第38話「作戦無視は問題じゃない」
山の頂上でのランチタイムはすっかりお菓子タイムに変わっている。
達也と一太は、二人のお母さんが作ったクッキーやチーズケーキを人数分持って来ていた…重かっただろうに。
苦くて飲めなかった本格コーヒーが、手作りの本格おやつにめっちゃ合う。
ビギンとハンチングくらい。
リラックスムードの中、たんぽぽちゃんのお父さんと大樹くんのお父さんの話題はサッカーへとなっていった。
「ところで、たんぽぽちゃんのお父さん、【星野君の二塁打】をご存知ですか?」
「いえ、初めて聞きマシタ。なんでショウ?」
「ええ。野球を題材にした話しなんですけど、重要な場面で、監督が星野君に、送りバントを指示するんですよ。しかしその指示を、星野君が無視してバットを振るんです。するとそれが二塁打になってチームは勝利するんですよ。だけど、次の日から、星野君はレギュラーを下ろされてしまいます。と言った話です」
「ああ…ナルホド。作戦を無視した結果、勝利したわけデスカ。で、そのペナルティとして降格したわけデスネ」
「そうですね。今、古宿少年サッカークラブは【作戦】重視のチームを作られているので、その【作戦】を無視した場合、選手はどうなるのか…とふと疑問に思いまして」
「あー。特にユニフォームを脱いでもらうことはありまセン」
「あ…意外とあっさりしていますね…」
「ただ、テストで80点未満なら、ユニフォームを脱いで頂きマスヨ」
「え?作戦を無視するよりも、学校の成績重視なんですか?」
「そうデスネ。作戦を無視する理由がきっとあるでショう?その時のひらめきが成功しようと失敗しようと、作戦を無視した理由を説明出来れば、それでいいデスヨ。それよりもダメ…というか認められないのは、やるべきコト…学生なら勉強をしないコトは許せません」
「な…なるほど…徹底されていますね…」
「ええ…あ!あと!危険行為デスね。乱闘騒ぎを起こしたり、ヘディングをしたり、自分や相手を傷付けるようなことをした場合は、退場して頂きマス」
「ヘディング以外だと、サッカー関連では、ないんですか」
「ありまセンね。そもそも古宿少年サッカークラブにはレギュラーとか控えとか、ありまセンから」
「たしかに…」
「それに、その星野君って送りバントの練習をしてたんデスかね…」
「さあ…」
☆☆☆
山の中腹に戻り、よくわからない神社にお参りをした。
馬に乗った武将の銅像をバックに記念撮影を行った。
登りの時にも通ったはずの道に戻ってきたはずなのに、沢山の屋台が出ていることに気が付いた。