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第29話「こじろうママの事情」

頭からお尻までを一本の棒が突き刺さってると思って歩く。

授業中に座っている時も、一本の棒を意識して座れば立派なトレーニングになる。

日頃、運動をしている人はこれだけで体のブレがなくなり、走るフォームが矯正される。


こじろう君は、もちろん、日頃運動をしている人だ。

運動神経は悪くないし、毎晩お父さんと簡単な運動をしているし、毎週末サッカークラブで体を動かしている。



☆☆☆



「きゃーっ!あんた達!何やってんの!?」

こじろう君のお母さんが絶叫した!

自分の息子の頭とお尻に割箸が刺さっている。

割箸を刺そうとしているのは、小学校に入る前から息子の親友だった達也君と、最近友達になった健介君だ。

イジメ?

こじろう君のお母さんが、とっさに想像したのは、息子がイジメにあっているのかも知れない、ということだった。

同じサッカークラブには、イジメを経験した、萌ちゃんと健介君がいる。

イジメは伝染するとも言うし、イジメられていた当の本人である健介君も今ここにいるので、それを疑うのも無理はない。



「なんだよ!何でもないよ!」

何でもない?

頭とお尻に割箸を刺している息子が何でもない…と答えている。

よく見ると、頭とお尻に刺さっている割箸はセロハンテープで固定されており、皮膚を貫いて刺さっているわけではなかった。


危険なことをしているわけではないのだろうけど、やっていることの意味がわからないし、逆ギレしてくる息子にも若干腹がたつ。


「何でもないわけないでしょ!何をしてるのか説明しなさい!」

そうだ!私は間違っていない!自信を持とう。

母親というのは息子を危険から守りたいだけなのだ!


「もう!足を速くする特訓だよ!」

…はぁ?

足を速くする特訓?

頭とお尻にセロハンテープで割箸を固定するのが足を速くする特訓…

ダメだ。話しが通じない。

男の子はみんなこうなのか?

同じマンションの同級生、達也君は息子と違って賢い子だと思っているのだけど、こういう風にたまにわけのわからないことを息子として私たち母親を驚かせる。


「どういうこと?」

クールにいこう。頭ごなしに怒らず冷静に。

もう一歩深く説明を引き出せば理解出来るのかもしれない。


「もう!面倒臭いな!頭とお尻に棒を通せば足が速くなるんだって!」

ムキーっ!

もう知らん!

もう心配してやらんからな!


私は諦めて夕飯の買い物に出かけようとすると…

「僕、唐揚げか生姜焼きが良い!」

もうっ!要求ばっかりしてきて!

クソバカ息子!

お前はいっつも唐揚げと生姜焼きじゃないのよ!



最近まで、息子のこじろうの考えている95%くらいは意味がわからなかった。

こじろうは一人っ子ということもあり、比較対象がいない。

どうしても、達也くんと比較してしまうのだけれど、大きくは違わない。

私がこじろうのことで困っている時は、達也くんのお母さんも達也くんのことで困っている。


しょっちゅうポケットの中に虫や草を詰めて帰って来るし、大きいうんこが出たら流す前に見て見てって騒ぎ出す。それで私が喜ぶとでも思っているかのようだ。


私は息子にもお洒落をして欲しいと思って、伊勢丹とかで、可愛い子供服を買うのだけど、こじろうはそんな服は着ない。

クソダっサい、謎のサッカーチームのユニフォームをデロンデロンになるまで着倒す。そんなサッカーチーム存在しないんだぞ、息子よ!


機能性を重視している?

そんなはずはない。

雨の日用に長靴を用意してあげても履かない。

べっちゃべちゃになろうとも、お気に入りの靴を履いていく。

理由は、長靴ってダサいから。

さすがにムカついたので、夫に叱ってもらおうと思ったら、「あのくらいの歳の男って長靴が履きたくないんだよ。わかってやれよ」と遠い目で言われた。

殺意は息子ではなく夫に向いた。


それよりもら1万円で買った服が399円て買った服に勝てない衝撃は凄い。

女の子のお母さん連中には、安上がりで羨ましいって言われるけど、男の子のお母さん連中には、わかるーっ、なんか寂しいよねと言ってもらえる。


そんなことを思いながら、唐揚げ用の鶏肉を探している私って…



☆☆☆



最近になって50%くらい息子のことが理解できるようになった。

理由は同じマンションに引っ越してきた、たんぽぽちゃんだ。


これまで、息子は女の子の話題になると、若干口が悪くなっていた。

大人しい系の女の子を表すときは幽霊みたいな子と言い、活発な女の子を表す時は性格のキツい子と言っていた。

クソバカ息子には語彙力なんてない。

保育園からお友達の由香里ちゃんと希ちゃんは性格のキツイ子だし、最近お友達になった真子ちゃんも性格のキツイ子だ。

ちなみに、三人とも全っ然違うタイプの子だ。


その息子にたんぽぽちゃんってどんな子って聞くと、顔を真っ赤にして黙り込んだ。


悔しいが、クソバカ息子は可愛い。


サッカーの試合の合間、息子はチームメイトと楽しそうに話しているが、たんぽぽちゃんとだけは話しをしない。

由香里ちゃん、希ちゃん、真子ちゃんとは楽しそうに話すのだが、たんぽぽちゃんが会話に入ると、達也くんの後ろに隠れるように逃げてしまう。

思わず笑ってしまった。

ってゆーか、めっちゃかわいい。


たんぽぽちゃんは、ハーフで顔も整っているし、ちゃんとしていて可愛いんだけど、たんぽぽちゃんに恋するバカ息子がかわい過ぎてヤバい。


たんぽぽちゃんと知り合って、若干お洒落にも目覚めたようだ。

この間は、学校に行く前に、2枚の謎のユニフォームを並べて、どっちのユニフォームがカッコいいか見比べていた。

ウケる。どっちもダセェ。


「お母さん、どっちの方がいいと思う?」

「たまにはこういうの着てみたら?」

と、伊勢丹で買ったお洒落服を取り出して、提案してみる。

どう見ても、伊勢丹の1万円がお洒落だ。


「うーん。やっぱりこっち!」

と、私のアドバイスを無視して、クソダサユニフォーム白を選択した。

ヤバい。めっちゃバカ。


そう思っていると夫が「おっ!今日もきまってるじゃん!」と息子のダッサイ服を褒め、息子は「うん!」と満面の笑みを浮かべて、学校へ向かった。


クソバカ息子…ごめん、かわい過ぎる。

でも、クソバカ夫!お前はダメだ!

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