炎の中で君を想う
切ない話を書きたくなり、投稿しました。
炎が燃える。
___ ガサッ
『 見つけた。』
ガサガサと草をかき分けたどり着いた野原に、あいつはいた。
白い花に囲まれて、風が吹く度に金色の髪が見える。
よいせと横に座り足を伸ばす。隣に転がるそれは何も反応しなかったが、起きているのは分かっていた。
『 また上級生と揉めたんだって?相良先生怒ってたよ。』
また一週間雑用やらされるかもね、なんて笑えば、もぞもぞと体をこちらに向けた。
「 だってあいつら、ネルフェのこと魔女とか言ったから、」
だから、殴った。と拗ねたように言うから、私はそっと手を伸ばし、金のそれを撫でた。
ふわり、風が吹く。
さらさらと流れる金を眺め、視線を下にすれば瞼を閉じて笑うあいつの顔が見えた。
幼子のように目を閉じるあいつに少し笑う。穏やかな春の陽射しが、私たちを照らした。
と、突然手を掴まれ、ぐいっと体を引き寄せられた。
流れるような動作に身を任せれば、温かい体に包まれた。
「 それよりさ、この間面白そうな洞窟を見つけたんだ。古そうな感じだったし、絶対なんかあるよ。」
と、目の前の顔がふにゃりと歪む。
猫のように細まった目は爛々と輝いていて、これはもうさっきのことなんて覚えてないなと呆れながら、にやりと口端を上げた。
「 今度行ってみようと思うんだけど、
ネルフェ、一緒に行ってくれる?」
『 嫌と言っても連れてく癖に、わざわざ聞くなよ。』
そう言えばあいつはそうだね、と頷いて、立ち上がって手を差し伸べた。
「 ネルフェ、一緒に来て。」
さっきとは違う命令口調。それに私は笑って、
『 どこまでも。』
差し出された手を、取った。
懐かしいあの日の記憶。
あの日そう言って手を取ったことを、後悔したことはない。
たとえそれで死ぬことになっても、あいつと一緒なら、どこへでも行ける気がしたから。
ゆらゆらと燃える炎の中、脳裏に映る金色を想った。
( 魔王退治に行く )
( 逃げろ、ネルフェ)
( 大好きだ )
( ごめん )
( 大丈夫 )
( さよなら、俺の )
いつか
( いとしい、ひと )
また、逢える
ね、ほら
( やっと逢えた )
「 ねえ、ネルフェ。これからどこに行こうか。」
『 どこへでも。』
( あなたと一緒なら )
どこまでも
ありがとうございました。