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第8話「盛り上がれ!盛り上げれ!死神♪」

「後半のスタートは、前半の続きのメンバーです。おっと。死神はペアを変えましょうか」

 FW:ジャエル 真子

 MF:拓海 希

 DF:一太

 死神:大樹 正人

 GK:豪


 後半は相手ボールからのスタートだった。

 西戸山少年サッカーチームもハーフタイムにアドバイスをされたのか、キーパーもパス回しに参加して、ボールをキープしている。

 全員でパス回しをされているのを、イヌのようにボールを追う死神ポジションの2人。

 8対2でキープされているのだから、ボールを奪えるわけがない。

 しかし、サッカー素人の大樹君と正人君は、特に疑問に思うことなく、全力でボールを追いかける。


 大樹君は、大樹くんのお父さんの趣味のマラソンの影響で、夜一緒に走っているらしく、チーム内では無尽蔵の体力、とか、体力お化け、とか、ケニア人、というあだ名で呼ばれている。


 そんな大樹君のプレッシャーに負けて、こぼれたボールを正人君が拾い、放ったシュートがたまたまゴールに入った!


 これには、頭のおかしい2mのアメリカ人…ではなく監督。

 監督の絶叫だけではなく、サイドラインで見守る選手たちも絶叫した!


 ド素人二人で決めたゴール。

 8対2で決めたゴール。

 正人君のシュートなんて、つま先蹴りで蹴ったボールが、真直ぐ飛ばず、偶然ゴールの中に納まっただけのシュートだ。

 他の監督だったら、怒られているかもしれない、情けないシュートだ。

 

 だが、今、このチームには絶叫のブームが来ている。

 ボールを奪えば喜び、パスが通れば喜び、シュートを打てば喜び、そしてシュートが決まれば、膝をついて点にこぶしを上げて絶叫する。


 大人がやっている行動を、子供はマネしたがるものである。

 お調子者の雄二君が、同じポーズで絶叫すると、それはチーム内に伝染し、気が付けば全員が同じポーズで絶叫していた。

「ゴーーーーーーーーーーーーッル!!!」

 と言って、両腕を上げて喜んだ。



「さあ、雄二くん、由香里ちゃん、今度は君たちの番デスヨ!」

「「はい!」」

 雄二と由香里がピッチに走っていき、大樹と正人がサイドラインに戻ってきた。

 まるでヒーローの帰還だ。

 相手のパス回しが前半よりも長かったので、その分、二人の体力は相当削られていて、呼吸は激しいのだが、顔からは笑みが漏れている。

 選手の後ろには、父兄が見に来ていて、「大樹グッジョーブー!」という声や、「正人!ナイシュー」という声が聞こえてくる。


「大樹君、正人君、後ろを振り向いて、ガッツポーズで答えてあげなさい!」

 たんぽぽちゃんのお父さんがそう言うと、大樹と正人は振り返ってこぶしを上げた。

 すると、「おー」という声と共に、拍手が巻き起こった。


 僕は小学校に上がる前からサッカーをやっているけど、こんなことは初めてだった。


 

 試合が再会され、今度は、雄二と由香里がイヌのようにボールを追いかけ始めた。

 由香里なんて、たんぽぽちゃんが引っ越してくるまで、サッカーをバカにしてたくらいなのに、今は一生懸命ボールを追いかけている。

 雄二はずっと一緒にサッカーをやってきたけど、全然うまくならないやつだった。サッカーをやっているのに、ボールの扱いが上手くならなくて、足ばっかり速くなるやつだ。だけど、今は、その足の速さが武器になっているし、やっぱり経験者だ。体の入れ方が上手い。

 雄二はパスを出す相手の先に上手く足を入れて、ボールを奪った。

 そして、雄二がボールを奪ったのを見ると、由香里が逆サイドへ弧を描くように走り、そこへ雄二がパスをだした。

 そのパスは由香里の遥か前方にゆっくり転がり、誰もが取れないと思ったけど…なんと由香里はそのボールに追いついて、シュートを放ち…ゴールに突き刺さった。


 僕の心は震えた。

 あの、チーム1サッカーが下手くそだった雄二がボールを奪いパスを出し、サッカーをバカにしていた由香里がシュートを決める。

 二人をよく知っている僕だからこそ、素人の大樹と正人がシュートを決めることよりも、雄二と由香里がシュートを決めたことの方に驚いている。



 そして、僕は誰よりも「ゴーーーーーーーーーーーーッル!!!」

 と言って、両腕を上げて二人を祝福した!



 その後もずっと、こっちのペースで試合は進み、結局、6対0で勝利した!



 午前の試合が終わり、お弁当を食べようとしたところ、健介がお弁当を持ってきていないことがわかった。

 いつもは、みんなで囲むんでお弁当を食べるのだけど、どうしたものか?

 と考えていると、たんぽぽちゃんのお母さんが、5人分くらいのお弁当を作って来ていたらしく、健介くんはそれを食べていた。


 めっちゃ和食…

「たんぽぽちゃんって、なんだか、サンドイッチと紅茶ってイメージだけど、和食なんだ!」

「うん!サンドイッチも大好きなんだけど、お弁当はママの作った唐揚げと玉子焼きが好き!ねパパ?」

「ああ。お母さんの料理は天才的だからね!ほらっ。希ちゃんも由香里ちゃんも食べなさい!」

 そう言って、たんぽぽちゃんのお父さんは、お弁当のおかずをみんなに配って回った。

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