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第5話「全員レギュラーですよ?」

 たんぽぽちゃんのお父さんの提案に、ほとんど全員が疑問を持った。

 だって、少年サッカーは8人制なのに、チームに16人いるとサッカーが出来ない子が増えちゃうんだもん。

 人数が少ないとサッカーができないけど、人数が多いと出場できない子が増えちゃう。

 僕も出場出来なくなると嫌だなぁ。


「あのー…アンダーソンさん、質問よろしいでしょうか?」

「おお、どうしました?えーっと…」

「良の母親です。16人に増やすと、サッカーが出来なくなる子が増えませんか?」

「良君のお母さんですか。ご質問アリガトウゴザイマス。16人全員がレギュラーですので大丈夫ですよ。8人制サッカーは11人制と違って、交代が自由なのです。こじろうくんのお父さん、間違いありませんね?」

「はい…そうですけど…それはサッカーが上手くない子も出る…ということなのでしょうか?」

「オオ!それはありません。なぜなら、こじろうくんのお父さんが、みんなのサッカー技術を向上させるのですから!」

 そう言って、たんぽぽちゃんのお父さんは僕のお父さんにウィンクを送った。



☆☆☆



 4月19日、翌週の金曜日の終わりの会。

「ええな!イジメは犯罪です!もしこのクラスにイジメがあったら、警察に行くから言うてな!僕はイジメを隠蔽しません!少年院でも独房にでも入ってもらいます!でもそうなる前に、先生に言うて下さい!先生がイジメっ子をやったるからな!ということで、良い週末を過ごして下さい」


 今週も立花先生の恫喝まがいの素敵なスピーチで平日が締められた。


「こじろう。明日、正人がチームに来てくれるって言ってたけど、お前は誰か誘えた?」

「うん。実は…健介が来てくれことになったんだ…」


 立花先生がイジメ問題を警告したのには理由がある。

 僕たちのクラスにはイジメがある。


 健介君はお父さんがいなくて、お母さんが歌舞伎町で働いてるってことで、イジメられている。

 健介君も言い返さないから仕方ないと、僕は思っている。


 普段は話さないけど、僕はダメ元で健介君をサッカーチームに誘ったら、一度見学に来てくれることになった。

 


☆☆☆



4月20日。

翌朝、練習に行くと、5人の体験入部者が来ていた。


「オオ!素晴らしい人たちが集まってくれました。では、みなさん自己紹介をお願いします!」


まとめると、こんな感じだった。


正人:5年生。サッカー経験者。たんぽぽちゃんに釣られて仮入部。

健介:5年生。いじめられっ子。運動は未知数。

ジャエル:5年生。サッカーをやりたかったのだが、誘ってくれる人がいなかった。

真子:5年生。関西からの転校生。サッカー経験あり。

大樹:4年生。サッカー未経験。父親の影響で長距離走が得意。



☆☆☆



「自己紹介アリガトウゴザイマス!では、練習をしたいのですが、その前に、私は確認したいのです!」

 まーた、たんぽぽちゃんのお父さんのプレゼンが始まった。


「では、正人くん!サッカーはどうやったら勝てるのか知ってますか?」

「はい。相手より点数を多く取ったら勝てます!」


「グレイト!素晴らしいですね!では健介君!点数とはどうやって入るのですか?」

「う…シュ…シュートを打って…ゴールに入れれば…」


「オーウ!健介君!君も天才でしたか!君はサッカーをするために生まれてきたような人ですね!では、シュートはどういう時に打てばいいのでしょう?誰か答えがわかる人はいらっしゃいますか?」


「はい!」

「オオ!雄二君、教えてくれるのですね!」

「ゴールを決められると思った時だと思います!」


「うーん。雄二君、その答えはちょっと曖昧ですね。実は私も色々本で勉強したのですが、どのタイミングでシュートを打つべきなのかは書いてないんですよ。こじろうパパはご存知ですか?」

「はい。シュートを打つべきタイミングは、試合の流れで決まるので、このタイミングで!って決めるのは難しいと思います!」


「オーウ!出ました。【流れ】こじろうパパ。すみませんが、古宿少年サッカークラブでは【流れ】という言葉は禁止します。どうもサッカーは【流れ】という言葉で誤魔化されています」

 

 たしかに!と僕は思った。

 サッカーは【流れ】のスポーツだ。

 この時の【流れ】だとシュートを打てと教わったにも関わらず、同じようなシチュエーションでシュートを打ったら、今度は、今はそんな【流れ】じゃなかった。パスを出す【流れ】だった、と怒られたりした経験がある。


「いいですか?【流れ】などという曖昧なもので点数は取れません。システムで取るのです!」

「「「「「システム?」」」」


「このホワイトボードを見て下さい!」

 ホワイトボードにはマグネットが5つ付けられていた。


「良いですか?私たちは2-2-1システムを採用します」

「ちょ、ちょっと、アンダーソンさん!計算が合わないんですけど!2-2-1だとゴールキーパーを合わせて6人になっちゃいます。でも、僕たちは8人制です!」

 とっさに突っ込みを入れてしまった。


「ウォーウ!さすがこじろう君です!気付いてしまいましたか!後の2人は後日、教えますので、まずは、この2-2-1ポジションからシュートを打つシステムを覚えて下さい」


 たんぽぽちゃんのお父さんは、マグネットを動かして、動きを説明した。

 システムは単純で、FWの2人とMFの2人が時計回り、反時計回りに動いてパス回しをする動きだった。

「では、今日は全員で、このパス回しを覚えマス!明日は、ここからシュートを打ってみましょう!」



☆☆☆



 4月27日。

「みなさん、おはようございます!では、本日も練習を行います!が、その前に!来週の練習試合のポジションを発表したいと思います!」


 え?当日じゃなくて、今日、発表するの?

 と、思ったけど、まあ、たんぽぽちゃんのお父さんのことだ、何か理由があるんだろう。


「まずは、フォワード!こじろう君!ジャエル君!真子さん!」

 おお…意外と無難な選択だ。経験者で固まっている。

 が、3人?2-2-1のシステムとか言ってなかったっけ?


「では、次に、ミッドフィールダー!剛君!拓海君!希ちゃん!」

 ええ?サッカー経験者でもなく、運動も逃げてな希が?


「ディフェンダー!達也君!一太君!」

 まあ、ここも無難か。


「そして!このチームの核となるオリジナルポジションです!死神!雄二君!たんぽぽちゃん!由香里ちゃん!大樹君!健介君!正人君! この死神ポジションについてはこじろうパパから説明があります!」


「最後にゴールキーパーは豪君です!」



 僕たちは、死神ポジションの役割を聞き驚いた。






 まさかの…ボールに特攻するだけのポジション…それが死神ポジションだった…

【古宿少年サッカークラブ】

FW

こじろう:5年生。運動神経が良くドリブルとシュートが得意。ディフェンス全般は苦手。

ジャエル:5年生。サッカーをやりたかったのだが、誘ってくれる人がいなかった。

真子:5年生。関西からの転校生。サッカー経験あり。


MF

剛:5年生。なんでもそこそここなすタイプ。

拓海:4年生。キック力があるが正確性にかける。

希:ピアノが得意な女の子。運動音痴で、サッカーは初心者。



DF

達也:5年生。パスが得意。足が遅くドリブルが苦手。

一太:4年生。サッカーは上手いが、軽い喘息持ちで体力がない。



死神

雄二:5年生。体力バカのお調子者。ボールを蹴るのが苦手。

たんぽぽ:運動神経抜群の女の子。サッカーは初心者。

由香里:水泳が得意な女の子。足は速い。サッカーは初心者。

大樹:4年生。サッカー未経験。父親の影響で長距離走が得意。

健介:5年生。いじめられっ子。運動は未知数。

正人:5年生。サッカー経験者。たんぽぽちゃんに釣られて仮入部。


GK

豪:5年生。体が大きい。キック力がある。


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