1 佐原歩美はビッチらしいです(噂)
思い付きをぽんと載せる癖を直さないと・・・(とかいいつつ載せる)
「なぁ、佐原ってお金さえ払えば誰とでも寝るらしいぞ。」
そんな話が聞こえてきて、私はため息をつく。
佐原歩美17歳高校生。
彼女はいわゆるビッチと呼ばれるカテゴリーに入る存在と校内では噂されている。
いわく、父親世代と援交している。
いわく、彼氏はつねに5人はいて、キープがもう5人いる。
いわく、とあるイケメンに貢がせている。
いわく、イケメンなら一度は寝て、不細工やDTでも、金さえ払えば寝てくれる。
いわく、教師や保護者とも寝ている。
などなど、その手の噂にはことかかない存在なのだ。
まあ、全て・・・とはいかずとも9割出鱈目だが。
何故わかるかって?
私がその、「佐原歩美」だからですけど何か?
いえ、ビッチとか言われても本当に迷惑なんですよ。
確かに、お金に困って援交まがいのことはしたことがあったけど、それもデートだけで実際にはヤッテないし、彼氏も・・・いたことはあったけど、大抵が私と付き合ってから一週間で浮気を疑って別れるから、エッチなことはもちろん、手を繋ぐことさえしてないし、お金さえ払えば誰とでも寝るなんてあり得ない。
まあ、確かに大分前に処女は失ってるし、彼氏の入れ替りも激しいから周りからビッチ扱いされるのはわからなくはないけど・・・でも、正直私より親友の優香の方がビッチだと思う。
瀬戸内優香。
私の親友で、見た目は清楚な大和撫子なんだけど、裏では援交はもちろんのこと、つねに数人の彼氏とキープが何人かいて、最近では教師とも寝たと自慢していたし、わりとお金しだいで誰とでも寝るらしいので、私なんかよりも彼女の方がよっぽどビッチだ。
そもそも、彼女は私を隠れ蓑に使ってるきらいがある。
見た目は派手で遊んでそうな私はぴったりなんだろう。
あと、私の元カレは大抵が優香の彼氏になる。
まあ、すぐに別れるけど、恐らくは優香が私に近づくイケメンが欲しくて・・・でも表だってアクティブには行動できないから、私から“乗り替え”させることにしたのだろう。
ちなみにだいたい私に対する酷い噂を優香は表では「酷いよ!歩美はそんなことしないよ!」と否定していながらも、実際は彼女が流した噂がほとんどだったりする茶番をよくやっている。
まあ、とはいえ事実を知らない人間からすれば優香は理想通りの美少女に見えるらしく、私の存在で優香の評価はうなぎ登りだったりする。
これだけみれば本来は親友なんて名乗れない人種だよね?
むしろ、引き立て役にされて本来なら離れたいレベルだけど、正直、私にとっては彼女は都合がよかった。
理由は2つ。
ひとつは、無駄によってくる人間を勝手に排除してくれるからだ。
本来私は男も女も好きではない。
むしろ人間が苦手な方だ。
元カレも大抵あちらから告白してくるから昔は断っていたんだけど、高校生になってから優香に会ってから大分楽になった。
断ると後でストーカーとかする男がたまにいるからだ。
その点、優香がいれば、てきとーにOKして放置すれば勝手に優香が寝とってくれるから楽でいい。
正直好きでもない相手に彼氏面されるのはイラつくけど、少しの辛抱で他にいくなら安いものだ。
女も大抵は私に依ってくる男目当てだからいざこざが起きる前に(一部に)カリスマがある優香がいれば楽にすむ。
とまあ、ひとつめはいい感じに役目を果たしてくれているから優香には一応感謝はしている。
そしてもうひとつが・・・・
「歩美ー!」
大声で私の名前を叫ぶ声・・・思わずつきそうになるため息押さえて振り替えるとそこには案の定というか・・・知ってるイケメンの姿が。
「何よ?斎藤。何か用事でも?」
「いや、歩美の顔が見たくてきただけだよ」
爽やかにそう告げるのはここ最近になって何故か私に近づいてくるようになった「学園の王子」こと斎藤勇馬。
キラキラしたオーラと目映いばかりの笑顔で圧倒的な人気を誇る学園のアイドル様だ。
そんな彼は何故か私の噂を知ってるはずなのに口説いてくる。
最初は何の冗談かと思っていたけど・・・あまりにもしつこいので少しマジなようだ。
「あ、斎藤くん!」
そんなことを考えて斎藤の相手をしていたら案の定優香が猫なで声で斎藤に近づいてきた。
よし!抜け出す好機だ!
「ほら、優香呼んでるよ?じゃあ、私はこれで・・・」
「ダメだよ」
行こうとしたら手首を掴まれてそのまま抱き寄せられた。
教室内はそれでパニックになる。
当然だ。学園のアイドルがビッチな私を抱き締める・・・彼のファンからしたら最悪意外の何ものでもないだろう。
「斎藤くん!私とお話ししない?」
「ごめん。後にしてくれる?今は歩美と話してるんだ」
ばっさりと優香の誘いを冷たく切り捨てる斎藤。
それでもめげずにアタックする優香と、それを無視して私を口説こうとする斎藤。
ハッキリと言ってカオスです。
そんな訳で・・・何故か私はビッチと噂をされてるのに・・・イケメンに溺愛されています。