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第15話「僕のぼやけた頭」

 5月14日火曜日。

 今日は社会のテストがある。

 このテストで80点以上を取れば、サッカーの練習に参加できるんだ!


 テストが配られて、問題を見ると、めっちゃくちゃ簡単だった!

 よしっ!これは、健介と予習もしたし授業でも確認した。


 大陸、大陸…っと。

 ユーラシア、アフリカ、南北アメリカ、オーストラリア…と、あ!南極だ!

 海洋は、太平洋、インド洋、大西洋…よしよし。おおにしひろしで間違いない。


 結果は翌日返してもらったんだけど、100点だった!

 やったー!これでサッカーが出来る!


 でも、不思議だ。

 こんなにテストって簡単だったんだっけ?



☆☆☆


 5月16日木曜日。

 昨日のテストの件が気になったから、立花先生に聞いてみた。


「先生?なんで僕は100点が取れたんでしょう?」

「え?こじろう君が一生懸命勉強したからじゃないのかい?」

「え…んーん…一生懸命にはしてないかも。だって、しんどくはないし…」

「え?ええ…こじろう君、一生懸命やることと、しんどいというのは関係ないことだからね」

「え?関係ないんですか?」

「そうだね。一生懸命やって楽しいこともあるし、一生懸命やると辛いこともあるだろう?」

「うーん。あるかも」

「そう。だから、こじろう君は、勉強がそんなに嫌いじゃないんだよ。だから一生懸命やっても辛くないんだろ?」

「うーん。そうなのかな?わかんないや」

「まあ、わかんないこともあるねぇ」

「立花先生にもわかんないことがあるの?」

「わかんないことだらけだよ。ほんっとに沢山わからないことがあるよ」

「へー。先生は強いし、賢いからわかんないことなんてなさそうだって思ってたよ」

「そう見せてる、高等テクニックだね。先生はみんなこのテクニックを使ってるにすぎないよ」

「へー。僕もそういうテストがずっと満点になる高等テクニックが使えたらなぁ」

「それは、こうやって日々、勉強することが、その高等テクニックにつながるんだよ?」

「うー…そうかー」


「みんなの好きなサッカーもそうだろ?先生はサッカー全然わからないけど、次の試合で使う戦術を練習して、次の試合で発揮するんだろ?」

「あ!そっか!それで今、セットプレーばっかり練習してるんだ!」

「へー、あ、そういうなんだ!」

 あれ?以外にも、みんなが共感してくれている。


 なんとなく、薄っすら、たんぽぽちゃんのお父さんがやろうとしていることが見えてきた気がする。

 だけど、まだ把握できていない、そんな感じだ。




 サッカーというのは、なんとなくぼやけているスポーツだ。

 たんぽぽちゃんのお父さんが、初めに行った、【流れ】という言葉を禁止したのは、このぼやけた感覚を消し去ろうとしてるんじゃないんだろうか?


 僕のお父さんが一人で監督をやっていたときは、練習はとにかくサッカー技術の向上だった。

 そのお陰で、クラブにいるみんなは綺麗にボールが蹴れるし、ドリブルが出来るし、パスが出来る。

 それぞれ得意不得意はあるけど、技術は向上している。


 一方で、たんぽぽちゃんのお父さんが来てからは、試合に勝つことを目標としてるので、試合運びを重点的に練習している。

 キックオフからゴールまで、ポジションごとにやるべきことが決まっていて、悩むことがない。

 以前は、ポジションは決まっていたものの、それぞれが適当に動いていたので、今思うと動きに統一性がなかった。

 今だって、自分の役割をこなせる人と、こなせない人がいるので、動きに統一性があるかと言われれば疑問だけど、やろうとしていることは一致しているので、次の動きに悩むことはない。

 そういえば、以前はどこにパスを出せばいいのか、どこに走ればいいのか、常に悩んでた。

 あの、悩みは必要のない、悩みだったというのが、よくわかる。

 

 勉強だって一緒だ。

 次に出るテストの範囲が決まってるんだから、そこをすればいい。

 なんで、以前の僕はテストに関係ないところを読んだり、出ない漢字を覚えたりしてたんだろう?

 それに、テストの解き方も知らずに、テストを受けてたんだろう?

 って、思えてくる。



 たんぽぽちゃんのお父さん風に言うと、僕はずっとぼやけた感じの【流れ】に乗っていて、それでいて、乗っていなかったんだと思う。




「おーい。こじろう君、聞いてるかー?」

「あ!聞いていませんでした!」

「やっぱり」

 また、みんなに笑われた…

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