「げぇ!!アンタ記憶が戻ったの!?」
「うるせぇ!!早くしろ!!」
「えぇ・・・確かにそれなら、なんとかなるけどぉ・・・女神のパンティを・・・その。」
「おい、お前が寄越さないなら、俺自らの手で。」
俺が右手をワキワキと動かすと、水神は「ひぃ!!わ、分かったわよ!!」と悲鳴を上げて、パンティを脱いで俺に手渡した。
手渡されて俺は、まず感想を述べた。
「うん、流石は脱ぎたて、ホカホカだな。」
「死ね!!早くしろ!!」
そうだな、早くしないと。
「ねぇ、お兄ちゃん。お姉ちゃんのパンティをどうするの?」
ここでマールからの良い質問。これには答えてあげるが世の情け。
「こうするのさ!!」
俺は両手でパンティを天に高々と掲げ、それをそのまま頭に被った。
「うん、ジャストフィット。」
決め台詞も決まったところで、ここで俺の能力について説明しよう。
俺の能力は『パンティ・オン・ザ・ヘッド』と言い。女性の履いていたパンティを頭に被ることにより、そのパンティの持ち主と同じ力、同じ能力を持つことが出来るのだ。ちなみにパンティの持ち主は、俺がそのパンティを持ち続ける限り、パンツ類を履くことが出来ない。
「あー!!スースーする!!私の能力の使い方は分かりますか?」
「もちのロン。バッチリだぜ!!」
俺は迫り来る水に向かって右手を出して水神の力を使った。
すると水はピタリと動きを止めた後、元来た道をUターン。全て壊れた貯水タンクに戻り、そこで俺は今度は水を凍らせて固定した。
「どんなもんだい!!」
「凄いやお兄ちゃん!!」
「わー、私のパンティを頭に被ってなかったら拍手喝采で誉めてあげるのに。」
うん、このマールと水神の温度差、中々イイね!!
俺のナイスな作戦が成功して、ルフワは露骨に嫌そうな顔をしてる。
「チッ、小癪な!!こうなったら直接やってやる!!水芸で私を倒せると思うなよ!!」
確かにその通り、水神の力では十二神将は倒せない。ここで奴に勝つにはアレが要るのだが、アレ行方不明なんだよな。
「お兄ちゃん、コレ!!」
ん?マールが何か布のような物を差し出してきた。俺がそれを手を取って広げると、それは猫ちゃんの顔がいっぱいプリントされた可愛らしいパンツだった。
「駄目!!駄目よ!!マールちゃん!!マールちゃんのパンツじゃ何の力も使えないし、幼児のパンツは流石に絵面的にマズイ!!」
「ふん、何を勘違いしている?これはれっきとした大人の女性のパンツだぞ!!これさえあれば、お前のパンティ何か要らん!!オラァ!!」
"バンッ!!"
「おいっ!!女神のパンティを地面に叩きつけるな!!」
そして俺はこのパンツを頭に装着。
「うん、ジャストフィット。」
俺がこのパンツを履くと、ルフワはこのパンツの持ち主が誰か分かっているらしく、ブルブルと体を震わして怯えだした。
「そ、そのパンツは・・・やはりお前は盗み出していたのか。」
「あぁ、そうさ。廊下ですれ違った時に盗んでおいたのさ・・・魔王のパンツをな!!」
俺はそう自信満々に言ってやった。
俺はあの日、水神の持ち物の"何処へでも行けるフープ(一回限り、在庫なし)"を使い魔王城に侵入。魔族の兵士を装い魔王(褐色美人の絶世の美女)とすれ違い、パンツを盗みだし、何食わぬ顔で空間転移装置で脱出したわけさ。まぁ、記憶喪失になったのは計算外だったがな。
「そういえばマールはなんで、このパンツをガメてたんだ?」
「うん、可愛かったから宝物にしようと思って。」
「確かに可愛いよな。魔王ってあんな感じなのに幼児趣味なんだな。」
でもギャップ萌えだな。点数高いよこれ。
「貴様!!魔王様を愚弄するな!!お前のせいでパンツ穿けなくて引きこもってしまわれたんだぞ!!大体魔王様は鎧を着込んでいたのに、どうしてパンツを盗めた?」
このルフワの問いに俺は余裕綽々で答えてやった。
「バカだな、俺は元の世界では天才下着泥棒だぜ。その気になればどんな女も一瞬で全裸に出来る!!」
「もう、なんでこんな人召喚したのか・・・自分が嫌になる。」
メソメソするな水神。俺は今や最強の勇者様だぜ。
「そ、そんなパンツ一枚頭に被ったぐらいで、魔王様の力を全て引き出せる筈がない!!死ねぇ!!エアロトルネード!!」
"ブォオオオオオオオ!!"
巨大な竜巻が俺を襲うが、俺はバリアを張ってそれを防いだ。しかもこのバリア、敵の攻撃を2~3倍に返してしまうという優れもの。
"ブォオオオオオオオオオオオオオン!!"
「ギャアアアアア!!」
吹っ飛ぶルフワ、俺はルフワを全速力で追った。そして追い越して、ルフワを掴んで、さっきの水神のパンツの様に地面に叩きつけた。
"ドゴーン!!"
「ぐはぁ!!」
おぉ、クレーター出来たわ。流石は魔王パワー。
「クッ・・・ま、まさか、本当に魔王様の力を使いこなすとは・・・これは一時撤退だ。」
「おいおい、ちょっと待て。タダで返すワケ無いだろ。」
俺はサイコキネシスでルフワの体の固定した。
「うぅ・・・動けない。畜生!!」
「まぁ、落ち着け。お前が助かる道は一つだけある。」
「な、なんだ、それは?」
ビシッと指差しながら、俺は言ってやった。
「その今穿いてる黒いパンティ寄越せ。」
「うぇーん!!バーカ!!バーカ!!覚えてろバーカ!!」
ルフワはそんな捨て台詞を吐きながら、右手で股間を、左手でお尻を隠しながら飛んで逃げて行った。
よし、十二神将の一人のパンティゲット、あと11人も居るし、四天王も居るしでパンティコレクションがドンドン増えるぜぇ♪
「お兄ちゃんって鬼畜だね。」
「そうだねぇ、外道でもあるねぇ。」
おや、ダルクさんとマールの評価がここに来て駄々下がりか、まぁ、これで湿っぽい別れはしなくて済むな。
「早く魔王のパンツ脱げ!!変態勇者!!」
水神はゴミを見るような目、というかゴミを見る目で俺を見てくる。うん、これはこれで良いね。
貯水タンクは今日中に応急措置は出来るようで一安心。一件落着ってね♪
「なぁ、山田さん。」
「ん?どうしました?ダルクさん。」
「村を救ってくれたお礼に、ワシのパン・・・」
「お、お気持ちだけで結構です!!」




